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第29章 王都の門をくぐる【前編】

朝露に濡れた道を歩き続け、ついにカイたちの前に王都ルルセリアが姿を現した。

 灰色の高い城壁が朝日を受けて淡く光り、その向こうにいくつもの尖塔がそびえている。巨大な門前には、すでに大勢の旅人や商人が列を作っていた。


「これが……王都か」

 ジークが思わず息を呑む。リュナも緊張した面持ちで人波の向こうを見つめている。

 馬車、露店、荷を背負った子ども、威圧的な兵士――さまざまな階層と人種が入り交じり、村とはまるで違う世界だった。


 カイも圧倒されていた。行き交う人々の声や、香辛料の匂い、商人たちの掛け声。

 遠くからは市場の太鼓や、教会の鐘の音が重なって聞こえてくる。


 門の近くでは、数人の旅人が身分証を問われたり、荷を厳しく調べられたりしている。

 「通行証のない者は本日中に立ち去るように」

 門兵の声に、数人の旅人が列から外されていった。


「警備、かなり厳しいな……」ジークが小声で言う。


 自分たちの番が来ると、カイの心臓がどくんと跳ねる。

 セラが先に一歩進み出て、落ち着いた声で言った。「東区で宿を探す旅の者です」


 門兵は一人ずつ順に顔を確認し、手慣れた調子でいくつか質問を重ねた。

 だが意外なほどすぐ、通行証に印を押してくれた。


 ジークが門をくぐりながら、ひそかにリュナへささやく。「なあ、俺たちだけやけにあっさり通してもらえなかったか?」


「……なんか妙だよね」

 リュナも不安そうにうなずく。


 カイは振り返って門兵の様子を窺ったが、兵士たちは無表情のまま次の一団へと目を向けていた。


 王都の中へ足を踏み入れると、そこはまるで別世界だった。

 石畳の大通りには青や赤の色鮮やかなテント、香ばしい焼き菓子の香り、各地の方言が飛び交い、店先では芸人や旅芸人が曲芸を披露している。


「うわぁ、なんだかすごいね!」リュナの瞳が輝く。


 遠くに立ち並ぶ商館の看板、階段の上で物乞いをする子ども、煌びやかな衣装の貴族や、その護衛に目を光らせる兵士たち。

 時折、露店の前で値切り交渉が始まり、熱気と喧騒が渦を巻いていた。


 カイは新しい世界に胸が高鳴る一方、心の片隅に奇妙なひっかかりを覚えていた。

 (本当に、こんなに簡単に通ってよかったんだろうか……)


 セラがふと小声で言う。「王都は賑やかだけど、何かが裏で動いている時の方が静かなんだよ。油断しないで」


 四人は荷物を持ち直し、大通りをゆっくり歩き出した。

 その背後で、ひとりの黒衣の男が、じっと彼らの姿を見送っていた。

第29章「王都の門をくぐる【前編】」までお読みくださり、ありがとうございます。


 ついに舞台は王都ルルセリアへ。カイたちが初めて“大都市”に足を踏み入れる場面では、村とはまったく違う人々の熱気や雑多な喧騒、そして世界の広がりを感じてもらえるよう意識して描きました。


 同時に、表の賑やかさの裏で動く“見えない視線”や、簡単に門を通された違和感――物語が大きく動き出す予兆も、この章にさりげなく織り込んでいます。


 この先、王都でどんな新しい出会いや事件が待ち受けているのか、仲間たちがどんな選択を迫られるのか。ぜひ引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


 感想・ご意見もお待ちしています!

 次回【後編】もどうぞよろしくお願いいたします。

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