表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/102

第11話【後編】絆 〜進化する若い才能〜

食後の穏やかな時間が一転、由香里の意識が切り替わり――再び達也が降臨する。

幻日流の奥義「暁月」を前に、久美と瑠璃、そして紅音までもが進化の瞬間を迎える。

若き才能が目覚める時、そこに生まれるのは新たな“絆”だった。

食事の後片付けを終えると、全員がリビングに集まった。

その瞬間、由香里がふっと力を失い、椅子にもたれかかった。

だが次の瞬間、瞳を開いて静かに立ち上がる。


――達也、降臨。


「すまんな、由香里。時間がないんでな」

声のトーンがいつもと違う。部屋の空気が一瞬で張りつめた。


「たっちゃん」

「たっくん」

「達也」

「達兄」

それぞれの呼び方で、みんなが口々に呼びかける。


「悪いな、みんな。協力してくれ」

達也の言葉に、全員が顔を見合わせ、静かに頷いた。



場所を道場に移すと、達也はすぐに指示を出した。

「これから――幻日流奥義《暁月》をやる。正樹、動画の撮影を頼む」

「久美と瑠璃はウォーミングアップ」

「由香と紅音は救急箱と酸素ボンベを用意して待機」

矢継ぎ早に飛ぶ言葉。まるで戦場の指揮官のようだった。


そして、達也が滑らかな動きで《暁月》の型を再現してみせる。

流れるような動き。無駄のない体捌き。見ているだけで息を呑むほど美しかった。


「久美、瑠璃。二人がかりで来い」

構えを取った達也の目が光る。


「二人がかり?そんなこと言っていいの?後悔するからね!」

久美が勢いよく踏み込み、拳を突き出す。


「舐められてますねぇ、それは!」

瑠璃も笑いながら飛び込んだ。


木刀と拳がぶつかる音、床を蹴る音、空気を切る風。

二人の連携攻撃にもかかわらず、達也は余裕の笑みを浮かべたままだ。


「もっと本気でこい! じゃないと俺も楽しめない!」

楽しげに笑うその声に、久美が吠える。


「言ってくれるじゃない! 瑠璃、本気でいくよ!」

「当然よ、負けないわ!」


二人が息を合わせた瞬間、攻防はさらに激しさを増した。


紅音は少し離れた場所で、食い入るようにその動きを見つめていた。

やがて、ぽつりと呟く。


「力技じゃ……たっくんは倒せない」


その声に、久美と瑠璃が動きを止めかける。

「久美姉、瑠璃姉――もっと連携して!」

紅音の叫びに二人が振り返る。


「……あんた、私たちの動きが見えてるの?」

久美が目を見開く。

「まさか紅音、因子に――」


達也が彼女の前に歩み寄った。

「目覚めたか、紅音」


その言葉に、紅音の瞳が一瞬だけ光を帯びたように見えた。


「久美、瑠璃。少し休憩だ」

達也はタオルで汗を拭き、由香里特製の栄養ドリンクを一口飲む。

その場に集まったみんなの息づかいが、静けさの中に響いた。


「次は――久美と瑠璃。紅音を参謀につけて、俺を攻略してみろ」


「え、紅音を?なんで?」瑠璃が眉をひそめる。

「待って、瑠璃」久美が制した。「紅音の作戦に従えば、もしかしたら達兄を倒せるかもしれない」


「何言ってるの?紅音は今まで一度も私たちに勝ててないのよ?」

瑠璃の反論に、久美は静かに首を振る。


「……あの子、私たちの動きを完全に見てた。気づかなかった?」

「えっ? あの視線、紅音だったの? 久美か達也だと思ってたけど……」

瑠璃も小さく息を呑んだ。


「覚醒したのさ。紅音は」

達也の声が、まるで父のように誇らしげだった。


「なんで達兄がそんなに自慢げなのよ」

「まさか……達也が紅音に、何か教えたの?」


久美と瑠璃の問いに、達也はただ微笑むだけだった。


その微笑みの奥に――確かに見えた。

師として、父として、彼が信じる“若い才能”への希望が。



そして、戦いは再び始まる。

新たに目覚めた紅音の瞳が、確かな未来を見据えていた。

達也が指導者として見せた誇らしげな笑み。

紅音の中に眠っていた「因子」が覚醒したことで、戦いは次の段階へと進む。

仲間として、家族として――それぞれが強くなる理由を見つけ始めた。

次回、第12話「覚醒する血脈」では、さらに深い戦いと真実が明らかになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