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マカロン報連相  作者: 水嶋


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表と裏

Q :この作品の主人公が自分だった場合どう行動するか?



A:井上先生がこの問題を学年全員に問いかけている時点で何かあるのではと思います。


井上先生に解決しなければならない問題があり、この問いに乗じて多数の意見を無料で得て打開策を編み出そうとしているのではないかと疑っています。


その場合はまず井上先生がやるべき事はこのテスト問題を作成する前に自分の抱えている問題をいち早く解決させるべく、然るべき所へ然るべき金銭を用意して持ち込むべきだと思います。




僕はこの解答に満点をつけた。





僕は自分でも捻くれた奴だと思う。

優しい、素直、裏表無い、世に言う好きな性格の代表格は、僕の大嫌いな性格ベストスリーだ。


三拍子揃った様なそんな奴世の中にいる訳無かろう。




まず、優しいの定義は何を持って決めているか問いたい。


ただ甘やかす事か

将来を見据えて厳しくする事か


これは受ける側からすれば全く異なる。

何でも許してくれる事を優しいと思う人にとって耳が痛い言葉を言ってくる人間は意地悪だと受け取るだろう。

逆もまた然り。



素直に至っても同じ事が言えよう。


思った事をそのま包み隠さず伝える事か

間違っている事を間違っていると指摘する事か


自分が正しいと思い、賛同されている人間にとって異なる意見を言う人間に対しては素直で無いと受け取るだろう。

これまた逆もまた然り。





裏表が無い…

そんな人間は存在しない。

何かしら表の顔と裏の顔はある。


もれなく自分も…




僕は高校で教師をしている。これが表の顔だとするならば…




「教授、今度の新曲のプロモも俺1人でやりますか?」


「悪いね、僕身バレNGだから。」


「そろそろこっち一本でも大丈夫じゃない?学校やめても、もう教授だし。」


「さすが一本グランプリで決勝進出競っただけは有るね」


「まあ、あれはトリックスターの春山には敵うわけないし、俺その道極めるつもり無いんでって、違うでしょ!」


「まあ、僕は前にも言った様に自分のバランス保つために教師やってるから。」



Aラッシュとして山崎くんと組んで音楽活動をしている。

メジャーデビューも果たしている。

山崎くんとは一応ツインボーカルとなっているが、僕は歌番組などの演奏の収録以外では表に出ない。

この時も変装をしていて言葉も喋らない。


表には全て山崎くんに出て貰って、機材も触れるし曲も作れるので僕は裏方に徹している。


山崎くんは見た目も良いし性格も面白いのでバラエティーによく呼ばれて良い宣伝になっている。

その内役者なんかでも呼ばれるかも知れない。

そうなったら映画やドラマのタイアップ曲も出せるかも知れないから、どんどん頑張って欲しい。





僕の出した問題に解答した荒木君は僕に近い考えのある子だと共感が持てた。


色々な角度から物を見て、異質な考えが導き出せる人間は好感が持てる。


多分世の中では捻くれていると捉えられるのだろう。



そして荒木くん…含め生徒皆から僕は嫌われている。






そして、僕にはもう一つ人には大っぴらに見せていない顔が有る。




「井上センセー、ちょっといい?」


「どうしたの?難波くん」



難波くんと言う生徒に人気のない場所に呼び出された。



「はい、これプレゼント!」


「何?これ」


可愛いラッピングをされた小さな箱を渡された。


「バレンタイン!先生に。」


「へえ。チョコレート?」


「ううん。マカロン」


バレンタインって好きな人にチョコレートあげるイベントじゃなかったっけ?

そもそも男の難波くんが男の僕に?




「センセー、男好きでしょ?」


「どうしてそう思うの?」


「俺同類分かるから。鼻が効く。ほぼ当たる。」



難波くんは小柄で髪とか薄茶で子犬みたいな所謂ゆるふわでおめめクリクリのキュるっとしてて女子からマスコット的な愛玩的に人気がある子だった。


麻薬捜査犬みたいだな、プードルの。



「だとしたらどうなの?」



僕は自分からはカミングアウトはしないが、別に隠したりはしてきていない。


この年頃の子なら面白いネタなんだろう。

難波くんは自分もゲイだと言っているが本当かどうかは分からない。

僕は生徒から嫌われているのは分かっていたので、何かの脅しに使いたいのかも知れない。


まあ、その脅しに乗る気は無いが。

別に学校にバレても特に問題ない。


暫くは騒がれるだろうが元々誰にも好かれようとも思ってないし、嫌われている。

その内開き直っていれば誰も騒がなくなるだろう。



「じゃあさ、僕と付き合ってよ」


「難波くんと?恋人として?」


「うん。そう。」


「何で?」


「センセーが好きだから?」


「僕のどこが好きなの?」


「カッコいい所?」


「こんな普通のメガネ掛けたスーツのおじさんが?」


「うん。僕、年上好きだから。」


「ふうん。今付き合ってる人は居ないの?」


「居るよ?」


「へえ。他に恋人が居るのに僕と付き合いたいの?」


「そう。」


「どうして?」


「その人も沢山の人と付き合ってるから。」


「嫉妬させたいの?」


「そう。」


「僕を都合よく利用したいって事かな?」


「うーん、まあそうなるのかな?」


「じゃあ良いよ。付き合ってあげる」


「ホント!有難う!センセー大好き!」






このバレンタインにマカロンを渡して来た小悪魔の難波くんが面白くて付き合う事にした。


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