特別章:星灯の夜(前編)
学院の中庭には、色とりどりの魔灯が浮かんでいた。
冬至を祝うこの夜、「星灯の夜」と呼ばれる祭は、学院の年末行事の中でも特別な意味を持つ。
「魔力で空に“光”を灯し、来年の導きを祈るのよ」
リュナが小さく微笑む。
カイは自分の手を見つめた。
これまで、密度魔力で何かを“光らせた”ことは一度もない。
Dクラスの仲間たちも次々と魔法を放ち、空には星のような輝きが増えていく。
だが、カイが放った魔力は——光にならず、空気をゆがめただけだった。
「やっぱり……俺には、向いてないのかもな」
周囲がざわつき始める中、リュナがそっと言った。
「……光にしなくてもいいじゃない。あなたの魔力は、“澄ませる”ことができるわ」
彼女の言葉に導かれ、カイはもう一度手を掲げた。
今度は、ゆっくりと、静かに密度魔力を広げていく。
周囲の音が吸い込まれ、風が止まり——
空に浮かぶ魔灯たちが、ひときわ鮮やかに輝き始めた。
それは、空間が澄んだことで光が揺らぎなく通る現象。
カイの魔力が“何かを輝かせる力”ではなく、“他者の光を引き立てる力”であることを皆が初めて理解した瞬間だった。
祭が終わった後の中庭。
まだ数人の生徒が残る中、リュナとカイは並んで腰かけていた。
「ありがとう、リュナ」
「……カイの光も、ちゃんと見えてたよ」
静かな夜。
遠くで魔灯の一つがふわりと揺れた。
そして——
リュナの手が、そっとカイの手に触れた。
「このまま……少し歩かない?」
彼女がそっと言った。
カイは少しうつむきながら、それでも優しく頷いた。




