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【1部完結】クズの婚約者は金ヅルにしますのでどうぞお構いなく  作者: いか人参
1部

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24/24

24.【番外編】彼女の好きな花


シャルロッテが電撃結婚をしてからしばらく経ったある日、事後処理に見通しが付いたとのことで久しぶりにアレクスティードが彼女の邸に遊びに来ていた。


いつものように大袈裟な手土産を引っ提げてきたため、シャルロッテから歓待を受けるアレクスティード。

理由は何であれ、目の前で笑顔になる彼女のことが愛おしくて堪らない。



「そういえばさ、シャルの好きな花って何かな?」


ティーカップをソーサーに戻したアレクスティードが、上目遣いで尋ねてきた。


自分が彼女を好きな理由なら無限に言えるが、シャルロッテの好きな物はまだ把握しきれていない。

少しずつ情報収集をしていこうと、手始めに無難な花について質問を投げ掛ける。


(いや待てよ…もしかして、シャルは花には興味無かったか…?)


愚問だったかもしれないと、口にしてすぐ後悔が押し寄せた。利益重視の彼女にとって、すぐに萎れてしまう花は価値を持たないかもと。



「薔薇よ。」


アレクスティードの考えに反して、シャルロッテが迷う間も無く即答した。そして彼の反応を見ることなく、手土産で貰ったケーキを食べ続けている。



「薔薇、か…」


無難といえば無難な回答だったが、普通の令嬢ではない彼女が王道を選んだ理由に興味をそそられる。アレクスティードはテーブルの上に身を乗り出した。



「ちなみに、何色の薔薇が好き?」


「あら?プレゼントでもしてくれるの?そうね…アレクから貰うなら赤い薔薇が良いわ。」


「あか」


ほんのりと耳を赤くしたアレクスティードが俯いて反芻する。


赤い薔薇は紛うことなき「愛」を象徴する花だ。それを妻から強請られるなど、期待しない方が無理だった。



「分かった。この次を楽しみにしてて。」


「ええ。なるべく活きのいい新鮮なもので頼んだわよ。」


勢いよくソファーから立ち上がったアレクスティードに、シャルロッテがひらひらと手を振る。


彼女は最後、花に似つかわしくない表現をしていたが、脳内を赤い薔薇に侵された彼の耳には届いていなかった。



その翌日、早速アレクスティードから大量の赤い薔薇が届いた。

玄関を埋め尽くす薔薇の量に驚いたヘルテルが、まだ寝ていたシャルロッテのことを叩き起こしにきた。



「姉さん!姉さん!早く起きて!大量の薔薇で玄関がっ…」

「んん…」


寝ているシャルロッテの肩を容赦なくゆする。



「………ん?ばら……?」


半分目を開けたシャルロッテが、ぼんやりとした頭でヘルテルの言葉を咀嚼する。ベッドから起き上がったものの、上体は前後に揺れていた。



「……あ!大変、早くしなきゃ!ヘルテル、貴方も手伝ってちょうだい!!」

「は?姉さん??」


いきなりスイッチが入って寝台から飛び降りたシャルロッテは、ヘルテルの首根っこを掴んで玄関へと急いだ。




その日の昼過ぎ、アレクスティードが邸にやってきた。好きな花をプレゼントしたシャルロッテの反応を見るためだ。


彼女のことだから、そこまで感謝されることはないだろうと心に予防線を張りつつ、プレゼントしてもらいたいと言われたことを思い出して頬が緩む。



「シャルロッテ、その…荷物届いたかな?」


玄関で出迎えてくれたシャルロッテに控えめに尋ねた。プレゼントと呼ぶのは押し付けがましく思われるかも…と言葉に細心の注意を払う。



「ええ!おかげでとってもよく出来たわ!!」


仁王立ちをしたシャルロッテが、なぜか誇らしげに胸を張る。



「ん?出来たって…?」


意味が分からず、アレクスティードが顔を傾けて尋ね返す。その表情は困惑に満ちていた。



「え?そんなの薔薇ジャムに決まってるじゃない。高級な素材はやっぱり違うわね。いつも以上に艶が出たわ。」


「え…は?もしかしてそれって、俺が贈った薔薇がジャムになっちゃったってこと?」


「そうよ。だってそのために大量にくれたのでしょう?花の使い道なんて他にないじゃない。これは…市井で高く売れるわよ。」


「しゃる…」


まさかの結末に、アレクスティードが涙目になる。現実を受け止めきれない。



「安心して。貴方の分もあるから。ほら、ひとつ上げるわよ。」


差し出されたのは、トースト一枚分程度の量しか入っていない極小の瓶だった。王室御用達の花屋で買った最高級の薔薇のため、やたらと色艶は良かった。



「………ありがとう。」


雑念を捨て、有り難く両手で受け取った。


(これは俺のためだけに特別に用意されたってことだよな。そう、俺は特別俺は特別…)


小さな赤い輝きをジャケットの内ポケットに収め、自己肯定感を上げる魔法の呪文を繰り返していた。



後日、あの日大量に届いた薔薇は食用ではなく、アレクスティードからの贈り物であったということを知ったヘルテル。


不覚にも姉の話を信じてしまった自分を恥じ、声が掠れるほどアレクスティードに謝り倒したのはまた別のお話。



お読みいただきありがとうございます!

これからその後の話を書いて行こうと思いますので、機会ありましたらまたよろしくお願いします。

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