第2話 達也 ―女神との邂逅―
勇者・達也が世界を救ったその直後――
彼の前に現れたのは、美しい女神。
しかし、祝福の言葉の裏には「次の使命」が隠されていた。
創造神すら巻き込む交渉劇の中で、達也が下した決断とは?
そして、“本当の戦い”の幕が上がる。
前話から続く第二話。勇者と神々の思惑が交錯する、異世界バトル×心理戦の一篇。
気がつくと、そこは女神の城だった。
召喚されたときは頭の中で声を聞いただけで、姿を見るのはこれが初めてだ。
『よくぞこの世界を救ってくれました。心から感謝します』
目の前に現れた女神は、俺の世界の女優にそっくりだった。……まぁ、そんなことはどうでもいい。
「これだけのギフトをもらって倒せなかったら落ち込むだろ」
そう言って苦笑する。
『あなたのおかげで百年は平和が続くでしょう』
女神が微笑む。
「それは良かった。戦友たちの幸せが何よりだ」
心からそう思えた。
――だが。
『では、次の世界に――』
女神がそう言いかけた瞬間、俺は言葉を遮った。
「その前に、今回の報酬だな」
『悠長なことを言っていられる状況じゃないのよ、あの世界は!』
女神が声を荒らげる。
「交渉決裂だな」
俺は女神に攻撃を仕掛けた。
『私には女神の盾がある! あなたの攻撃は届かない!』
仁王立ちする女神。
「諦める選択はないんだよ」
渾身の一撃を盾に叩き込み、亀裂を走らせる。
『馬鹿な……人間ごときの力で……!』
女神は狼狽する。
「次は破壊する」
拳にさらに力を込めたその時、天上から光の壁が降り、神々しい声が響く。
『勇者よ。そなたの気持ちもわかるが、ここは創造神たる我の顔を立て、矛を収めよ』
創造神――神の上の神が降臨した。
「女神を野放しにしていいんですかね、創造神ちゃん?」
(いや、神の上の神にちゃん付けする自分って何者だよ……)
『流石勇者、常人では言えぬことを言う。そなたの力はそなた自身のもの。女神とて抗えぬ。下手をすれば対消滅もありうる……』
「対消滅? ねーよ。神なら復活できるんじゃねーの」
俺は半ば呆れていたが、腹が立ったから攻撃したのは黙っておいた。
『その力は私のギフトではないのよ』
女神が震える声で言う。
「召喚したのはあんただろ。ギフトを授けたって言ってたよな? それがどういうことか説明してみろよ」
あえて女神を小馬鹿にした言い方をする。
『相変わらず癪に障るわね……人間の分際で!』
女神は怒りに顔をゆがめる。
『双方とも静まれ! 女神も我が眷属であることを忘れるな』
創造神が女神を制し、場を収める。
『勇者……いや、達也よ。女神の無礼は我が謝ろう。どうか矛を収めてくれ。だが女神の言う世界は本当に危機的状況なのだ。そなたの力で救ってはくれぬか』
「危機的状況なのは俺も同じだ。家族の方が大事だ」
『ならば女神の世界を救った後、今の時間に戻し報酬を受けるというのはどうじゃ? 創造神たる我が約束しよう』
俺は創造神をじっとにらみ、確かめる。
「……本当にできるんだろうな」
『創造神の名にかけて』
その姿は厳かで、威厳に満ちていた。
「わかった。アンタに免じて引き受ける。そのあとでまた交渉だ」
『最初からそう言えばいいのよ。それがあなたの役割なのだから』
次の瞬間、俺は女神の世界に転送された。
転送される直前、女神に向けて殺気を放ったのは――
これから始まる“本当の戦い”の予感だった。
――第一章 完。
ご読了ありがとうございました!
第二話では、勇者・達也と女神、そして創造神という「神々の三角関係」を描きました。
この物語は、単なる勇者譚ではなく、人間としての信念と神々の理不尽さのぶつかり合いをテーマにしています。
次回は急展開。
現代に舞台を移しての話になります。
どんな展開になるのか乞うご期待!




