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ボクの周りの女の子は何かと問題がある……  作者: はなだ とめX
第3章 彼女は自分が何者かを知りたかった
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1 9月後半~10月上旬にかけての諸々


 霧島先輩改め薫子お姉ちゃんと川原で別れ、自宅へ帰ると爺ちゃんはテレビの前で棒立ちになり、ニュース番組を食い入るように観ていた。


 「ただいま。腰は大丈夫?」


 「おう悠斗か、おかえり。だいぶ楽になった。っと……今は、それどころではないのじゃ」


 一瞬だけこちらを向いた爺ちゃんだったが、またすぐに視線をテレビに移した。


 何をそんなに真剣に観ているのかとボクもテレビに注目すると、そこにはアノ母親も関係しているという『アパート住民集団失踪事件』についてのニュースが流れていた。


 「事件に何か進展があったのかな?」


 「失踪者の名前と顔写真が公開されたのじゃ」


 北頭誠子きたあたませいこさん(46)

 近藤清吉こんどうせいきちさん(31)

 土方正臣ひじかたまさおみさん(24)

 益田聖奈ますだせいなさん(37)


 テレビ画面には、以上4名の顔写真が、名前と年齢と共に繰り返しスクロールされていた。


 久し振りに見るアノ母親の顔は、当時と然程変わりなく、13年という歳月の流れを感じさせなかった。見ればもっと苦々しい気持ちになると思っていたが、割に心は凪いでいた。


 それから……


 少し気味が悪い話だが、ボクはこの行方不明者4名の内、3名の顔に見覚えがあった。


 アノ母親は言うまでもなく、近藤清吉さん(31)はボクが骨折した時にリハビリを手伝ってくれていた理学療法士だった。夏穂にぬらりひょんと言われ、玩具の剣でポコポコ叩かれていたあの人だ。


 次に土方正臣さん(24)。……彼の顔もよく憶えていた。薫子お姉ちゃんを襲ったあの犯人である。当時より少し太ったようだったが、それでも彼のその澱んだ目は忘れられない。


 「増田聖奈が隣街にいたとはな……」


 爺ちゃんは少し悔しそうに顔を歪めていた。捜していたアノ母親が目と鼻の先にいたにも拘わらず、見つけられなかったことが、よほど悔しいようだった。


 「博多にも警察が来たらしいよ……」


 そしてボクは、博多でのことを、あらまし爺ちゃんに語って聞かせた。


 「ふむふむ、なるほどな……」


 「そして、これがアノ母親の手紙だよ」


 キリシマ書店でコピーして貰ったものを爺ちゃんに渡した。


 爺ちゃんは黙って、繰り返し何度も読んでいたが、最後は思った通り首を傾げた。


 「異世界……。悠升と一緒におったことは、間違え無さそうだが……」


 爺ちゃんはそれだけ言うと、またテレビに視線を戻した。


 だた今回は警察が本格的に動いていることもあり、すぐに見つかる可能性があるとも言っていた。





 そして――


 月曜日の朝、薫子お姉ちゃんと自転車ランデブーで学校へ行くと、生徒会選挙で急展開が待っていた。ついに生徒会長・副会長候補が現れたのである。


 それが不登校中だった水島佳織さんだという。そして副会長候補は、その佳織さんへのイジメに加担していた停学で済んだ女生徒だというのだ。


 学校内はそのことで大いに盛り上がっている……なんてことはなく、その日の話題の中心は、昨晩テレビニュースで流れた『アパート住民集団失踪事件』についてだった。


 4人の失踪者の内、唯一ボクが知らなかった北頭誠子さん(46)は、昨年までこの学校で教鞭を執っていた沖田教諭なのだという。つまり彼女こそが噂の理事長の娘なのである。


 現2年生にとって北頭誠子さん(46)は怨敵のような存在らしく、その日は校内のあちこちで彼女を揶揄するような声が聞こえて来た。


 ただボクら1年生はその理事長の娘であるという沖田教諭を知らない。それよりもやっぱり生徒会長候補が出て来たという方が大きなニュースだった。


 特に、あるかどうかも判らない選挙の準備をさせられていたボランティア部にとっては、停滞した日々から解放されるというだけでスッキリした気分になれた。また今週中に他の候補者が現れない場合、無投票当選になるとのことだった。


 そしてその翌日、生徒会長候補者である佳織さんが久し振りに学校へ顔を出した。夏休みを挟んで約4か月振りの登校だという。松葉杖こそ突いていなかったが、まだ完全に傷は癒えていないようで、手足に巻かれた包帯が痛々しかった。


