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ボクの周りの女の子は何かと問題がある……  作者: はなだ とめX
第3章 彼女は自分が何者かを知りたかった
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22 ごめんね

 そこから姉ちゃんの――陰毛を見せろ――が始まった。まだ小さい頃はお風呂も一緒に入っていたが、毛が生え始める少し前ぐらいから別々に入るようになっていた。だから姉ちゃんは、ボクのさらさらストレートアンダーヘアを見たことがない。


 「嫌だよ。絶対に見せない」


 薫子さんはそのドタバタに顔を赤くしていた。これについては夏穂も恥ずかしいようで口を挟んで来ない。


 「……だったらユーゴでも良いわ」


 「オレも嫌だ」


 「あなた達、私の弟でしょ? どうしてお姉ちゃんの言うことが聞けないの? ちょっとだけよ。一瞬でいいわ。どんなのか気になるじゃない。このままじゃ、勉強が手につかなくなるわ。姉ちゃんが大学に落ちても良いの?」


 言ってることが無茶苦茶だ。


 「姉ちゃんが――陰毛見せろ――って煩い。って母さんに電話するよ」


 「……うぐっ」


 この家で一番強いのは母さんだ。普段穏やかな母さんも怒らせると怖い。


 「もういいじゃん、そんなこと。それより魔素が見つかったんだから、早く異世界へ帰ろうよ」


 然も面倒臭そうに夏穂が話題を変える。


 「いや……それが……、思ったようにシュバルツが集まらんのだ」


 まあ、寒くなったから仕方ないね。




 以前、ユーゴが言っていた――異世界で魔力を持たない謎生物シュバルツ――。その正体が判明したのは、ある日の朝練から帰り道のことだった。


 ボクとユーゴと姉ちゃんで並んで歩いていると、国道に架かる橋のところで目の前をガサガサガサっとソレが通った。すでに気温が低かったのもあり、その動きはすでに緩慢で精彩を欠いていた。


 異世界でも忌み嫌われているのか、ユーゴは容赦なかった。ソレに向って魔法、いや魔力の塊りをぶつけた。


 家の中に居たわけでもないのだから……別に殺さなくてもとは思ったが、その後のユーゴの行動に目を見張った。


 「うぇ、ユーゴ、汚いよ。それポイしなさい!」


 なんとユーゴは、動かなくなったソレを拾うとポケットに仕舞い込んだのである。


 「シュバルツノ魔石ダガ? ……ダメ……ナノカ?」


 ユーゴが首を傾げてポケットからソレを出すと、手のひらに乗せた。


 見るとやや濁った半透明のガーネットのような石になっていた。ただ形はソレそのままだった。


 「えっ? 玩具だったの?」


 「本物ノダゾ。シュバルツニ直接魔力ヲ当テルト魔石ニナルノダ。ソレヲ発見シタノハ、オレダ」


 ちょっと誇らしげに語るユーゴ。異世界ではシュバルツなどとかっちょいい名前で呼ばれているユーゴが言った謎生物はゴキブリだったのである。


 「えっと、虫に魔力を込めると魔石になるの?」


 「違ウ。魔石ニナルノハ――シュバルツ――ダケダ。理由ハ判ラナイ。コッチノ世界デ魔石ヲ手ニ入レルナラ、今ノトコロコレカシカナイ。現在100個程集マッテイル。最終的ニハ10000ハ欲シイトコロダ」


 ~~というような事があったのだ。


 だとしても……一万匹のゴキブリって……ちょっと悍ましい。

 

 「本当は白くて硬い葉っぱのような魔石が手に入れば良かったんだがな。色んな場所を探し回ったが、どこにもなかった。だから今はシュバルツに頼るしかない」


 ユーゴは、ゴキブリ以外で魔石の素材となる物を以前一度見たことがあったらしい。ただ、それが何であるのか、またどこにあるのか、見当もつかないそうだ。


 「もしかしてだけど……、白くて硬い葉っぱって、コレのことかな?」


 夏穂がリュックの中を探って取り出したのは、砂浜などによく落ちているイカの甲だった。イカの舟とも呼ばれている。


 「そ、そうだ。それだ! どこで手に入れた⁉」


 ユーゴは大声を出して立ち上がった。


 「手に入れたって言うか、アタシが作ったんだよ」


 夏穂は誇らし気に胸を張る。


 夏穂は前世の自分が魔石の研究者であることを夢で知ったのだそうだ。そして夢の中で、ユーゴも通っていたというミドドルーエ王国の王都にある王立アカデミーの授業をつぶさに再体験し、そこで学んだことを試してみたくなったのだと言う。そこから日常的に魔石を探すようになり、ある時夏穂の父親――宮田先生が術後に持っていた胆石から魔力反応を感じたとのことだった。その後いろいろ調べた結果、魔石の成分がコレステロールに近いことが判明したとのことである。そして様々な実験を繰り返すうちに、偶然イカの甲に辿り着いたとのことだった。


