第20章 選ぶ者
静かな石造りの面談室。
木製の机の上には三通の書簡が置かれていた。
「これが、君に示された選択肢だよ」
シェル先生が、珍しく真面目な顔で言った。
カイはその紙を見つめる。
学院上層部による観察対象としての残留
軍部傘下の密導課にて制御訓練プログラムへの編入
推奨されないが、本人希望による一時的退学および隔離逃避
「……全部、“逃げ場”が用意されたように見えるな」
「君が“誰にも理解されないもの”だからだ。
それでも、生きてる限り“決断”は避けられない」
部屋を出ると、リュナが廊下で待っていた。
彼女の目は揺れていない。カイを真っ直ぐに見ていた。
「答え、出た?」
「……まだ。でも、逃げるのはやめた」
リュナはうなずくと、言葉を重ねた。
「カイの中の密度、私は感じることができる。
光としてじゃない。……波として、重さとして」
彼女の掌が、そっとカイの手に重なる。
「もし、その密度が“壊れるもの”だとしても。
私は、受け止められるって……信じてる」
別の場所では、セラが一人、魔導鏡を覗いていた。
そこには、魔族上層からの「接触許可指示」が映っていた。
(やはり……“回収”の準備が始まった)
彼女は目を伏せた。
(でも私は、あの人を“報告対象”としてしか見ないままで……終われる?)
夕暮れ。学院の中庭に集まるDクラスの面々。
ジークはいつになく真剣な顔だった。
「よぉ、カイ。聞いたぜ。どっか行くって?」
「……どこにも行かないよ」
「は?」
「選ばされるんじゃなくて、自分で決める。
学院にいるのも、力と向き合うのも、全部“俺が”選ぶ」
静かに告げたカイの言葉に、ジークは思わず笑った。
「そっか。……いいじゃん、それ」
その夜、リュナはひとり屋上で星を見ていた。
(私は、彼に選ばれたわけじゃない)
(でも、自分で選んで傍にいるって、決めたから──)
彼女の内側で、静かに密度の波が広がっていた。
第20章までお読みいただき、ありがとうございます。
「選ぶ」ということ、それぞれの立場や想いを描く章となりました。
物語はいよいよ転機を迎えます。
次章もぜひお付き合いください。




