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ボクの周りの女の子は何かと問題がある……  作者: はなだ とめX
第1章 彼女は数多の愛が欲しかった
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8  こっちがオリジナルだ

 入部届さえ出してしまえば、そのまま帰宅しても構わないとのことだったので、机の荷物を鞄に詰め込んでいると、花子が今朝と同じようにボクの机のとなりに立った。


 「悠斗君……」


 「どうかした?」


 「紗枝とは別れるのかしら?」


 モジモジと下を向きながら少し言い難そうに花子が訊ねる。やはり先程の騒動には気が付いていたようだ。


 「うん。まあ、ボクはそのつもりだけどね……」


 「……ぁん!?」


 お隣さんだった花子だが、紗枝や康生のように爺ちゃんの家に住むようになって、すぐに友達になったというわけではなかった。彼女とは、あるひょんなことで出会い、友達になった。


 小学校5年生の春、学校から帰宅してからのことだ。今となっては、なぜあの時花子に気が付いたのかは憶えていないが、泥濘(ぬかる)んだ川の中で立往生している花子を発見したのである。


 その時はまだ誰とは知らず、泥塗れになった彼女をおぶって送り届けると、なんと、びっくり! お隣さんだったというわけである。


 当然、彼女も驚いていた。


 お隣りのお屋敷とも呼べる豪邸に同世代の女の子がいることは知っていた。ご近所界隈の子供たちにも有名だったからだ。ただ誰も姿を見たことがなく――吸血鬼一家が棲んでいる――などとの噂も流れていた。


 それからは気が合ったのもあり、花子はちょくちょくウチを訪れるようになった。そこには当然、紗枝や康生もいたわけで、異性であるボクや康生よりも、どちらかと言えば同性である紗枝と仲が良かった。また紗枝も、お嬢様だった花子に憧れを抱き、話し方や仕草、髪型から服の趣味に至るまで真似ばかりしていた。


 当時の彼女の名前は西園寺花子さいおんじはなこ。やや西洋っぽさのあるハーフのような顔つきと栗色クルクル巻髪ヘアー、そしてヒラヒラした服装は、ザ・お嬢様という感じだった。


 だから一見地味にすら見える今の花子を見て、紗枝が気づかないのは判る。ボクも、自己紹介されるまで、まったく西園寺花子だとは気がつかなかった。


 ボクは、花子が同じクラスにいることを紗枝に話さなかった。他意はない。そのうち花子の方から紗枝に話し掛けるだろうぐらいに思っていたからである。その時、紗枝の驚いた顔を見るのも面白いぐらいに考えていた。


 「この後、少しお時間を頂けるかしら?」


 ところが、花子が紗枝に声を掛けることはなかった。それこそ紗枝は昼休みになると毎日のようにこのクラスに来ていた。それなのに紗枝が姿を見せると逆に教室を出て行った。或いは先程のように背を向けて一切こちらを向かないか……である。


 当初、ボクは困惑した。いや今もしている。


 その理由は窺い知れないが、おそらく花子は紗枝を避けている。


 「ん? 時間? 何かあったの?」


 今、花子が掛けている黒縁メガネはおそらく伊達だ。また黒髪オカッパもカツラではないかと思う。


 二人の間で何があったかは知らないが、そこまでして自身の正体を隠しているのなら、ボクがとやかく言うことではない。そもそも女子の間に割って入ろうなどいう無謀なことをするすつもりはなかった。


 「もし宜しければ、この後少しお茶など如何かと……」


 紗枝に花子のことを話さなかったボク、グッジョブ! である。


 「今から園田と部活動見学に行くんだよ。花子はもうどこかの部活に所属しているの?」


 と言ってしまってから、自分の迂闊さに気がついた。考え事をしながら会話していたのもあって、つい誘うような言い方になってしまった。


 前の席の園田を見ると、紗枝が去って、西田が去って、漸く席に戻れたというのに、今度は花子が寄って来てしまい、また硬直してしまっていた。


 「あー、そうですわね。今日まででしたわね。私もまだなんですのよ。もし宜しければ、私もご一緒させて頂けませんか?」


 園田の丸い背中がビクリと震えた。


 まあ、そうなってしまうよな……。完全にボクのミスだ。園田が、冗談ではなく本気で女性を苦手にしていることは理解していた。何らかの酷いトラウマを抱えていることすら考えられた。


 「ごめん。男同士で巡る予定なんだ。女の子には聞かせられない話をするかもしれないからさ」


 ボクのハッキリとした拒絶に、園田の背中からホッとした空気が伝わる。花子には悪いが、ここは遠慮して貰うしかない。


 「……ぁん!? あら、まあ。判りましたわ」


 フフフと、紗枝と似た感じで笑う花子。いやこっちがオリジナルだ。


 それから花子に別れを告げて、園田と二人で廊下に出た。


 遠くから吹奏楽部がチューニングしているような音や、合唱部が歌っている声が聞こえて来た。講堂の方でミニライブがあるそうだ。また体育館や武道場、そしてグラウンドでは各運動部が実技を披露したりするらしい。


 ただ、ボクたちはボランティア部を回避する為に部活に入ろうとしているわけで、この辺りのガチ勢が集う部活には用はなかった。


 「いやはや、先程は、助かったでござるよ」


 「いやいや、こちらこそ、ごめんね」

 

 取り敢えず、ボクたちは文芸部と写真部があるという旧校舎の方へ足を向けた。


 途中、グランドの横を通り過ぎる時、学校指定のジャージを着た紗枝が他の女子たちと並んで、サッカー部が新入部員向けにデモンストレーションしているのを楽しそうに見学していた。泣きながら教室を飛び出していったので少し心配したが、杞憂だったようだ。


 「高梨氏は、ラグビーとはなかなか珍しいことをされておったようだが、切っ掛けは何だったんでござるか?」


 「ん~、小学校の頃、母が地元のサッカー教室にボクを入れようとしたことがあったんだ。それに祖父が猛反対してね。その代わりにラグビーをすることになったんだよ」


 「なにゆえ、祖父殿は反対されたのですかな?」


 「テレビでサッカー観てたらさ、PKを貰おうとワザとコケたり、ファールじゃないのに大袈裟に転げ回って痛がったりするだろ。いわゆるシミュレーションってヤツね。あれが教育に良くないんだって。まあラグビーは幼馴染に誘われたからってのが大きいんだけどね」


 「なるほど、言われてみれば確かに」

 

 サッカー好きを敵に回しそうな話である。

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