第27話 惜別の時、由香里の涙
第27話投稿!
悪魔化した篠崎親子との激闘がついに決着。
由香里は“親友を救う”ため、涙をこらえて刃を振るう。
しかし麻里の残した最期の笑顔が、由香里の心を深く抉る——
そして彼女を追うように、エキドールが動き出す。
紅音はすかさず、悪魔化した篠崎親子の動きを観察し始めた。
その眼は冷静で鋭く、獲物の急所を見抜く狩人そのものだった。
久美は脚に気を収束し、悪魔と化した篠崎英司の頭上へと跳び上がる。
「行けぇぇッ!」
足技と気の爆発が重なり、英司の頭部を中心に轟音が響いた。
続けざまに瑠璃が杖を構え、全身に冷気をまとわせる。
「凍てつけぇ——氷の息吹!」
白い竜のような氷雪が吹き荒れ、英司の身体を覆っていく。
苦悶の表情で凍りつく悪魔英司——
だが、完全に凍る直前、自らのエネルギーを爆発させて氷を粉砕した。
「視えたわ」
紅音の瞳が細められる。
「心臓の奥……そこに悪魔の核がある。私が押さえつけるから、久美さんと瑠璃は“表と裏”から同時に撃ち抜いて」
『了解』
『ありがとう、紅音!』
紅音はガンブレードを地面に突き立て、気を集中させた。
「——グラビティサークル」
空間が歪む。
悪魔英司の身体は、強烈な重力に締め付けられ動きが完全に止まった。
『ライジングランス嘶け——雷鳴翔破ッ!』
『幻日流秘奥義——竜巻昇龍波ッ!』
両サイドから放たれた2人の最大奥義が、悪魔英司の胸へ一直線に突き刺さる。
爆光。轟音。
断末魔の叫びとともに英司の悪魔の肉体は霧散し、中から本体が姿を現した。
「……すまない、麻里。お前まで巻き込んでしまって……」
そう呟くと、英司は霧のように消えていった。
「最後だけ、親になったのかしらね」
瑠璃が呟く。
久美は悔しさを噛みしめるように唇を噛んだ。
「最後に後悔するなら、最初からやるなってのよ……」
けれど——残ったのは怒りだけではなかった。
胸の奥で、悪魔に魂まで喰われてしまった愚かな英司に憤る二人の少女の目には哀しみが滲み出ていた。
◆◆◆
一方その頃、由香里は“悪魔麻里”の猛攻を受け、防御するのが精一杯だった。
「麻里……麻里……麻里……ッ!」
呼んでも届かない。
届かないと分かっていても叫ばずにはいられない。
悪魔麻里はエネルギーを一点に集中させ、由香里に叩きつけた。
爆風が走り、由香里の身体は後方へ吹き飛ぶ。
土煙の中から姿を現した由香里は、右腕にまとった徹甲を巨大な“盾”へと変化させていた。
「由香里! 今行く!」
久美が飛び出そうとする——が、瑠璃が腕を掴んで止めた。
「離してよ瑠璃! 由香里が——!」
「……久美、あの子の“目”を見て」
その言葉に久美は視線を向ける。
由香里の瞳——
そこに、迷いは一つもなかった。
涙をこらえ、ただ“親友を救う”ことだけを見据えた、静かで凛とした光。
「麻里……今、解き放ってあげる」
由香里の右腕の徹甲が変形し、長い日本刀へと姿を変える。
刀身に宿る光——それは由香里の絆、想いそのもの。
「幻日流剣技——雲海蒼天ッ!」
蒼い気をまとう一閃が、悪魔麻里の胸——核へ、深く確実に届いた。
霧散する悪魔の身体。
その中心に、静かに本物の麻里が立っていた。
「麻里……!」
由香里は駆け寄り、全身で抱きしめた。
「……由香里。ねぇ、一緒に帰ろうよ。話したいこと、いっぱいあるんだ」
それはまるで、いつもの放課後のような声だった。
「うん……帰ろう。私も……いっぱいあるよ……」
涙で顔がぐちゃぐちゃになっても、由香里は必死に笑おうとした。
——だが。
麻里の体は、少しずつ光になっていく。
「また明日ね、由香里……」
笑顔のまま、麻里は空へ昇っていった。
「麻里……麻里……麻里……ッ!」
由香里の目から流れたのは、悲しみと後悔と喪失が混じった“血の涙”。
その慟哭は、空間全体へ響き渡った。
◆◆◆◆◆◆
その頃、達也は——戦場の端で呑気に寝ていた。
(エキドールの回復待ちとはいえ、どこまでも図太い男である)
だが、由香里の叫び声が、達也を強制的に叩き起こした。
「……由香里!?」
エキドールは薄く笑い、立ち上がる。
「命のやり取りをする相手に、ここまで侮辱されたのは初めてですよ。ですが……やはり女神の加護は私にあったようですね」
その身体が光となり、霧のようにほどけ始めた。
エネルギーそのものになり、由香里の身体へと侵入していく。
「さぁ……貴方の“最愛の娘”はいただきました」
「後悔に歪むあなたの顔……早く見せてくださいよ、英雄 達也」
エキドールの声は、狂気に満ちていた。
これから壮大な親子の激闘が始まる。
由香里と麻里のシーンは書きながら胸が締めつけられました。
ここからはついに、達也VSエキドールの“親子の命を賭けた戦い”へ突入します。
次話もぜひお楽しみに!




