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ボクの周りの女の子は何かと問題がある……  作者: はなだ とめX
第1章 彼女は数多の愛が欲しかった
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6 金曜日の放課後

 授業は午前中で終わり、放課後になった。とは言え部活動入部手続きの最終日ということもあって、部活に所属していない生徒は教室に残っていた。


 また本日は、午後から各部活動による勧誘会やデモンストレーションが行われるとのことで、放課後にも拘らず、ほぼ全校生徒が校内にいるという賑やかしい状況だった。


 「昼食をご一緒させて頂いても宜しいですかな?」


 前の席に座っている園田が振り返って声を掛けて来た。入学以来ずっと昼食を共にしていたが、こうやって毎回律儀に訊ねてくる。少しぽっちゃりした体型で、食事中に彼がするアニメやゲームの話はよく判らないが、時代劇風の話し方をする面白いヤツである。


 「もちろん」


 ボクが頷くと、園田は椅子をひっくり返し、鞄の中からコンビニの袋を取り出した。中に入っていたのは菓子パンとコーラだった。


 「ところで高梨氏、部活動は決めましたかな?」


 「ん~、どうしようかと悩んでるよ」


 ボクは、母さんが作ってくれた弁当を広げながら答える。未だ現役時代さながらにボリューミーな弁当を持たせてくれるが、おそらくボクの成長はもう止まっていて、すでにこの量は必要なくなっていた。


 「ふむ、中学で部活は何をされておられたのだ?」


 「いや、学校の部活はしてないな」


 「なんと! 高梨氏は陽キャに属される御仁と思っておったが、まさか我らが同胞でござったか!」


 「クラブチームでラグビーをしてたからね。ラグビー部があったら迷わず入ったんだろうけど、こればっかりは仕方がないかな」


 進路を決める際、高校ラグビーで花園をめざしたいと考えないわけではなかった。康生のように幾つかのラグビー推薦の話もあった。だが正直なところラグビーを続けるのに限界を感じていた。


 それと言うのも、中学3年生ラグビー現役の頃は、身長は175センチ。プロテインと母が作る食事のお陰もあって体重は80キロを超えていた。ところが、それまでが無理矢理体重を維持していたというのもあっただろうが、引退した秋頃から見る見るうちに痩せ始めた。今現在、身長は8センチ伸びて183センチになっていたが、体重は65キロまで落ちてしまっていた。


 受験の間も、すでに決まっていたラグビー日本代表U16の為に、何とか体重を維持しようと無理して食べていたが、それでも体重の減少が止まることはなかった。


 見兼ねた母さんに病院へも連れて行かれた。が、検査しても何の異常も見当たらなかった。――体質ではないか――とのことである。実際、体調に問題はなく、頗る健康である。


 そしてこの夏(向うは冬だったが)、痩せ細った身体のまま、夏休みを含めた二ヶ月間をオーストラリアで過ごすことになった。


 実感として、日本屈指の強豪ラグビー部に所属するチームメイトたちと共にプレーするのはギリギリだった。


 もしボクに――胸の中にある熱い力――が無ければ、途中リタイヤして帰国していたかもしれない。最後までやりきれたのはこの力があったお陰とも言えた。


 ――胸の中にある熱い力――を明確に自覚したのは、小学生の頃に数人の同級生から襲われた時のことだ。それ以前、アノ母親と暮らしていた頃も何となく気がついていた。痛いわけでも不快なわけでもないが、胸の奥の方で、ときどき温度が上がるような違和感があったからだ。


 それについて、アノ母親に一度だけ訊いたこともあった。


 「そりゃ魔力だね。ここじゃ使いモンになんないから、放っときな」


 酔っ払いに訊ねたボクがバカだったと後悔した。


 だけど棒を振り回して襲い掛かって来る同級生と対峙した時、爺ちゃんと暮らし始めてからずっと静まっていた胸の奥にある塊のようなものが突如として熱くなった。


 そして体が急に軽くなったかと思うと、自分が想像した以上に動けていることに気が付いた。それはまるで体に風を纏っているような感覚だった。


 とは言え、無限に使えるわけではなく、ラグビーの試合中に数回使えれば良い方である。また使ってしまうと、しばらく使えなくなる。


 強く願えば偶に発揮される火事場の馬鹿力のようなものだと、ボクは理解している。


 ボクが地元に残った最大の理由は、――ずっと一緒にいたい――という紗枝の要望に応えたというのもあったが、家族を失うことへの恐怖だった。


 例えボクが康生のように関西の高校へ進学したとしても、爺ちゃんがボクを忘れたりすることはないと分かっている。またどこにいようとも、母さんはボクを息子と呼んでくれるだろう。どんな時も、姉ちゃんはボクを助けてくれると信じている。


