【特別章】囁く輪郭 ~セラ・ルィメ視点~
※このエピソードは、本編第15章「囁く輪郭」の直後、
セラ・ルィメの視点で描いた【特別章】となります。
本編では語られなかった彼女の“揺れ”と“想い”を、
静かな内側からお楽しみいただければ幸いです。
──私は、揺れている。
密度を保つ訓練は何度も受けてきた。
人間社会に潜るために、呼吸の仕方から言葉の抑揚まで叩き込まれてきた。
擬態魔術は優秀で、学院の結界にも問題なく馴染む。
それなのに。
(あの人の前だと、波が崩れる)
カイ。
彼の“密度”は、魔族でさえ恐れる領域のはずだった。
それなのに、彼は壊れていない。異形にもなっていない。
「密度が高いのに、安定している」
そんな存在、理論上ありえない。
なのに、私は——惹かれてしまう。
理由なんて、まだわからない。
でも、あの空間で彼と並ぶと、
“自分の存在が許されている”ような気がしてしまう。
(でも、それは甘えだ)
私は魔族だ。
しかも、密度を上げすぎたせいで、もう「完全には戻れない」。
指先の魔紋。耳の縁に浮かぶ紅の線。
それらは、隠しても消せない“代償”だ。
——けれど、もしも。
もしもあの人が、
密度の先に“異形じゃない未来”を示してくれるなら。
私は、自分の異形を……少しだけ、肯定できるかもしれない。
ご覧いただきありがとうございました!
この特別章では、セラの視点から
「密度」と「異形」、そして「揺れ」と「共鳴」のはざまを描いてみました。
本編では描ききれなかった、彼女の静かな感情の揺れが、
少しでも伝わっていたらうれしいです。
引き続き、密度の向こう側へ——どうぞよろしくお願いします!




