相談
「ねえねえ、岩見の志望大学って分かる?」
「んん?まあ、担任の先生に聞けば分かるかもだけど…でもいきなり2年生を担当してて岩見くんとも何の接点も無い僕が聞いたら不審がられるかもなあ…」
「悩める荒木の為にさ、何とか調べてあげてよ!多分高校の内にはどうにもなら無さそうだからさ。教えてあげたら多分同じ大学選ぶと思うんだよなー」
「まあ、僕なら隙を見て調べる事も出来るだろうけどさ…何かえらく肩入れしてるね?仲良いの?」
「うーん、多分僕は荒木には嫌われてるかな。」
「そうなんだ…」
「でもね、僕には味方がいるけどさ、荒木は1人で頑張ってるじゃない?荒木にはその気の無い相手を振り向かせてあげたいんだあ。」
「へえ。じゃあ僕は難波くんの味方って認識されてるのかな?光栄だな。」
「センセーは僕の彼氏だよ。味方は先生ね」
「ああ、そうだったね。でも振り向いて貰ってるでしょ?増田には。付き合えてるんだし」
「うーん、まあね…」
何だろう…
増田と上手くいって無いのかな?
その他大勢のポジションにやはり不満はあるのだろうか。
この間長沢から聞いた件もあってやはり心配だ。
彼氏…と言うよりやはり保護者だろう僕は。
しかし、いきなり増田と薬の話を持ち出すのは警戒されそうだと聞き出すタイミングを見計らっていた。
○○○○○○○○○
「今日はデートしよ!」
そう言われて難波くんに外に連れ出されていた。
「荒木はねー、岩見と同じ大学受けるみたいよ!センセーのおかげだね!」
「へえ。そうなんだ。何か僕スパイにでもなった気がして怖かったよ。もうああいうお願いは勘弁ね。」
「あはは。こないだはねえ、先生と荒木と僕で水族館で岩見にカミングアウト大作戦したんだよー!」
「何か愉快なメンツだね…何の作戦かよく分からないけど上手くいったの?」
「うーん、イマイチ上手くいったか分からなかった。テヘッ」
「ただ3人で水族館で遊んだだけみたいだね…」
そんなお喋りをしながら並んで歩いていると、少し離れた所に女の子がいた。
難波くんがその子を見た時に
「センセー!疲れちゃった!そろそろホテル入ろ?」
と、割と大きめの声で言って僕の腕を組んでズンズン歩いて行った。
「?」
何だろう…
何かわざと聞かせてる感じだったけど…
あの女の子はもしかしたら増田の付き合ってる別の子なのかも知れない。
あの子経由で増田に嫉妬させる為に他の男とホテルに行ったと知らせたいのかなと思った。
なので大人しく連れて行かれていたが、本当に難波くんはホテルに入った。
ラブホなんてかなり久々だった。
山崎くんと組んでからは忙しくて本当にご無沙汰だった。
付き合ってる人も居なかったし、音楽の仕事や学校で疲れていて正直誰かとセックスするのも面倒に思っていた。
まあ心身共におじさんになってしまったのだろう。
もう32だしなあ。学校では特におじさん扱いだ。
そろそろベテランの部類だろう。
会社員ならまだまだ若手だろうけど。
「さっきいた子、増田の付き合ってる他の子?」
「うん、そう。」
「少しは僕は役に立てたかな?」
「どうだろう。センセーは何とも思わないの?」
「んん?増田の事?」
「うん」
「増田…実は難波くんに増田の事で聞きたい事があったんだ。」
「えっ!?なになに!?センセーは増田先生に嫉妬してる!?」
「何か嬉しそうだね…まあちょっと違ってね。」
「えー。じゃあなあに?」
「難波くん、増田の事で何か困ってる事とか相談したい事とか無い?」
「増田先生に?うーん、何だろう…」
「例えばさ…何か飲まされてるとか…セックスの時とかに。」
「うーん、アレかなあ?たまにラムネみたいなお菓子くれるんだあ。」
やっぱり…
増田は恐らくショウからセックスドラッグみたいなそう言う類の薬を買っていたのだろう…
関係を持っている子に使っているのだろう。
しかし、知らなかったとは言えもし難波くんも服用していたら…
今は平気そうだけど、身体の影響や中毒やもしかしたら逮捕もあり得るかも知れない…
「そうなんだ…難波くんはセックスする時に食べたりするの?」
「うーん、実はね、食べたフリしてたんだあ」
「本当!?」
「うん。幾ら僕でもアレはヤバいやつだって分かるからね」
良かった…
さすが第十八願の因願と成就文を原文で暗記しただけの事はある。
頭は良い子なんだろう。小悪魔だし。
「ほら。今まで渡されたやつ、持ってるよ」
そう言って鞄からチャック付きのビニール袋に入った色の付いたラムネ菓子みたいな物を取り出して見せて来た。
数は3つあった。
「毎回渡されるの?」
「ううん。テストで良い点貰った時のご褒美だよ。」
ご褒美…
これ罰ゲームだろ…
色々ヤバいな増田…
「難波くんはそれヤバいって分かってたんだよね?そんな物渡してくる増田の事、本当に今も好きなの?」
「…」
「とりあえずこれは難波くんが持ち歩いてるのは見つかるとマズいから、僕が預かるよ。悪いようにはしないから。」
「うん」
そう言って難波くんから薬を預かった。
後で長沢に渡してその麻薬取締官に渡してもらおう。
「じゃあ、帰ろうか。」
僕がそう言うと難波くんが僕の服の裾を掴んだ。
「ホテルに入って何もしないの?」
「うーん、そんな気分にはなれないなあ。」
「僕が子供だから?」
「まあ、それも有るかもなあ。」
「僕の事嫌い?」
「うーん、好きか嫌いかで分けるなら好きの部類に入るけど…」
「僕はセンセーと同い年の増田先生と何回も寝てるよ。」
そう言って難波くんはキスして来た。
「うーん…やっぱり無理みたい…難波くんじゃ僕、勃たないみたい…」
そう言って自分の下半身を指差した。
僕は今まで好きになった人としか身体の関係は持たなかった。
多分難波くんに思う好きはそう言う好きでは無いのだろう。




