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第18話 世界レベルと異世界レベル?

世界チャンピオン・酒井幹雄と、名門新堂家の長女・瑠璃。

重く絡みつく過去とプライドを抱えたまま、瑠璃はいま“真の自分”と向き合う。

そして、由香里&紅音は新たな強敵と対峙する——。

瑠璃は全神経を一点に集中させた。

周囲を流れる空気、酒井の気の揺れさえも感じ取ろうとしていた。


「世界チャンピオンの俺を前に震えてるか? 当然だ。俺は最強だからな」

酒井幹雄は、勝ちを確信したように鼻で笑った。


だが瑠璃は別の言葉を思い出していた。

“達也”が再会して最初に告げた言葉だ。


『瑠璃。お前の波動は水と土に馴染んでいる。

周囲すべてを理解しろ。すべての気を力に変えろ。

その先に、お前自身の真の力が目を覚ます』


その声に導かれるように、瑠璃は静かに構えた。

挑発するように右手を上げ、手招きをする。


「俺とやり合うってか? バカな娘だ」

馬鹿にしたように吐き捨てた瞬間、酒井の怒りが爆発した。


跳躍からの踵落とし。

そこから連撃の嵐。

だが——


瑠璃は終始、冷静だった。

攻撃を受け止めながら、自分に問い続ける。


——なぜ私は久美に勝てない?


名門新堂家の長女としてのプレッシャー。

幼い頃から価値あるのは「家柄」だと周囲に刷り込まれた。

高校でも、寄ってくるのは取り入ろうとする者ばかり。


そんな中、ただ一人、本気でぶつかってきたのが——加山久美。


取り巻きが倒され、自分と向き合ったあの時の

“恐怖と高揚”は今でも忘れられない。


だからこそ、勝てなかった悔しさが胸に刺さり続けた。


そんな瑠璃に、達也は迷わず告げた。


『くだらないプライドなんて捨てちまえ。

お前は正しいと思ったことを全力でやれ。

幻日流はそのためにある術だ。

お前の気は水と土に愛されてる。

心の奥に眠る“本当のお前”を解き放て』


その言葉が、瑠璃の心を縛る鎖をほどいていった。


——そして今。


酒井幹雄の渾身の正拳が瑠璃の顔面を撃ち抜く……はずだった。


「なっ……!?」


拳は、瑠璃の顔の手前で止まっていた。

瑠璃が右手で掴み、完全に制していた。


その瞬間、地面の空気が瑠璃を中心に渦を巻き始める。

気が竜巻のように唸りを上げ、彼女の身体へ吸い込まれていった。


「これが……私の真の力」


大地と水の気が完全に調和する。


「——今ならできる。幻日流奥義《大瀑布》!」


放たれた気は濁流となって酒井に襲いかかる。

酒井は防御姿勢をとったが、次の瞬間には巨大な水の奔流に叩き上げられ、天井へと吹き飛ばされた。


「ぐっ……!」


天井にめり込む酒井。

その真下——瑠璃がすでに構えていた。


「終わりよ、チャンピオン。

幻日流秘奥義《水龍烈覇》!」


天に昇る龍の如く、巨大な水柱が突き抜けた。

酒井幹雄は意識を失ったまま、天井を破って外へ吹き飛ばされていく。


静かに息を整えながら、瑠璃はつぶやいた。


「達也……ありがとう。あなたのお陰で、私は自分を取り戻せた」


その顔は晴れやかで、迷いは一片も無かった。


「——前進あるのみよ」


瑠璃はまっすぐ伸びた通路を堂々と歩き始めた。


          ◇ ◇ ◇


一方その頃、由香里と紅音は通路を抜け、闘技場のような空間へ出ていた。


「待っていたわ、加山由香里」


その声とともに現れたのは水本玲奈。

しかし、その背後からもう一人。


「そしてあなたもよ、新堂紅音」


姿を現したのも——水本玲奈。


「もしかして……あなた達、双子?」

紅音が問いかける。


「気付いていたわね、紅音。流石だわ」

「確証は無かったけど、違和感はあったわ」


二人の玲奈が同時に微笑む。


由香里と紅音。

そして二人の玲奈。


壮絶なタッグマッチの幕が、静かに上がろうとしていた。

瑠璃の“真の覚醒”を描いた回でした。

名門の重圧、久美への劣等感、達也の言葉——すべてが重なって、ようやく彼女は自分自身と向き合えました。

次回はいよいよ、由香里&紅音 vs 水本玲奈(双子)の激闘です。

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