 だけど……離れてしまうのはやはり怖いのだ。


 せっかく出逢えた爺ちゃんや今の母さん、そして姉ちゃんという家族と別々に暮らすなんて、ボクには到底考えられるものではなかった。


 「あー、そう言えば、そうでござったな」


 園田は、ボクがラグビーで休みがちだったことを、思い出したようだ。


 「園田は? アニメ研究会じゃないの?」


 「いや一度見学に馳せ参じたでござるが、躊躇せざるを得ない状況でござってな……。アニ研や漫研と言えば、陰による陰の為の部活動と思うておったが、陽が蔓延る眩い場所でござった。派手なギャルや爽やかイケメンが、当たり前のように深夜アニメや声優の話をしておる恐ろしい光景を目にしてしまったでござるよ! クラスカーストど底辺の拙者が入部しても、肩身の狭い思いをするだけでござろうな」


 園田は、さも嘆かわしいと言わんばかりに腕を組んで首をフリフリしていたが、ラグビーばかりしていたボクにはよく判らなかった。


 ラグビーの場合、体が大きく力が強かったり、小さな体でも機敏に動けたり、足が速かったり、頭を使って全体を纏めたり、色んな個性が集まって一つのチームは成り立っている。


 だからアニメ研究会にもいろんな人がいて良いように思うのだけれど……。


 そもそも、陰キャとか陽キャとか、クラスカーストなんてものが、実際にあるのだろうか? ボクは何となくフィクションの世界の話だと思っていた。


 「なら、どうするの? 今日、入部届を提出しなかったら、自動的にボランティア部になるんだよね? まあ、ボクはそれでも構わないけどさ」


 「いやいや高梨氏、しばし待たれよ!」


 ささみ肉とブロッコリーを纏めて口に放り込んでいると、園田は焦ったような口調で言った。


 「ん?」


 「高梨氏、ボランティア部だけはお薦めできませんぞ! 学校イベントの雑用をさせられるぐらいならまだしも、夏休みや冬休みに招集されたりするのござるぞ!」


 「えっ、マジで……?」


 それはちょっと困る。さすが中等部から北頭学院に通っている園田は詳しい。


 冬休みは行方不明である父の捜索 、つまり爺ちゃんの手伝いをするつもりでいた。これまで育てて貰った恩に報いたい。家族の役に少しでも立ちたかった。


 「拙者、いろいろリサーチをいたしたゆえに、高梨氏さえ良ければ、共にユルい部活に入部しましょうぞ?」


 「おっ、いいね」


 北頭学院は、部活によっては高等部と中等部が一緒に活動しているのだそうだ。特に体力差や実力差があっても問題がない文化系の大半が合同なのだそうである。


 おすすめは、週二日ほどしか活動しないユルい部活とのことだが、部によっては、すでに定員オーバーになっている可能性があるとのことだ。


 「拙者、女子と話すのはゲームの中だけと決めておるゆえに、申し訳ないでござるが……」


 園田の個人的な希望として、女子部員しかいない茶道部、華道部、料理部、手芸部はナシなのだそうだ。園田は中等部時代は剣道部だったらしいが、男子部員が一人もいなくなってからはずっと幽霊部員だったそうである。


 土日にも活動はあるが、自由そうだというのが、釣り部とオモチャ部。


 「釣り部はそのまま釣りをするという部活でござるが、オモチャ部は以前、剣玉や独楽などをする部活でござったが、近頃はパソコンでゲーム制作を……」


 園田の話をフムフムと聞いていたところで、紗枝がズカズカと教室へ入って来た。そして偉そうに腰に手を当て、ボクの前に立った。

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