第28話 親と子、魂の一撃
由香里を飲み込もうとする悪霊エキドール。だが達也は、異世界に残した“ある大きな事実”を口にする。親と子、そして心に宿る絆が、闇を断ち切るーー。
「一つ、良いこと教えてやるぞエキドール」
達也は口の端を上げ、挑発するように笑った。
「いりませんよ。もうすぐこの娘の精神を美味しくいただけるんです。邪魔しないで下さい!」
まるで餌を取り上げられた犬のように、エキドールは苛立ちを隠さない。
「まあ聞け。異世界に戻った時、エリザベートと戦闘になってな。倒せそうにないから封印しといたんだ」
達也はまるで昨夜のニュースでも話すように軽く言ってのけた。
「バ、バカな……! エリザベート様が貴方如きに遅れを取るわけがない!」
怒りに震えながら、エキドールは叫ぶ。
「じゃあ何で、いまだに回復してこねぇんだ? どうしてお前は由香里を完全に捕食できない?」
達也の問いに、エキドールは言葉を詰まらせた。
その頃、エキドールの中に囚われていた由香里へ、“セイラ”が静かに語りかける。
――あなたは親友をあんな目に遭わせた相手を許せるのですか?
――あなたが闇に呑まれたら、麻里さんはどう思うのでしょう?
その言葉に、由香里の胸が熱を帯びた。
次の瞬間、由香里の身体にまばゆい光が宿り、闇を押し返すように膨れ上がっていく。
「何故だ……! 私の闇に飲まれているはずなのに、どうして光を取り戻せる!?」
エキドールは恐怖に顔を歪めた。
「麻里を傷つけたあなたを……私は絶対に許さない!」
由香里の叫びが光となり、全身からあふれ出した。
「ひぃっ……眩しい! これは無理です!」
エキドールは悲鳴を上げ、由香里の身体から飛び出した。
「逃がすかぁっ!」
その瞬間、達也の拳が唸り、エキドールを叩きつける。悪神は壁に深くめり込み、動きを失った。
「由香里、大丈夫か?」
「……お父さん、“セイラさん”……ありがとう」
「お前の想い、全部ぶつけろ。お父さんと一緒に、化け物退治だ」
父と娘。
二つの魂が共鳴するように気が膨れ上がり、天へと昇る大河となった。
『幻日流最終奥義――“龍” “虎”逆鱗咆哮破ッ!!』
極大の光が弾け、エキドールへ一直線に襲いかかる。
「ぎゃあああ! エリザベート様ぁぁ! た、助け――!」
叫びは光に飲まれ、悪神の姿は消えていった。
壁ごと吹き飛ぶ光の奔流だけが残った。
「麻里……仇は取ったよ……麻里……」
由香里はその場に崩れ、泣きじゃくった。
仲間たちが駆け寄る。
母・由香はそっと娘を抱きしめた。
傷だらけの身体で、それでも仲間を信じて戦った由香里を深く慈しむように。
「警察がもうすぐ来るわ。抜け道を確保した。急いで」
北条静香が手短に指示する。
その導きで、達也たちは無事に脱出した。
数分後、警察が建物へ突入する。
「まったく……派手にやりすぎよ。後始末、大変なんだから」
桜井純子は呆れながらため息をついた。
◆◆◆◆◆◆
その後――
ガス漏れ事故による軽傷者多数、爆発による死者2名。
事件は“事故”として処理された。
それぞれの想いを乗せて子供たちは未来に向けて進んでいく。達也はそんな事を想いながら空を眺めていた。
異世界に戻るまで子供たちの未来のために何ができるのだろう…
由香里の強さは力ではなく、誰かを想う心でした。次回、達也はエリザベート封印の真相を語るのか? 物語は新たな章へ進みます。




