第26章 王都への道
初夏の風が、草原を渡っていく。
カイたちは小さな街道を歩いていた。背中には、見慣れた学院の丘が徐々に遠ざかっていく。
「これが……世界ってやつか」
ジークが大きく腕を伸ばし、深呼吸をする。どこまでも広がる空と、知らない地平線。
リュナは足元の小さな花を見つけて微笑む。
「道端の花って、学院の中庭に咲いてたものとは全然違うね。色も形も……なんだか強そう」
「この地方は魔力の流れも違う。密度の濃淡が土地ごとに異なるのは有名だわ」
セラが冷静に周囲を観察する。その横顔には、学院時代よりもどこか頼もしさがあった。
カイは歩きながら、自分の内側を探るように呼吸を整える。
学院を離れても、密度魔力の感覚は消えない。むしろ、広い世界に出て――
「自分という輪郭」が、どこまで通用するのかを知りたいと、今は思っていた。
旅の道中、街道沿いにぽつぽつと小さな村が現れる。
行き交う商人や旅人たちは、カイたちに興味深そうな視線を向けたが、特に声をかけてくる者はいない。
「次の町は王都の外れにある“トゥラス”って村。そこで情報を集めてから王都に向かうのが良いだろう」
セラが地図を広げながら提案する。
「うまいものあるといいな~」
ジークがすかさず茶化すと、リュナもくすりと笑う。
「私、初めての町はちょっとドキドキする。……でも、なんだかワクワクもするよ」
「きっと、新しい出会いが待ってるよ」
カイが言うと、みんながうなずく。
やがて遠くに、石造りの門と低い煙が立ちのぼる村の姿が見えてきた。
「よし、まずは腹ごしらえと情報集めだな!」
ジークのいつも通りの言葉に、四人は自然と笑い合う。
新しい世界への旅は、こうして静かに、けれど確かな期待とともに始まっていく――。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
学院という“箱庭”を出て、カイたちが初めて本当の外の世界に踏み出しました。
旅路のなかで見えてくる新しい景色や、仲間たちの意外な一面、
そして「密度」がもたらす新たな出会い――
物語はこれからどんどん広がっていきます。
次回は、いよいよ王都の入り口。
カイたちの冒険と成長を、これからもどうぞ見守っていただけると嬉しいです。
引き続き『魔導密度戦記』をよろしくお願いいたします。




