第14話【中編】 「暁月の覚醒」
由香里、覚醒。
幻日流の奥義とともに、圧倒的な戦闘力でリサとレオを追い詰める。
だが勝利の瞬間に放たれた銃弾、そして明かされる残酷な罠。
絶体絶命の中、現れたのは――異世界で最強となった“あの男”だった。
激突。
リサの上段蹴りを右腕で受け止めた由香里――しかし、次の瞬間、レオの横蹴りが腹部をとらえ、由香里の身体は宙を舞った。
「くっ……錘を付けてこの動き……」
息を整えながら由香里は受け身を取る。
「夢で見た“あの動き”。今の私に……できる?」
否――やるしかない。
由香里は静かに立ち上がり、全身に“気”を練り上げていく。
リサが飛び蹴りで襲いかかる。
それを水の流れのように受け流す由香里。
続けざまにレオのかかと蹴り。
由香里は大地のようにそれを正面から受け止めた。
リサが再び連続突きを繰り出すが、由香里は風のようにすり抜ける。
「何あれ……さっきまでの動きと違う!」
リサが驚愕の声を上げた。
「俺のかかと蹴りを正面で受けるなんて……化け物かよ」
レオも息を呑む。
由香里の瞳が静かに光を宿す。
「――そろそろね」
両腕に気を纏い、由香里が低く構える。
「幻日流・奥義――暁月!」
瞬間、由香里の姿が揺らぎ、空間が歪んだ。
「なっ……!?」
リサの背後に風が走る。反射的に振り向いた瞬間、身体に切り裂かれるような衝撃が走った。
続けてレオのスタンスティックが閃く――だが、水流のようにかわされ、逆に下から突き上げる激流のような一撃が彼を襲った。
「見えない……動きが……!」
リサは震えながら立ち尽くす。
足元から突き上げる衝撃に、息が詰まる。
真正面に立つ由香里の全身から、光と闇が入り混じった気が溢れ出す。
「幻日流・秘奥義――火闇」
その名を告げた瞬間、リサとレオの身体は連続する打撃の嵐に包まれた。
息を吸う間もなく、全身を砕くような一撃が次々と襲い、二人は地面に叩きつけられる。
「……勝負ありね。鍵、もらうわ」
由香里は静かに二つの鍵を拾い、由香と久美のもとへ駆け寄った。
「ごめん、遅くなって。今助けるから」
鍵を差し込もうとしたその時――
「ふふ……勝ったつもりでいるの?」
リサが嗤う。
「その鍵を回した瞬間――別の場所に囚われてる新堂紅音と新堂瑠璃が爆死するのよ。マスターが仕掛けた罠よ」
「……なにですって!?」
「ほら早く回しなよ。お母ちゃんもお姉ちゃんも死んじゃうよ、早く!」
リサの狂気じみた笑い声が倉庫に響いた。
その瞬間――銃声。
乾いた音とともに、由香里の身体が揺れ、左胸に赤い花が咲く。
「あなたたちは全員死ぬのよ!」
リサが高笑いをあげる。
だが次の瞬間、倉庫の外がまばゆく照らされた。
「神奈川県警だ! 動くな!」
「フッ、何ができるっての。あと数分で全部終わるのに」
リサとレオが裏口へ向かう。
その時――。
地響きのような衝撃が走った。
空気が震え、床が揺れ、立っていられないほどの圧力が倉庫全体を覆う。
「な、何!? 地震……?」
リサが叫ぶ。
砂煙の中、恐ろしく巨大な“気”の塊が現れる。
息を呑むほどの圧。全身の毛が逆立つ。
「由香里……? いや……違う……これは……」
レオの声が震えた。
砂煙が晴れ、光が差す。
その中心に――由香、久美、そして倒れた由香里を抱きかかえたひとりの男が立っていた。
「オイタが過ぎるなぁ……最近のガキどもは。いや、“餓鬼”か」
その声には、異世界最強の威圧と静かな怒りが宿っていた。
――真打、登場。
ここから、怒涛の逆襲が始まる。
物語はついに、異世界の英雄・達也の再登場へ。
娘を救うため、彼がこの世界で何を為すのか。
父と娘、二つの世界が交わる瞬間が、いよいよ次回【後編】で描かれます。
“最強の親バカ”の逆襲をお見逃しなく。