 「そうだったのか……さすが前世が魔石研究者だけはあるな。凄いな」


 ユーゴに褒められ、普段の夏穂なら鼻高々にドヤ顔するはずだが、訝し気に首を傾げた。


 「でも、ユーゴはこのイカの甲魔石をどこで見たの? コレ、アタシしか持ってないはずなんだけど?」


 「誠子だ」


 誠子とは、今、異世界へ召喚されてしまっているという北頭誠子元教諭のことだ。アノ母親のアパートに住んでいた頃、世話になったとユーゴは言っていた。「誠子ガ作ルカレーハ美味カッタ」とも付け加えた。


 「ふ~ん。アタシが学校に仕掛けた魔石をどっかで拾ったのかな? それとも生徒から没収でもしたのかな?」


 夏穂は実験として、イカの甲魔石に――魔法や魔力が使えなくなる魔法陣――を施し、北頭学院のあらゆる場所に仕掛けたのだそうだ。


 「あの魔石に『いたずら防止の魔法陣』を刻印したのはミーリアだったのか?」


 「うん。そうだよ。だけど一年も維持できなかったんだけどね」


 「なるほどな……。誠子は僅かだが魔力を持っていた。無意識だっただろうが、説得力を持たせる為に言葉に魔力を乗せていた。――なぜか、何もかもが上手くいかなくなった――と嘆いていたが、おそらくソレが原因だったんだろうな……」


 実は、ユーゴがボクに成り代わって北頭学院へ潜り込んだのも、それを調べるのが目的だったらしい。異世界からの介入を疑っていたそうだ。ボクが毎日通っている場所であり、安全確認がしたかったとのことである。


 「無意識の魔法って、怖いよね。ユウトの――魅了の微笑み――だって無意識だったんでしょ? アレでみ~んなユウトを好きになっちゃうんだから、怖いよ」


  夏穂がボソリと溢す。


 ボクもそう思う。今はユーゴのお陰で制御出来るようになったが、以前のボクは無意識に女性の恋心を弄んでいた。


 「今日、バカ紗枝も呼んであげたら良かったのに」


 「ちょっと夏穂、あんたね!」


 姉ちゃんが怒鳴る。


 「だって、バカ紗枝だって被害者じゃん。もしユウトに魅了されてなかったら、バカ紗枝は、ふつうにゴリラと付き合ってたと思うよ?」


 ゴリラとは康生のことだ。……確かに夏穂の言う通りかもしれない。紗枝は康生が好きだった。ボクもそのことを知っていた。それなのに紗枝はボクと恋人になった。


 「だって、本当のことじゃん」


 康生と紗枝の二人からすれば、ボクは後から来た余所者だった。そんなボクを二人は受け入れてくれた。それがボクは嬉しかった。何より大切な存在になった。離れがたく、三人の幼馴染という関係を壊したくなかった。


 だから――


 紗枝がボクを好きだと言うのなら……。


 康生がそれを望むのなら……。


 ボクはそれを受け入れよう……そう思った。


 「バカ女は自分でバカなことをして、悠斗を裏切っただけじゃない。悠斗の魔法どうこうは関係ないわ。バカ女の自業自得よ」


 だけど、その原因がボクの魔法だったらな、紗枝を無意識に魅了していたのなら、その大切な幼馴染を引き裂いたのはボクだ。


 もし紗枝がボクでなく康生と恋人になっていたら、紗枝は二股なんてしなかったかもしれない。遠山に妊娠させられることも、堕胎して身体を傷つけることもなかったかもしれない。


 昨日の夕方。ユーゴは川原で紗枝と遭遇したようだった。話を聞いてみると、紗枝はボクに復縁を求めていたらしい。


 「正気デハナカッタ」ユーゴは言った。だけどそんな紗枝を狂わせたのはボクだ。ボクが無意識で放った魔法だ。だったら紗枝は、夏穂が言う通り被害者じゃないか。


 このクリスマス会は今年だけ特別にしているわけではない。小学生の頃から毎年していたことだ。しなかったのは、受験でそれどころではなかった去年だけである。その時のメンバーはボクと姉ちゃんと康生そして紗枝。花子がいた時もあった。


  ――フンッ。そりゃ魔力だね。この世界じゃ使いモンになんないから、放っときな――


 幼い頃に聞いたアノ母親の言葉が、その時はまさか本当のことだとは思わなかった。酔っ払いの戯言だと捨て置いた。


 もしその時そのことをちゃんと自覚していれば、今、もっと違った結果になっていたのかな……。


   ごめんね…………どうしたんだろ?…………………………何だか、眠い。

本日の投稿で3章本編が終了しました


 夏場は業務の関係上忙しく、それに合わせて父の入院という家庭の事情も加わり、このまま連載を続けることが困難になりました。つきましては、しばしお時間を頂ければと考えています。続きは秋を予定しています。


 今後ですが、(夏穂視点の)三章エピローグが15~20話。北頭誠子の閑話3話。を挟んで四章が最終章となります。


応援して下さる皆様いつも感謝しております。


本当にありがとうございますm(__)m


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