第14章 間を読む者
朝の光が、部屋のカーテン越しに差し込んでいた。
リュナは、いつもより少し早く目を覚ました。
昨夜の会話が、まだ胸の中に残っていたからかもしれない。
隣のベッドには、静かな寝息を立てる少女の姿があった。
金色の髪がふわりと枕に広がり、寝顔は思いのほか無防備だった。
(……人間、みたい)
そんな感想がふと頭をよぎったことに、自分で驚く。
魔族かもしれない。敵かもしれない。そういう不安は、もちろんある。
けれど今ここにいる彼女は、昨夜、自分に「おやすみ」と告げたセラだった。
リュナはそっと立ち上がり、窓を開ける。
朝の冷たい風が流れ込み、部屋の魔力がわずかに澄んだ。
「おはよ、リュナ。……起きてたんだ?」
背後から響いた声に振り向くと、セラがベッドで上体を起こしていた。
目ははっきりと覚醒し、寝起きとは思えない気配をまとっている。
「うん。朝は静かな方が好きだから」
「へぇ、じゃああたしの寝相とか……迷惑だった?」
「聞こえなかった。むしろ、よく眠れてたみたいね」
セラはくすっと笑った。
その笑い方が、やけに自然で、リュナは少しだけ気が抜けた気がした。
昼休み。
Dクラスの中庭には、数人の生徒が集まっていた。
カイは日陰のベンチで、静かにノートを見つめていた。
密度魔力の発現以降、自分の魔力の性質を見直す時間を日課にしている。
ふと、誰かの気配が近づいた。
軽い足音。だが、魔力の流れが……妙に“整って”いる。
「やあ、カイくん」
顔を上げると、そこにはセラがいた。
「一人? ちょっと座っていい?」
「……どうぞ」
セラは隣に腰を下ろすと、空を見上げた。
「ここの空、綺麗だよね。魔力がよく通ってる感じがする。特に……この場所」
「“この場所”?」
カイが問い返した瞬間——
わずかに空間が、揺れた。
いや、正確には“密度が変化した”ように感じた。
「……いま、何か……?」
セラがこちらを見た。
笑っている。けれど、その目の奥は静かだ。
「聞こえた? “間”の振動。たぶん、あなたと私だけに通じる音」
カイは、言葉を失った。
誰もいない空間で、確かに“反応”があった。
それは、誰にも見えず、測定もできない。
でも、確かに存在した。
密度魔力が——共鳴した。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この章では、セラとリュナの同室でのやりとりから始まり、
朝の静けさの中に生まれた“距離の近づき”を描いてみました。
セラは明るく振る舞いながらも、どこか一線を引いたような存在です。
リュナのまっすぐな眼差しに対し、セラは“間”を読む——
そんな対比を軸に、彼女たちの間に揺れる空気を感じていただけたなら嬉しいです。
そして、カイとセラの初めての“共鳴”の瞬間。
密度魔力が他者と響き合ったのは、今回が初めてです。
次章では、セラの正体に迫る“兆し”が現れ始め、
Dクラスの中にも微かなひびが入っていきます。
どうぞ引き続きお楽しみに!




