連絡
「ねえねえセンセー!3年の荒木って分かる?」
「うん、2年生の時に僕のテスト問題で面白い解答して来たからよく覚えてるよ?」
「へぇ。そいつがね!岩見に片想いしてるんだよー!」
「へぇ、そうなんだ。」
岩見くんとは派手な結構目立つタイプの人間で、見た目もイケメンで女の子にもモテていて、女の子達と遊んでるのも隠す事もなく、性格も明るくて素直で優しいと僕の嫌いな全てを兼ね備えた所謂、増田と長沢を合わせた様なタイプの人間だ。
荒木くんには勝手に自分に近い人間だと共感していたからそんな分かりやすい相手が好きだなんてなんだか失望してしまった。
て言うか、荒木くんも同類だったのかと驚いた。
荒木くんは岩見くんが好きって事はネコなんだろうか?
確か剣道とかしてたし、誰にも心を許して無さそうで侍っぽかったから意外だった。
そんな僕の態度が気に入らなかったのか、難波くんが少し膨れっ面をしていた。
「荒木は剣道以外で合気道やら柔術やら護身術やら一通りやってるから変な事は出来ないよ。元警察の息子らしいからね。荒木を襲うのはイコール死だよ。」
「別に手は出さないよ…」
一体何を警告してるんだろう…
色々怖い情報なんだが…
「荒木は初恋っぽくてさー!健気に岩見を影から見つめちゃっててさ、いじらしいんだよー。そんな恋に迷える荒木に先生を紹介してあげるんだあ!えへっ」
「そうなんだ…」
長沢かあ…
多分荒木くんは苦手なタイプだろうなあ…
長沢が斬り捨てられないか少し心配になった。
難波くんも人の恋路に首を突っ込んで…
お節介で恋バナやら噂好きで…
やっぱり自分でも言ってたけどJKみたいだなぁ
普段は甘えん坊なのに、お兄さん…お姉さん?気取りをしていて何だか可愛らしいなあと思った。
○○○○○○○○○○
「何にする?」
「バドワイザー」
「なんだよ、銘柄変えただけかよ…」
「しがない公務員だ…たかるなよ…」
「ハイどーぞ。」
「何か難波くんに荒木くんを紹介されたってな?」
「ああ…この間会ったぞ。面白い子だった。警戒されまくってたな。ははは」
「そうか。まあお前の命が無事で良かったわ」
「ん?まあ別に俺は大丈夫だが、竹刀持参で来てたぞ。一途な侍乙女って感じだったなあ。少しお前に似てるのかもな。」
「…」
竹刀…やはり多少は殺る気はあったのだろうか…
「所でな、少し気になる事が出来てな…お前に言っときたい事が発生したから連絡しようと思ってた所に来てくれて丁度良かった。」
「ん?何だ?」
「まあその前に…また少し俺の話をしておこう。」
「ふむ…」
「俺はな、学校辞めてからはまあ自暴自棄になって身体を売ったりしてな、その日暮らしをしていた」
「…」
「でな、そこでたまたま声を掛けた男と妙な縁が出来てな」
「?」
「その人は実はマトリだったんだ。たまたま近くを捜査していた。」
「マトリって、麻薬取締官か?」
「そう。その人からまた妙な経緯でな、当時16歳の男の子を預けられた。その子は親の借金のカタにヤクザに売られててな、薬漬けにされて客を取らされていた。この店にも客を探しにたまに来ていた子だった。その人が助け出した子だった訳だ。」
「…」
「まあ、その子が結局は俺のパートナーになった訳なんだが。」
「そうだったのか…」
「でな、その摘発した奴らの薬の売買に関わってた奴を調べてるらしいんだが」
「ふむ」
「その中にどうやら増田がいるらしい…」
「マジか!?」
「ああ…サンジと名乗る相手で…この辺りに出入してる奴が居ないか尋ねられた…」
「サンジ…」
「実はな、学生の時に一回俺が二丁目のハッテン場に増田を連れて行った事があってな。」
「お前…何やってんだよ…」
「まあ、若気の至りだ。許してくれよ。でな、そこで増田はショウと会ってるんだ」
「ショウか…僕も噂では知ってるが、確か何か色々ヤバい奴だったよな?」
「そう。その時は増田にもう会わない様には忠告したつもりだったんだけど…」
「…」
「ショウがこの間パクられて、その顧客にサンジの名前があったらしくて…」
「マジか…」
「難波くんの事も有るし心配だったから…増田の塾の場所とかを教えた。」
「そうか…」
「俺からはアレだから…お前から難波くんに増田から薬とかやらされてないかそれとなく探ってみてくれないか?」
「分かった…」
難波は早々に井上にバラしてましたね…




