第22話 神の力vsオヤジの力
第22話では、ついに悪神アガレストとの総力戦が幕を開けます。
父・正樹、母・由香、そして由香里たち4人の少女――“家族”が持つ力のすべてがぶつかり合う、シリーズ最大級の激戦です。
それぞれの覚醒、親の秘密、そして新たな因子の発現。
物語は大きな転換点を迎えます。
簡単に寄生体が倒されたことに、悪神アガレストは激昂していた。
「女神エリザベートの加護を与えたというのに……無様な連中だ。結局、私が直接あなた方に鉄槌を下すしかないようですね」
黒い魔力が渦を巻き、アガレストの身体が禍々しい本来の姿へと変貌していく。
「それが素の姿か。神じゃなく、ただの悪魔だな」
そう呟いた“達也”も、正樹の身体の中で自身のすべての“気”を解放した。
ふたつの神気が激突しようとした瞬間――。
創造神ユグニスの声が響く。
『達也。娘とは会話しないという約束だったな。約束を違えた以上、この世界への干渉を禁ずる』
同時に世界が金色の柱に包まれた。
「お父さん!」
由香里が叫ぶ。
「すまんな……由香里。元気でな。母さんによろしく」
その言葉を最後に、“達也”の気配は正樹から完全に消えた。
意識を失った正樹が倒れ込む直前、由香と久美が慌てて支える。
「お父さん!!」
しかし、情け容赦なくアガレストの極大魔力弾が放たれた。
その一撃を前に、瑠璃が叫ぶ。
「幻日流・三式――乙女の聖域!」
青白い光のシールドが展開し、かろうじて魔力弾を弾き返す。
「ふふ……乙女の聖域ってダサッ……」
思わず久美が吹き出した。
「悪かったわね! センスはないのよ!」
顔を真っ赤にしながらも、瑠璃は必死に魔力を込め続ける。
「……ありがと。守ってくれて」
珍しく久美が素直に礼を言うと、瑠璃は照れたように目をそらした。
だが次の瞬間、アガレストの魔力が爆発的に膨れ上がった。
「その程度のシールド、跡形もなく消し飛ばして差し上げますよ」
「久美……ごめん、もう……防げないかも」
瑠璃が歯を食いしばる。
その時――。
由香里たちの周囲に新たな結界が展開された。
「結界……誰だ!?」
アガレストが驚愕する。
奥の通路から静かに現れたのは――由香里の母、由香だった。
右手には、強力な魔力を宿す杖。
その姿は、ただの人間ではなかった。
「お母さん……どうして……?」
由香はゆっくりと娘を見つめ、静かに口を開いた。
「ごめんね由香里。お母さん、本当は人間じゃないの。
女神エリザベートの姉――女神アグライア。天界から追放された“元神”なの」
衝撃の告白。
「追放された直後、天界の刺客に命を狙われたの。
そのとき助けてくれたのが、たっちゃん……あなたのお父さん。
私はすべてを話したわ。
それでも一緒にいてくれた。そしてあなたが生まれたの」
由香里は、自分に神の血が流れていることを理解し、同時に――父の大きさを実感していた。
由香の瞳に怒りの光が宿る。
「たっちゃんが異世界に召喚されたのは、私への警告。
“二度と神の力を使うな”という見せしめ。
妹エリザベートは野心家でね……自分の手は汚さず、追放した姉を異世界で葬ろうとしたのよ」
アガレストが鼻で笑う。
「なるほど。あの時“真面目な姉が邪魔だった”と言っていたのは、あなたのことでしたか」
「貴方の抹殺は数年前から依頼されていましたよ。
大人しく暮らしていればよかったものを――」
アガレストが魔力を高める。
対して、由香も神としての力を解放する。
結界が白く輝き、天界の雷が杖に収束する――。
「天雷・神罰――!」
アガレストを包む光柱。
だが――。
「浅いですね、姉上」
黒い魔力が爆ぜ、由香は吹き飛ばされた。
膝をつき、息が乱れる。
「ま……まだ……!」
アガレストの圧倒的な魔力が迫り、由香の結界がきしむ。
その瞬間。
由香里の魂が燃え上がった。
久美の瞳が赤く光り、瑠璃の気が渦を巻き、紅音の頭上に術式が展開される。
4人の少女が同時に――“覚醒”した。
「幻日流・究極式――暁天!」
「幻日流剛破・錬撃!」
「幻日流蒼流・天聖護!」
「術式展開――封魂の陣!」
4つの力が爆ぜ、アガレストを押し返す。
だが――。
互角が限界だった。
「くっ……これでも……届かない……!」
由香里の足が震える。
その時――。
倒れていたはずの正樹の身体が、ふらりと持ち上がった。
「……うるせぇなぁ……娘の声が……聞こえないだろ……」
正樹の胸が金色に輝いた。
"達也"の英雄因子"セイラ"が正樹の心に呼びかける
「貴方の中には力がある。錬金術師の因子があります。どんなものでも生み出せる力です」正樹の中で因子が覚醒する。
そして正樹の背後に、巨大な錬成陣が展開された。
「お前ら……守るのは俺の役目だろ」
金色の光が由香里、久美、瑠璃、紅音、そして由香に流れ込む。
次の瞬間――。
5人の身体に、どんな攻撃でも耐える“神造防具”が顕現した。
さらに、4人の娘たちそれぞれの能力に合わせた“最適化された神造武器”が手に生まれる。
「さぁ……アガレスト」
正樹がにやりと笑う。
「この“家族”を、舐めんなよ」
――神VS悪神の戦いは、いま新たな局面へ。
ついに由香の正体が明らかになり、さらに正樹までもが英雄因子を覚醒。
家族が一つとなって悪神アガレストに挑む展開となりました。達也を欠いた戦力で勝てるのか。
そして、戻った達也はどうなったのか
次回ご期待ください。