 「心配ばっかり掛けちゃって、ごめんなさいね」


 放課後、生徒会室を訪れた佳織さんに久し振りに会った。


 当時は顔にも怪我があったそうで、それが治るまでお店(熱帯魚店)に出るのを控えていたのだそうだ。


 それと佳織さんが言うには、自殺したわけではなかったらしい。あの時、加害者生徒がこれ見よがしに金魚を窓から放り投げたらしく、それに手を伸ばして、そのまま落下してしまったとのことだった。


 警察や学校にはきちんとそのことを話したそうだが、自殺という噂が広がってしまったとのことだった。生徒会長である姉ちゃんですら自殺だと思っていたようだ。


 この学校の情報管理って……。誤認されているなら、そこは正すべきだと思うのだけれど、黙っていれば良いみたいなところがある。


 そして副会長候補である女生徒も佳織さんと一緒に来ていた。


 「これからは償いの意味も込めて、水島さんに尽くしていきたいと思っています」


 彼女は心の底から反省しているとのことだ。ただ目が奇妙にキラキラしていた。 


 ふと姉ちゃんを見ると、スッと視線を逸らされた。


 姉ちゃんは、佳織さんと目が逝っちゃってる先輩の自宅に赴き、誠心誠意説得を試みたと言っているが……。絶対、姉ちゃんが何かしただろ。


 「十中八九、無投票で決まりだと思うわ」


 姉ちゃんの言葉にボランティア部の面々は手を叩いて歓声をあげた。


 そして他候補者が現れることなく週末なった。そこで立候補届出は締め切られ、無投票で水島佳織新生徒会長が決定した。


 その翌週には講堂で生徒総会が開かれた。


 壇上に立った 佳織さんは新生徒会長として堂々たる挨拶をした。


 その内容は私事と前於いてから、イジメの事や、自殺ではなく事故であったことなどの説明から始まり、北頭学院の教育スタイルである『自由と自己責任』と佳織さんらが1年生の頃にやってきた『管理と保護教育』についての私見を述べていた。


 また今の2年生だから強く思うのかもしれないが、自由であることの喜びを訴えていた。そして、それに伴う責任についても厳しく問うかたちで演説は締めくくられた。


 もしこれが立候補者演説会で語られていたなら、贔屓目なしで、ボクは佳織さんに投票しただろう。



 それから話は少し前後してしまうが、10月になってから、紗枝が学校へ来るようになっていた。


 ボクの方から接触するつもりはないが、校内で見掛た時は少しホッとした。堕胎の辛さは男のボクに判るものではないが、前を向いて生きて欲しいと願うばかりだ。変な別れ方になってしまったが、幼い頃からの友人であり、不幸になって欲しいなどとは思わない。



 話は変わり――


 10月の3連休には、北頭学院の体育文化祭があった。


 高校生になって初めての体育祭であり、また文化祭であったが、想像していたようなものと全く違ったことに少し戸惑いを覚えた。


 まず北頭学院では、体育祭と文化祭を同時に開催される。しかも高等部と中等部の合同だった。


 グラウンドで徒競走が盛り上がっているかと思えば、講堂ではロックバンドがライブをしていた。各部活がそれぞれ適当に好きなことをやっている。また体育祭にも文化祭にも全く参加せず、来週に控えた中間考査に向けて、教室で勉強している者もいた。


 ボランティア部は何もしない。それも選択として認められていた。また中等部には『異世界転生部』が本当にあったようで、――異世界で生き残る為の術――と題して、異世界でも出来るマヨネーズの作り方などを模造紙に描いて展示してあった。


 学校生活において、体育祭や文化祭というのは、最も盛り上がるイベントであり、サラっと流してしまって良いのかと思うところではあるが、これ以上は然して語ることもない。


 ……と言うのも、北頭学院の体育文化祭は某大手広告代理店が絡んでいるようで、スポーツクラブやイベント会社などの外部の業者がサポートとして入っているからである。


 サポートとは一応言っているが、前準備から後始末まで全て業者任せであり、実際は完全委託と言って良い。


 クラスで何か出し物を求められるわけでもなく、一般的な体育祭や文化祭で思い描くような青春も、それを切っ掛けに恋が芽生えるようなこともなかった。


 やりたい人がやりたいことをやるだけで、何もすることがない人たちは、その時の気分で走ったり、歌ったり、踊ったり。ボクら生徒は、お祭りにでも遊びに来たような気分だった。


 「さすが授業料が高いだけのことはあるわね」


 と言うのは、母さんの感想である。




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― 新着の感想 ―
ぎりぎりありそうで無いラインを展開した理事長が再登場するとは...あれだけで退場するには惜しい人材だっただけにちょっと嬉しい。紗枝ちゃんとか理事長みたいなキャラ書くの上手いよねぇ。
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