ルアン
夕暮れ、町の空は淡い茜色に染まっていた。
ルナは窓辺でアルバと共に外を見下ろす。
「静かね……でも、何かが近づいてきてはいるわね」
アルバが首を傾げる。
「気を抜くな」
ルナは気だるく頷き、心の中で準備を整える。
その時、通りの角からひっそりと現れる影。
人間の男性――
いや、違った。
ルナが唯一心を許し、そばにいたいと思ったただ1人の相手。
「……ルアン」
ルナは心の奥底で古い名を呼ぶ。
かつて戦友だった、異国での名前――今は別の姿をまとった彼が、静かに立っていた。
アルバが小さく羽を広げる。
「良かったな、敵じゃなくて」
ルナはわずかに震える……
「……久しぶりねルアン。」
ルアンは無言で頷き、周囲を見渡す。その瞳には冷静さと圧倒的な存在感が宿っていた。
「何か来る……また何かと揉めてるのか?」
「またとか言わないで。うんざりしてるのよこっちは……」
ルナの心の声がルアンに届く。
ルアンはわかったわかったと返すかのようにゆっくりとルナに手を上げるだけで、二人の連携が成立した。
その瞬間、町の入口の小道に人影が増え、異質な気配が押し寄せる。
ルナは変身魔法で姿を猫に変え、アルバは空から監視。
ルアンは人間の姿で静かに敵を迎え撃つ。
「昔、恨みを買った相手の血の匂いだわ……思い出させてくれるわね」
ルナの心がざわつく。
アルバが囁く。
「でも、今回は私たちがいる」
夕暮れの町で、静寂の中に潜む戦いの気配――
ルナとルアン、そしてアルバの三者は、無言のまま闘いの幕開けを待った。




