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第17話 篠崎邸本丸への道 ―四天王、襲来―

篠崎邸の奥深くに潜む“四天王”。

由香里たちはついに本丸への最終防衛線へと足を踏み入れます。

四つの通路、それぞれに待ち構える最強の敵。

久美・瑠璃・由香里&紅音──仲間たちの実力と覚悟が試される激闘編の幕開けです。

篠崎邸の奥──

“本丸”へと続く巨大なホールに出ると、達也たちの前には左右に分岐した四つの通路が立ちはだかった。


静香が息を呑む。


「……ここが、篠崎家・暗殺部隊《四天王》の防衛線……!」


紅音が青ざめる。


「本気で来たな……」


“達也”は一歩進み、四つの通路を見渡した。


「ここからは分かれて進む。

四天王は、誰か一人でも突破できれば本丸まで通じる。問題ないだろ」


久美が拳を鳴らす。


「上等。あたしがぶっ潰してくる!」


瑠璃は目を閉じて冷静に頷いた。


「世界レベルでも誰でもいい。来るなら倒すだけ」


由香里は胸の前で拳を握り、紅音と目を合わせる。


「……行こう、紅音。一緒に」


「うん。最後までついていく」


紅音の瞳はもう迷っていなかった。


“達也”は全員を見渡し、短く言う。


「死ぬなよ。絶対にだ」


四人は、四つの闇の通路へ走り出した。


第一通路──

コンクリートむき出しの無機質な回廊に、重い扉が閉まる音が響いた。


久美は肩を回しながら進む。


「……雑魚が出てくるか、中ボスか……どっちでもいいけど」


照明がパッと灯り、通路奥に人影が浮かび上がった。


「雑魚じゃなくて悪かったわね。久美さん」


姿を現したのは 真田薫。

かつて紅音の取り巻きとして名を馳せた少女。

今日は黒い戦闘スーツに身を包み、まるで別人のような鋭さを放っている。


久美は鼻で笑う。


「アンタか。紅音の横で偉そうにしてたくせに、実力あったなんて知らなかったわ」


薫は前髪をかき上げ、小さく微笑む。


「実力はあったわよ。ただ……あの頃はまだ“利用”してただけ」


「はっ、やっぱ性格悪ぃな」


久美は構え、地面を蹴った。


薫は避ける間もなく、久美のローキックを受けて吹っ飛んだ。


「ぐっ……!」


壁に激突し、粉塵が舞う。


久美はゆっくりと歩き寄る。


「終わり?」


しかし薫は倒れずに立ち上がり、拳を構えた。


「まだ……これからよっ!」


久美の拳が再び薫を襲う。

強烈なフック、膝蹴り、裏拳。

薫は受け止めるだけで精一杯で、まともに反撃ができない。


久美は勝ち誇ったように笑う。


「ほらどうした。観察してたんだろ?見ろよこの拳を!」


薫は血を拭い、笑った。


「……見えてるわよ。全部」


久美が眉をひそめる。


久美が容赦ないラッシュを仕掛けた瞬間。


薫は一歩横へ滑り、久美の拳をかわした。


「……!?」


久美の身体がわずかに泳ぐ。


その一瞬を逃さず、薫の脚が久美の脇腹に叩き込まれる。


「っ……く!」


さらに薫は間合いを読み切り、久美の癖を潰すように次々と打撃を重ねた。


「あなたね、攻撃を当てたとき“必ず左肩が下がる”のよ」


ガンッ!


久美の顎に突きが入る。


「右ストレートの後は必ず一歩下がる」


ドッ!


腹へ正確に蹴りが入る。


久美は息が荒くなり、汗が滴る。


「……なんで……全部読まれて……!?」


薫は淡々と答える。


「一年以上……あなたと紅音の動きを、毎日観察してたもの。全部記録して、全部覚えた」


久美の拳が、今度は一切当たらない。


「やば……っ!」


薫はついに久美の額へ掌底を叩き込んだ。


久美の身体が後ろへよろめき、壁へ倒れ込む。


喉が焼けるように苦しい。


(……このまま……負ける? こんなところで? こんな奴に……?)


悔しい涙がにじむ。


その瞬間──


"達也"の言葉を思い出した

「久美。お前の中にはまだまだ燃えるような炎が眠っている。マグマのように身体の中で燃え続けている。それを引き出せるかはお前次第だ」


呼吸を整え静かに心を落ち着ける。

丹田に気を集中し自分の真の力に注ぎ込む


ドクンッ……ドクンッ……!


久美の全身が朱色に脈打ち、熱風が吹き抜ける。


髪がふわりと浮き上がり、まるで見えない炎が揺らめくように舞う。


地面がビキッとヒビ割れた。


「っ……な、に……これ……ッ!」


薫が一歩後ずさる。


久美の瞳が金色に輝き、瞳孔が縦に伸びた。


「これが私の炎。私の中の炎が燃え上がる。これが私の真の力」


久美の声が低く、響く。


「……もう誰にも負ける気がしない」


瞬間──久美の姿が消えた。


「幻日流奥義 炎舞一式」

薫の腹に拳がめり込み、空気が爆音のように弾け飛ぶ。


「っぐぅああああッ!!」


二撃目。

背後へ瞬間移動したように回り込み、首元へ肘打ち。


三撃目。

壁ごと粉砕する正拳。


薫の身体が宙を舞い、意識が完全に落ちた。


久美はゆっくりと拳を下ろした。


身体から湧き出る気が拡散していく


「……紅音を泣かせた罪……軽くねぇんだよ……」


通路の奥が静かに開いた。


「達兄。いや師匠。ありがとうございます」久美は師の心を胸に立ち上がった。



第二通路。

扉が開いた瞬間、鋭い殺気が吹き抜けた。


「待ってたぞ、ガキ」


そこに立っていたのは──

世界空手王者、酒井幹雄。


無骨な拳。

研ぎ澄まされた肉体。

歩くだけで床が軋む。


瑠璃は一歩前に出て、口角を上げた。


「世界一だろうと関係ない。

あたしの拳は……誰にも止められないよ」


幹雄はニヤリと笑い、構えた。


「よく吠える。だが現実を教えてやる」


世界レベルの殺気がぶつかり合い、通路の空気が震える。


──そして、世界を相手にした戦いの幕が上がる。

久美編、ついに覚醒。

今まで積み重ねた努力と、“達也”から託された言葉がついに力となり、久美の炎が目覚めました。

しかし戦いはまだ始まったばかり。

次は瑠璃VS世界王者・酒井幹雄。

彼女が見せる“世界を超える拳”をお楽しみに。

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