第34話 最後の修行 最高の仲間
いよいよ最終修行回です。
父・達也を敵に、仲間全員で挑む総力戦。
これまで積み重ねてきた力と絆、そのすべてをぶつける一話になっています。
最後の修行、ぜひ見届けてください。
新堂家で迎える朝。
応接間に全員が集まり、揃って朝食を取っていた。
だが、いつもより会話は少ない。
それぞれが、この日を意識しているのが空気から伝わってきた。
訓練場に移動し、円陣を組む。
「今日は午前中、昨日と同じく俺が相手だ。午後は由香と正樹も加わって、チーム戦。連携と役割分担の最終確認だ」
達也は腕を組み、なぜか楽しそうに笑っている。
「俺がお前たち全員の“敵”になる」
「達兄……なんか楽しそうね」
久美が露骨に不機嫌そうな顔で言った。
「当たり前だろ。異世界でも、これだけの高レベルが揃ったパーティーと戦える機会なんてそうそうない」
達也は嬉々として続ける。
「しかも今回は、かなり力を出しても大丈夫そうだ」
「そのムカつく自信、打ち砕いて差し上げますわ」
瑠璃が眉を吊り上げる。
「今度こそ倒します」
紅音が真っ直ぐに宣言した。
「夢幻流の名にかけて」
静香も流派を背負う覚悟で声を上げる。
「達兄の悔しがる顔、見てみたいわね」
久美は不敵な笑みを浮かべた。
「……お父さんに、追いついてみせる」
由香里は憧れの父を見据え、静かに誓う。
「よし。まずは瑠璃からだな」
達也は昨日以上に気を膨らませた。
――午前中の修行は、無慈悲なまでの実力差を突きつけられて終わった。
「なんで……十倍重力で動けるのよ」
「三倍想定でも足りなかったなんて……」
「夢幻流奥義の、さらに上があるなんて……」
「覚醒してるのに、パワー負け?」
「お父さん……凄すぎだよ……」
全員が信じられないものを見る目で達也を見ていた。
「目標は高い方がいいだろ」
達也は悪びれもせず言う。
「お前たちが強くなれば、俺はもっと強くなる。それだけだ」
「はいはい」
由香がパンッと手を叩いた。
「ご飯食べて休憩よ。午後は私と正樹も入るんだから」
そしてニヤリと笑う。
「今度こそ、あの馬鹿オヤジを本気で倒しに行くわよ」
全員が頷き、午後のチーム戦に向けて英気を養った。
――食事、仮眠、そして達也を除いた作戦会議。
万全の状態で、午後を迎える。
「さーて、準備はいいか?」
達也が柔軟をしながら確認する。
「いつでもいいわ」
由香が前に出た。
瑠璃の合図と同時に、ゴングが鳴り響く。
最初に動いたのは達也だった。
一直線に由香へ突進する。
「今よ!」
由香と由香里が同時にシールドを展開、さらに強化する。
次の瞬間、達也の一撃が正面から叩き込まれた。
シールドが大きく揺らぐ。
「耐えて!」
「押し返す!」
両側から久美と静香が挟撃。
瑠璃は杖に魔力を込め、正樹が錬金術で巨大なレンズを生成する。
「冷却、最大出力!」
レンズを通した冷気が増幅され、達也の身体を一気に包み込んだ。
――氷結。
しかし、完全に固まる前に、達也は気の膜を張っていた。
「甘い」
次の瞬間、気の放出で氷が砕け散る。
飛び散る破片に久美と静香は後退を余儀なくされた。
その隙を逃さず、達也の一撃が久美を捉える。
「くっ――!」
床に叩きつけられる久美。
寸前で由香がシールドを張り、致命傷は免れたが、戦線離脱。
「攻め手が静香だけ……!」
達也が一点突破を狙うが、正樹が錬成した防具がそれを防ぐ。
そこを逃さず由香里が突進する
達也が防御体制を取り由香里の一撃を受けて後方に飛ばされる。
飛ばされた壁を蹴り上げ由香里に突進する達也。
だが横からものすごい衝撃が達也を襲った。久美が由香に回復してもらって復活、久美の渾身の一撃だった。
「今だ!」
全員の動きが噛み合った瞬間、達也の足が止まった。
完全な勝利には至らない。
それでも――確かに、追い詰めていた。
達也はゆっくりと息を吐き、笑った。
「……ここまで来たか」
その一言に、全員が胸を熱くする。
「合格だ」
達也は仲間たちを見渡し、はっきりと言った。
「最高のパーティーだよ、お前たちは」
疲労の中、誰からともなく笑みがこぼれた。
最後の修行は終わった。
そして――最高の仲間が、ここに揃った。
第34話、最後までお読みいただきありがとうございます。
勝てなくても、追いついた。
その一歩が「最高の仲間」を完成させました。
次回はいよいよ修行の先、物語は新たな局面へ進みます。




