【特別章】沈黙の系譜 〜密度の果てにいた者たち〜
本章は、『魔導密度戦記』第19章に登場した“沈黙の系譜”に関する魔族の古伝承をもとにした【特別章】です。
本編とは異なる語り口で、かつて密度魔力に到達した者たちの記録を描いています。
カイという存在が、なぜ“異形にならないのか”。
そのヒントを、少しだけ感じ取っていただけたら幸いです。
“波に沈む者は語らず。
形を失わぬ者は、輪郭を曖昧にして消える。”
それは、魔族の最古層でさえ真偽を問う、静かな伝承。
密度魔力の奥底に触れた者が辿り着く、神にも似た境地。
記録に残るのは、三度。
いずれも、時代も大陸も異なり、名は失われている。
最初の者は、
波を内に溜め、言葉ひとつ残さず世界を去った。
その地には、いまだ魔素が満ち、術者の足は届かぬ。
二人目は、
異形の因果を拒み、民を守るために密度の核を抱いた。
肉体は残らず、ただ一片の光輪が石に刻まれている。
三人目は、
誰よりも濃く、誰よりも静かだった。
密度に沈むことも、形を手放すこともせず、
ただ、波と共に沈黙し、風の中に消えた。
この三人の存在を、魔族の記録はこう名付ける。
**“沈黙の系譜”**と。
波を越え、異形とならず、力を持ちながら語らなかった者たち。
それを畏れ、封じ、忘れようとしたのは、
──常に、密度に蝕まれてきた我ら自身だ。
“第四の者が現れるとき。
密度の輪郭は再び揺らぎ、
かつて語られなかった声が、波として響くだろう。”
そして今。
再び“輪郭を崩さぬ者”が歩き出す音が、
確かに世界に、届きはじめている。




