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ボクの周りの女の子は何かと問題がある……  作者: はなだ とめX
第3章 彼女は自分が何者かを知りたかった
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18 隣街でお買い物

 2学期の終業式を終え、ボクはそのまま電車に乗って隣街まで来ていた。


 地域の都心部であり、さらに今日がクリスマス・イブということもあって、街行く人の多さにゲンナリする。


 そもそもボクは人混みが苦手で都会である隣町へ行くことは滅多になかったが、ユーゴに頼まれごとをされて、その買物に来ていたのだ。


 苦手な理由は――


 「ねぇ、ねぇ どこかで会ったことなかった?」


 これだ……。


 ボクが人の多い場所に行くと、必ず見知らぬ女性から声を掛けられる。一人二人ならまだ許容できるが、これが何度も繰り返されると、さすがにウンザリもする。


 「申し訳ないでござるが、今、時間がないでござる」


 ただ今回、ボクには強い味方がいた。この隣街に自宅がある忍者アグマルこと園田が、買い物に付き添ってくれているのだ。


 「アンタに言ってないんだけど?」


 夏穂に異世界転生部に誘われた日を境に――女子と話すのはゲームの中だけと決め ておる故に――という謎の設定も有耶無耶になった。またユーゴが身代わり登校した時、告白してくる女子を上手く捌いたことを姉ちゃんから高く評価され、ゲーム内での地位が上がったとのことである。


 「はいはい、では、名前と住所を言ってみるでござる。彼と知り合いかどうかは、それで判断するでござる故に」


 今では学校でもこうやって、ボクのボディーガード差乍らに間に入ってくれるようになった。ボクに告白する女子は一旦園田を通さなければならないという噂まであるのだから、何だか凄い。


 「な、なによ。もういいわ!」

 

 こうやって、見ず知らずの女の子を撃退していくのだ。これで駅から三組目である。


 「ごめんね。いつもお世話になってばかりで申し訳なく思うよ。でも、ありがとう」


 近頃のボクは園田に依存しまくっている。園田なしでは穏便な生活は送れない気さえしてしまっている。


 「何を言うでござる。拙者と高梨氏はクラスも部活も一緒、友達、いや、もはや親友ではござらんか」


 「そうだね。ありがとう」


 確かに今ボクが友達と呼べるのは園田ぐらいしかいない。別に他の生徒と仲が悪いわけではなく、北頭学院では生徒一人一人に何となく距離があるのだ。


 席順によって、成績があからさまというのもあるのだろうが、皆が自然にライバル関係になってしまっている。


 特進クラスであるボクが所属する8組は、特にそれが顕著で、クラスの大半がボッチである。一学期の最初からずっとボクの隣に座っている学年2位の女子生徒とは、話したことがないどころか、目も合わせて貰えない。当然、彼女もボッチである。

 

 昼食時などは、ボクと園田のように特定の人と2、3人で食べている人もいるが、大抵の生徒が、机に向って一人でモクモク食べている。ワイワイガヤガヤ皆で仲良くお弁当を食べるなんて光景はない。もちろん北頭学院にも、西田モモのように友達を作って多人数でツルむ人もいるが、それはごく限られた人たちである。


 そんな生徒たちを見た北頭誠子教諭が、北頭学院の行く末を危惧したのも、何となく理解できる気がした。


 ただ唯一の友達である園田とも、来年の4月になれば、残念ながら別クラスになることが決定している。本当は、離れたくないのだけれど……2年生からは理系と文系でクラスが別れる。園田は文系とのことだ。


 ボクの場合、将来を考えると理系一択だった。口下手で人の感情が判らないボクが、姉ちゃんのように弁護士などとは到底考えられなかった。


 一応、隣県にある国立の工業系学部を目指している。ラグビー部も盛んな大学だ。博多から帰ってから考えるようになったボクの将来プランである。


 ただ……。


 ボクは兄悠五呏と出会ってしまった。そして異世界人であるという事実を知った。


 異世界に帰りたいかと訊ねられたら、帰りたくない。爺ちゃんや母さんとこれまで通り暮し続けたいという気持ちは変わらない。だけど、それで良いのかという迷いもある。ユーゴが異世界へ帰ってしまえば、おそらくもう二度と会えない。そう考えると胸がズンと重くなる。半身が裂かれるようなそんな気持ちになるのだ。


