第一章 異世界の勇者 第1話 達也 ―魔王との戦い―
俺は、異世界を救った。
だが本当に救いたかったのは、現代に残した“娘”だった。
魔王を倒し、女神すら殴り倒した男――その名は、達也。
この物語は、世界を超えてつながる父と娘の絆の物語である。
魔王――現代では象徴的な悪の代名詞として使われる言葉。
だが異世界では、本当に「悪の頂点」そのものだった。
魔王を倒すことが、この世界を救うこと。
だからこそ俺は、異世界に呼ばれた。
……迷惑な話だ。
せっかく幸せに暮らしていたのに、異世界の危機だなんて理由で一方的に召喚されるなんて。
訴えてやる!――そう言いたいところだが、この世界じゃ俺たちの常識は通じない。
そもそも誰に訴える? 張本人は神、しかも女神だ。勝ち目なんてあるはずがない。
結局、文句を言ったところで現代に帰る術はない。
なら、魔王を倒して報酬をもらうしかないか……そう思うしかなかった。
でも本音を言えば、魔王を倒したら次は女神も倒してやろうと、心のどこかで考えていた。
女神から授かったギフトは規格外だった。
この世界のどんな生物も、俺を殺すことはできない――それほどの無敵っぷり。
俺が召喚される前、人類は領地の八割を魔王軍に奪われていた。
それが、俺が戦線に加わって一年。今では人類が八割を奪い返していた。
――そして、ついに魔王を討伐する時が来た。
幹部クラスの半分はまだ残っていたが、味方部隊が総力で足止めしてくれたおかげで、俺は魔王のもとへたどり着けた。
「女神の犬め……直接倒しに来たか」
魔王は鋭い目でこちらをにらむ。
『早くしないと手遅れになるんでな』
そう言い、俺は先制攻撃を叩き込む。
「そんな攻撃、通じると思うか!」
魔王は即座に反撃し、互いの攻撃がぶつかり合う乱打戦へともつれ込む。
俺は冷静に戦況を観察し、魔王に最大奥義を使わせる隙をうかがった。
わざと押され気味に見せ、隙を作り、不意打ちを食らったふりをして地面に倒れ込む。
「これで終わりだ!」
勝機と見た魔王が奥義を放つ。
――それこそが、俺の狙いだった。
『待ってたぜ……この時を!』
俺は魔力反転を発動、自分の魔力も重ねて威力を何倍にもして返す。
魔王の身体は半分吹き飛んだ。
「この世で最強の魔王が……なぜ、お前ごときに……」
瀕死の魔王が問いかける。
『本当に強いヤツは、自分が強いなんて思わねえ。ただ、やるべきことをやるだけだ』
魔王は最後までこちらをにらみつけたまま、静かに崩れ落ちて消えた。
魔王の死とともに魔王軍は降伏。
人類軍は勝利し、城では盛大な宴が開かれた。
皆が勝利の美酒に酔いしれる中、俺の周囲が突然まばゆく光り輝いた。
「……なんだ、これは――」
次の瞬間、視界が真っ白に染まる。
――続く。
――勝利の美酒に酔いしれる中、
俺の周囲が突然、まばゆく光り輝いた。
「……なんだ、これは――」
気づいたとき、そこは“女神の城”だった。
To be continued…




