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第26話 親友麻里への想い

ついに篠崎英司、そして麻里との決戦へ。

悪魔に心を奪われた親友を前に、由香里は揺れる。しかし達也の言葉が彼女の迷いを断ち切る。

父はエキドールと、娘は親友と――それぞれの想いを懸けた戦いが始まる。

達也が戻って来て歓喜に湧く家族。

だが――まだ終わりではなかった。


轟音と共に、部屋の奥に黒い通路が開いた。


「いよいよ決戦かな。準備はいいかい」

『はい!』


力強い返事とは裏腹に、由香里の瞳には深い痛みが浮かんでいた。



通路を数分歩くと前方が明るくなった。

抜けた先は、時代劇の将軍謁見の間を思わせる巨大な大広間。


その中央。

玉座のような席に――篠ゆ崎英司と麻里が並んで座っていた。


「篠崎英司。そして麻里……。まだ続けるつもりか」


達也が静かに問いかけた瞬間、空気が震える。

背後からエキドールが姿を現した。


「無駄ですよ。精神はすでに悪魔に食い尽くされています」


その言葉と同時に、篠崎親子の身体が変貌を始める。


「麻里! 麻里――!」


駆け出す由香里を、久美と紅音が必死に押さえた。


「離して……麻里が……!」


それでも前へ進もうとする由香里の前に、達也がそっと立つ。

そして指先で軽く額を押した。


「落ち着け、由香里。

 お前は……親友の“肉体を弄ばれている姿”を受け入れるのか?」


「受け入れられるわけない!」


涙を浮かべながらも、由香里の声は震えていなかった。


達也は強く頷く。


「なら――取り戻せ。親友を」


由香里は涙を拭き、顔を上げた。

その瞳には迷いがない。



「倒せるわけがありませんよ。倒せば親友とやらも消滅しますから」


得意げに語るエキドール。

だが次の瞬間――。


バキィンッ!


エキドールは拳で殴り飛ばされ、床を転がった。


「どうした。もう自慢は終わりか?」


達也の声は淡々としていた。


「な、な……」

返す声は震えている。


「コイツは俺に任せろ。悪魔化した二人はお前たちで仕留めろ」


達也の言葉に、全員が頷いた。


「由香里。親友を……早く解放してやれ」


「はい……もう迷いません。ありがとう、お父さん」


決意を宿した由香里の瞳に、達也は未来を見た。


「エリザベート様の加護で覚醒した私の力、侮らないでいただきたい」


「へぇ、そうか」

達也は微笑む。


「なら――どうして俺はまた此処に戻って来れたんだ?」


「エリザベート様の気まぐれでしょう。父の姿を娘に見せるのがお望みなのでは」


「なるほど。じゃあ……始めようか」



エキドールは両手を広げ、悪魔を二体召喚。

それらを自らの身体へ吸収し、禍々しいオーラが迸る。


対する達也は静かに構えた。


「幻日流三式――行雲流水」


エキドールが全力の拳を叩き込もうとするが、達也は目を閉じたまま流れるように回避。


「幻日流奥義――激流怒涛」


次の瞬間、エキドールの身体は滝の激流で切り刻まれるように細切れになり、床に散った。


「馬鹿な……デモンロード以上の力を……?」


断末魔を上げながら再生するエキドール。


達也は両手に気を収束し、一気に放つ。


閃光。

そして――エキドールの身体は首だけを残して消滅した。


「なぜ……女神の加護を破れる……? 人間などに……」


震える声だけが残った。


◆◆◆◆◆


その頃。


達也がエキドールを圧倒していた裏で、

由香里たちはついに――怪物と化した篠崎親子と対峙していた。


それは、決して忘れられない戦いの幕開けだった。

由香里は大切な親友を救えるのか。

そして達也が語った「なぜ戻れたのか」の真意とは――。

次回、篠崎親子との激闘がついに本格化します。

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