 「で、どの様な品をお探しでござるか?」


 ユーゴからの注文は女性用の金のチェーンネックスレス2本。男性用は金とプラチナ、それぞれ一本ずつとのことだ。


 ユーゴからは10万円預かって来ていた。母さんに頼んで、金貨を数枚換金して貰ったようである。


 「ふむ、ではこっちでござるな」


 さすが地元民である園田は巨大ビル群の中のどこに何があるか把握しているようだった。ボクだけだったら、迷子にならずとも途方に暮れていた。


 園田が向かった先は大きなデパートの1階と思いきや、3階だった。1階は化粧品と安価なアクセサリーがあり、高価な物は3階にあるのだそうだ。


 3階にはあまり人けがなく、ショーケースの中を眺めていると、桁が違っていた。一本、ウン十万もするブランド品が陳列されていた。


 ユーゴから預かったのは10万円。一本2万5千円以下でないと困る。……と思っていたところに女性店員がスマイリーに寄って来た。


 「どの様な品をお探しですか?」


 「一本2万円ぐらいのチェーンネックレスが欲しいのですが」


 一階へ行けと言われると思っていたが、すぐ隣の列にあるショーケースに案内された。そこには一万円から五万円のものが並んでいて、ホッとする。


 そこで45㎝の品を2本と55㎝の品を2本、ユーゴの注文通りに買うことが出来た。ただ少し驚いたのは希少なプラチナよりも、今は金の方が高額ということである。知らなかった。


 「今日は付き合ってくれて、ありがとう。また明日ね」


 「明日でござる」


 園田とは駅で御礼を言って別れた。明日はユーゴを学校で面倒を見て貰った御礼も兼て、我家でささやかなクリスマス会をする予定になっていた。


 地元の駅に帰り着いた頃には辺りはすでに薄暗くなっていた。クリスマス・イブということもあって、商店街の街路樹にもイルミネーションが飾られていた。ボクとしては、賑やかしい隣街より、この商店街ぐらいが丁度良い。


 帰りに洋菓子店に立ち寄った。注文したケーキを取って来るよう母さんから頼まれていたからである。夕方時ということもあり、店内はかなり混雑していたが、ボクを見つけた馴染みの店員さんが、外までケーキを持って来てくれた。


 「悠斗君、メリークリスマス」


 「……あっ、はい。お疲れ様です」


 ここでメリークリスマスって返せる人って凄いと思う。恥ずかしくて、ボクには言えない。


 そして毎年お馴染みの風船を貰った。子供の頃はクリスマスにヘリウム入りのこの風船を貰うのが楽しみだった。が、さすがに16歳ともなるとプカプカ風船を浮かべて歩くのは少し恥ずかしい。


 「あれ? ユーゴは?」


 ケーキと風船を持って自宅に到着すると、ユーゴは部屋にいなかった。


 「川原に行くって言ってたわよ。すぐ戻るって言ってたけど」


 何をしに行ったのだろう? とは思ったが、心配するほどのことでもない。近頃のユーゴは一人で電車にも乗るし、図書館にも勝手に出掛ける。


 この家でずっと一緒に暮せれば良いのにと思ってしまうのは、ボクの我儘だろうか……。


 「タダイマ、悠斗、頼ンダ物ハ準備デキタカ?」


 部屋で待っていると、ユーゴは間も無く帰って来た。


 「バッチリだよ。そっちは?」


 「アァ、コッチモ上手ク出来タ」


 ボクは金のチェーンネックレスを包装紙のままそユーゴに渡した。


 中を確認したユーゴは「上出来ダ アリガトウ」と満足気に微笑んだ。


 ユーゴは12月に入ってからずっと家族へ送る為のクリスマスレプゼントの制作をしていた。


 貴族服から、エメラルド、ルビー、サファイア、そして服全体に散りばめられた小さなダイヤモンドを剥ぎ取って、それらを使ったペンダントトップを作っていたのである。


 だたその宝石を嵌め込む為の台座を作るのに悪戦苦闘していた。持っていた金貨を土魔法で形成しようとしていたからである。


 「魔力ガ足リナイ」


 学校から帰ると、毎日、部屋中に空のペットボトルが散乱していた。お腹がたっぷんたっぷんになるまでプルメリアの水を飲みながら苦しそうに作業をしていた。


 そして、それが今日、漸く完成したとのことである。


 「見せて、見せて」


 ボクはまだその完成品を見せてもらっていない。


 ユーゴがニヤリと笑って完成品をデスクの上に置いた。


 「これは凄いね。ジャージのポケットから出て来るものとは思えない豪華さだね」


 ボクは感嘆の声をあげた。


 そこにはエメラルド、ルビー、サファイアの三つの豪華絢爛なペンダントトップがあった。またそれぞれその宝石を囲むようにダイアモンドが埋め込まれている。


 その宝石たちが乗るその金の台座は、ユーゴが少ない魔力を振り絞って土魔法で造った物である。


 とてもハンドメイドとは思えない出来栄えだった。

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