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特別章:星灯の夜・後編「願いの星」
中庭を抜けると、学院裏手の丘に続く小道がある。
祭の熱気が遠ざかり、夜風の冷たさが頬に心地よい。
「……ここ、初めて来るかも」
カイがぽつりと呟く。
「私、好きなの。誰もいないこの道」
リュナはそう言って、少し前を歩いた。
空にはまだ、魔灯が名残のように瞬いている。
カイはその光を見上げながら、言葉を探していた。
「なあ、リュナ。俺……やっぱり怖いよ」
「……うん」
「今は良かった。でも、あの魔力がいつか——
誰かを傷つけるんじゃないかって」
足を止めたリュナは、カイの手を取った。
「カイの魔力は、光じゃなかった。でも、
みんなの光を綺麗に見せてくれた。
私はそれが、すごく素敵だと思ったよ」
「……リュナ」
「それに——」
リュナがそっとポケットから、小さな魔晶石を取り出した。
「これ、灯し忘れてた魔灯。
でも、今からでも一緒に灯したら……来年の願い、叶う気がする」
カイはそれを受け取り、ふたりで手を添えて魔力を込めた。
黒銀と光の粒子がゆっくりと混ざり合い、
空へ舞い上がった魔灯は、他のどれよりも静かで、美しかった。
「……願い、叶うといいな」
リュナが小さく笑った。
「うん」
カイの答えも、静かだったが確かなものだった。
夜空に浮かぶ一つの星。
それはふたりだけの、秘密の光だった。




