第12章 隠された通知
学院の朝は、どこか静かだった。
大講堂の掲示板には新たな通達が張り出されていたが、誰も口には出さなかった。
その張り紙は、こう書かれていた。
【魔力異常発現個体の特別観察体制に関する通達】
当該対象に関する情報開示は制限され、関係者以外の発言は禁止する。
本件は“伝承級魔力の誤検出”と判断されている。
「……つまり、“密度魔力は存在しない”ってことか」
ジークが苛立ち混じりに言い捨てる。
「言葉を濁してるけど、要はそういうことね」
ミリナが端末を閉じ、椅子にもたれた。
カイは黙っていた。
あの覚醒の夜から数日。
リュナの手の温もりも、あの光の粒も、まだ心に残っている。
それでも、学院はあっさりと全てを“なかったこと”にした。
「でもさ、それで終わるわけないよね」
アストがぽつりとつぶやく。
「通達の裏に、誰かの意図がある」
それは全員が感じていた。
──学院が何かを隠している。
そして、その答えの一端はすでに水面下で動き始めていた。
その日の午後。
教官エリオットが控室で誰かと話していた。
「……Dクラスに新しい編入生を?」
「はい。軍からの“観測枠”……という建前です。ですが、実質的には——」
相手は資料を差し出す。
一枚の書類に貼られた、生徒証明の顔写真。
そこには、金髪の少女が写っていた。
「……セラ・ルィメ。Aクラス出身……?」
「魔力適性は“重音波”。ただし裏コード付き。“特例監視対象”です」
エリオットの目が細くなる。
「Dクラスに入れる理由は?」
「“密度魔力の観察任務”。——最も自然に、それを“近くで見る”ために」
カイは知らなかった。
そのときすでに、学院の空気が静かに、そして確実に変わり始めていたことを。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第12章では、カイの“密度魔力”が公式には「存在しないもの」とされる、
学院側の静かな“封印”が描かれました。
この物語の世界では、「力が証明されない限り存在とはみなされない」
——そんな構造が強くあります。
一方で、裏では確実に物事が動き始めています。
新キャラ・セラの存在は、
カイにとって“同じ空気を持つ者”なのか、
それともまた新たな“試練”なのか——
次章、第13章では、Dクラスに波紋を広げるセラ・ルィメの登場を描きます。
ぜひお楽しみに!




