第24話 家族の絆
家族の想いが一つになった時、絶望すら打ち破る力が生まれる──。
正樹が残した装備を手に、由香里たちはついにアガレストとの最終局面へと挑む。
父の誇りを胸に、仲間との絆を力に変えた六人の反撃が始まる。
正樹が錬成した武具と防具に、アガレストの攻撃は弾かれ、その巨体が吹き飛んだ。
正樹が錬成したそれらは、オリハルコンすら凌ぐ鉱石──アダマンタイト製。
さらに魔法防御・永続回復・永続治癒まで付与された、まさに究極の装備だった。
「因子が覚醒したときに色々作れたが……こんな物、しばらくは作れんぞ」
正樹は皆に念を押すように言った。
「防具もすごいけど、武具……なんか手に馴染む感じ!」
久美が嬉しそうに手足の装具を確かめる。
正樹は頷きながら説明を続けた。
「武具もアダマンタイト製だが、お前たちの“気”に合わせて成長する。
久美はパワー重視──気の上昇で装具が変化し、最大級の攻撃が可能になる。
瑠璃は膨大な魔力に耐えられるよう、武具が状況に合わせて変化する。
紅音は判断力を生かすためスカウター型、ガンブレードと連動して多様な戦闘に対応できる。
そして由香里……お前は右の徹甲だけだが、“願い”に応える装備になっている」
「母さんは防具だけだが、杖と完全連動している。イメージと魔力で自在に変化できるんだ」
由香の説明だけ少し丁寧なのに、みんな苦笑した。
「お父さん、由香ちゃんだけ特別〜!」
久美が茶化す。
「愛する妻ですもの!」
瑠璃が羨ましげに笑い、
「由香里のお父さん、カッコいいです」
紅音は素直に声援を送り、
「お父さん……ありがとう」
由香里は心の底から感謝を伝えた。
正樹は頭を掻きながらぼやく。
「まったく……達也に体を使われて、起きたらこんなことになってるとはな……」
その瞬間、笑い声を裂く轟音。
瓦礫が爆ぜ、アガレストが姿を現した。
「達也を排除したのに……まだ抗うのですか? あなた達に何ができるのです」
由香里たちは揃って言い放つ。
『貴方に勝てる』
「武器と防具を揃えた程度で……私に勝てると?
では全員、死体にして達也に見せてあげましょう」
アガレストが魔力を収束し、一気に五発を放つ──!
「私が防ぐ!」
由香が前へ。
「イージスシールド!」
杖が光り、六人を守る盾が四つに分離して多重展開。
アガレストの魔力弾を跳ね返した。
「バ……バカな……!」
その驚愕の隙を逃さず──久美が跳ぶ。
「幻日流奥義──破岩脚ッ!」
アガレストの身体がのけぞる。
瑠璃が魔方陣を三重展開し、すかさず続く。
「メテオギャラクシー!!」
空間を裂く光の流星群が降り注ぐ。
黒い皮膚が焼け、魔力が弾けた。
だがそれでもアガレストは叫ぶ。
「ぬおおおおッ! こんな攻撃で、私が倒れるかァ!!」
怒りの魔力が逆流し、衝撃波が全方位へ──!
「ここは私が!」
由香が盾を強化し、仲間を包む。
「家族を守る力……侮らないで!」
衝撃波は由香のシールドに遮られ、火花となって散った。
「由香ちゃん、ありがとう!」
由香里が叫び、拳を構える。
右腕装具が光を帯びる。
(倒す……みんなで、お父さんを取り戻す!)
「幻日流奥義──重力崩壊・零式!」
由香里の拳が空間を歪ませ、重力そのものがアガレストをねじ曲げる。
「ぐッ……貴様……ァァッ!」
その一点──紅音が示した“弱点”へ、衝撃が叩き込まれる。
紅音はガンブレードを構えていた。
「これで終わり……みんなの力、無駄にはしない!」
《幻日解析・臨界射》
白光の魔力弾が一直線に走り、アガレストの胸部──中心核を貫く。
「バ……バカな……私は神……だぞ……!
この……小娘どもがァァァ……!」
その身体が崩れ、黒霧となって消えていく。
魔力が完全に散ったとき──
静寂が訪れた。
長く続いた戦いが、いま確かに終わった。
長く続いたアガレストとの戦いに、ついに決着がつきました。
“家族”と“仲間”の想いが繋がった瞬間、それぞれの力が最大限に輝きました。
次回、第25話では新たな展開が動き出します。引き続きお楽しみください。




