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敵なんか目には
カイロスが呪文を叫び、無数の鎖が再びルナに襲いかかる。
だが今度は違った。
ルアンが前に出て斬り払い、ルナがその隙に変身魔法を使って黒い影から逃れる。
「私を縛れると思ったら――大間違いよ」
ルナの瞳に鋭い光が宿り、両手から炎が弾ける。
巨大な炎の翼が広がり、廃工場全体を朱に染めた。
カイロスが怯む一瞬――そこへルアンの刃が疾る。
「……終わりだ」
短い言葉とともに、鋭い突きが鎖の核を貫いた。
「ぐ、ああああッ!」
カイロスの絶叫が闇に消える。
崩れ落ちる敵を背に、ルナは深く息をつく。
けれどその瞳は、隣に立つ男を見つめていた。
――ずっと変わらない。
無口で、不器用で、それでも最後には必ず隣にいてくれる。
胸の奥に、かつての戦場で芽生えた感情が再び疼いた。
いや、今の彼を見たことで……それはもう、片思いの痛みではなくなっていた。
「……ルアン」
その呼び声は、長い孤独に閉ざされた心に花が芽吹くように、微かに震えていた。




