そばにいたい
ルナの瞳が、戦いの余韻に濡れて光る。
その視線の先、ルアンは静かに立っていた。
「……もう行く」
無言で差し出す手を、ルナは掴もうとしなかった。
掴みたくなかった……
また私から去るつもりだ。
こんな時にこそ私は魔法を使って時を止めることもでき……
だが、それは自分が自分を許せなくなるのはわかっていた……
彼の瞳には確かな温もりが宿るが、同時に離れる覚悟も光っていた。
「お前のことは、大事に思っている。
だが、孤独を好む俺は――お前の側にはいられない」
ルナの胸がきゅうと痛む。
それでも、彼の言葉には優しさがあった。
「何かあれば――俺は必ず助ける。お前を傷つけはしない」
ルアンは一歩近づき、無言のままルナの頬にそっと唇を寄せた。
ほんの短い瞬間の、優しいキス……
ルナはルアンの背に震えながら両手をまわす……
それは言葉よりも雄弁に、彼の気持ちを伝えていた。
短い沈黙の後、彼は離れる。
風に消えるその背中を、ルナは見つめながら心の奥でつぶやいた。
「……ルアン」
その名を呼ぶ声は、孤独に閉ざされた心をそっと揺らすように、震えていた。
大丈夫。
私を想うルアンの為に……ルナは一歩前に進む。
彼がそばにいなくとも、魔女として、そして自分として――立ち向かうために。
夜空に浮かぶ月が、静かに微笑んでいるかのようだった。




