高揚
町外れの小道に潜む敵は、異能の力をちらつかせながらルナに迫る。
ルナは猫の姿のまま屋根の上で鋭く鳴き、アルバは空から旋回しながら監視。
ルアンは静かに敵の動きを封じるようにルナと距離を置き、位置取りする。
だが突然、ルナの右腕にかすかな痛みが走る。
「……っ!遠隔で張った魔法陣を突破しただと?まさか……魔法の一部が封じられた?……」
アルバが低く囁く。
「封印の儀の能力かまさか……注意しろ」
敵の勢いが増す中、ルナは心を落ち着けるために過去を思い出した。
――
千年前、まだ異国でルアンと出会った頃。
若き日のルナは、戦友としてのルアンの背中を見つめながら、胸の奥で芽生えた想いを隠せずにいた。
彼はいつも冷静で、言葉少なで、でも行動は正確で優しかった。
小さな雨宿りの石橋の上、ルナは意を決して呟いた。
「……この街もそろそろ崩壊するわね……そう長くはいられないと思うわ。……
でも、……でも、世界の在り方がどんなに変わろうとわたしは何も変わらないわ。……(ダカラソバニイテ……)」
ルアンはその時、ただ無言で彼女を見つめ、微かに頷いた。
言葉はなくても、二人の心は通じていた――ただ、ルナは片思いのままだった……
ルアンはその後ルナから去り、名前も呼べずに
数百年もの間を一人で過ごした。
――
今、戦場で再び彼の背中を追うルナ。
「ルアン、今度は……
隣に立てる」
アルバがそっと念を送る。
「忘れるな、集中だ」
敵の攻撃が迫る。
ルアンは無言でルナをサポートし、敵が視界に入ると精神のドアを開き相手の思考を停止させる能力で追い詰める。
二人の静かな呼吸と、互いの存在が確かな信頼を紡ぎ出す。
闘いの中で、ルナの胸に去来するのは、ただの片思いの切なさだけではなかった。
戦友として、そしてかつての淡い想いを抱いた相手として――
彼女は今、共に闘うことでその想いを少しだけ形にできているのだという嬉しさと……まだ少しでも長くこのままでいたいとさえ思う高揚を頬に熱く感じていた……。




