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ボクの周りの女の子は何かと問題がある……  作者: はなだ とめX
第2章 彼女は物陰からひっそり彼を見る
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pr.3 盗撮活動  ~side薫子

 それからの私は精力的でした。空振りする日もありましたが、ほぼ毎日川原へ通い、悠斗くんから気づかれずに撮影することが出来るようになりました。


 陰キャの陰に潜む能力が悠斗くんの気配察知力を上回った結果でしょう。


 たった数ヶ月でボツを除いて写真は3000枚を超えました。当然、その写真を部屋にベタベタ貼ったりはしません。幾つかお気に入りをプリントして机の中に入れてありますが、すべてパソコンの中に保存してあります。


 また変装して、悠斗くんのラグビーの試合にも出掛けるようになりました。その時は1000ミリの望遠レンズでスタンドから撮影に挑みました。機材がプロ仕様であり、体が大きいことが幸いして、周囲からは熱心な保護者に見えていたようです。


 私の悠斗くんコレクションは大幅増量して、中学を卒業する頃には3万枚に届かんばかりになっていました。


 但し、未だ悠斗くんにお礼を言う機会には未だ恵まれておりません。教室で本ばかり読んでいる私では、学年が違えばすれ違うチャンスさえなく、そのまま中学を卒業してしまいました。


 そして私は高校生になりました。


 当初は隣街にある女子高への進学を希望していたのですが、それだとどうしても電車通学になってしまうこともあって、自転車で通える範囲内の高校へ通うことに変更しました。路線には女性専用車両はなく、通勤通学のラッシュ時間を堪えれる自信がなかったからです。


 歩いて通える距離に県立高校もありましたが、ちょっとやんちゃな校風だったのもあって、同じ共学なら進学校であり真面目なイメージがある北頭学院の高等部を受験することにしました。距離にして5㎞程。もし雨が降ったとしても歩けない距離ではありません。


 北頭学院高等部へ入学してからは、比較的安心して過ごせていました。精神科で頂く薬とカウンセリングのお陰で、私の症状も少しずつ緩和傾向にありました。また中学に続いて同じクラスになった高梨さんが、またまた動いてくれたからです。


 私と特定させることなく、男性恐怖症について皆の前で説明し、女子に近ずく前にはまず確認を取ることを、クラスメイトの男子に徹底させてくれたのです。


 さすが高校生だけあって、中学と違い男子も大人でした。不用意に近づいてきたりはしません。


 本当に高梨さんには頭が上りません。足を向けては眠れないとはこの事です。友達ですらない私の為に、ここまでの気遣いをしてくれるのですから。


 おそらく彼女は、将来、日本を代表する弁護士になるだろうと、私は確信しています。


 その後も私は、順調に(?)悠斗くんのストーカー活動を続けていました。


 高校2年生の夏休みには、悠斗くんが出場した全国中学生ラグビー大会にも当然馳せ参じました。


 県外でしたが、一人でホテルに泊まるのも大人っぽさが功を奏しました。あれだけ悩んでいた自身のコンプレックスも近頃は悪くないと感じています。


 準決勝で九州のチームに惜しくも負けてしまって、ノーサイドの笛が鳴った瞬間に天を仰ぐ悠斗くんの姿は、まるで草原に立つ伝説のエルフが祈りを捧げているようであり、私の至高の一枚になりました。


 悠斗くんコレクションも5万枚を超え、それ用に外付けハードディスクを購入しました。


 そんな充実した夏休みを過した高校2年生の秋、いきなり横っ面をひっぱたかれるような出来事が起きました。


 そのアントニオな人は、先頃の生徒会選挙で見事、生徒会長に当選された高梨さんです。当然、私は高梨さんに清き一票を投じたのですが……。


 「生徒会の仕事を手伝ってくれない? それから……悠斗の写真も少し分けてくれるかしら? 盗撮ストーカーさん」


  私はついギョッとしてしまいました。高梨さんにバレていたのです。思わず、いつ? と訊ねそうになりました。おそらくですが、全国中学生ラグビー大会の時に姿を見られたのではないかと思います。姉である高梨さんが応援に行ってないはずがありません。


 あの時の私は少し悪目立ちしていました。我家にあった最大望遠のバズーカのようなレンズを三脚に立てて、撮影に挑んでいたからです。家から持ち出す時は、さすがの母も少しあわあわしていました。おそらくかなりお高いんだと思います。


 上手く変装していたつもりだったのですが……。


 高梨さんは、そんな私を見てニヤリと不敵な笑みを零していました。


 この学校では生徒会も部活の一つと看做されています。校内選挙で選出されるのは会長と副会長だけで、他役員は生徒会の部員ということになるのです。応援団やボランティア部なども生徒会に含まれるようです。


 それまでの私は手芸部に在籍していましたが、元より大恩ある高梨さんの申し出を断るつもりなどありませんでした。高梨さんに少しでも恩返ししたいとずっと考えておりましたので、二つ返事で生徒会への移籍を承諾しました。決してストーカー行為と盗撮がバレたからではありませんよ。


 それからは生徒会長である高梨さんの補佐と言うか、雑務と言うか、傍から見れば、高梨会長の取り巻きになりました。――生徒会長の金魚のフンの大きい方――なんて言われ方をされています。役職は一応、庶務です。ちなみに小さい方は副会長さんです。


 ただ、そんなに近くにいても、高梨さんとはまだ友達にはなれていません。何となく今は、上司と部下の関係というのが、最もしっくりくる呼び方でしょうか。


 学校の方は高梨さんのお陰もあって、恙無く充実した日々を過ごせていましたが、家ではちょっとしたトラブルというか、ハプニングがありました。


 チーズがウチに来て早3年。祖母も母も、そして私もすっかりチーズの虜になっていました。とにかく陽気なチーズのお陰で母はすっかり元気になり、私の男性恐怖症の緩和もチーズの存在が大きかったと思います。


 そんな時、母が提案したのです。


 「もう一匹、飼っても良くない?」


 そして、母が見せるのはジャック・ラッセル・テリアの子犬の画像でした。それを見た祖母も私もあまりの可愛さに、ついつい相好を崩してしまいました。


 そして、母のその発言から1か月もしないうちに、新しい家族を迎え入れることになったのです。


 ジャック・ラッセル・テリアの女の子です。


 私は、彼女に『ペアー』と名付けました。一組、一対の意味のpairではなく、梨という意味のpearです。高梨姉弟へのリスペクトを込めて名付けてみました。もちろんそのことは誰にも言ってません。


 ジャック・ラッセル・テリアは毛質によって三種類に分けられます。チーズは毛が最も短い『スムース』と呼ばれるもので、毛は殆ど伸びません。抜け毛は凄いですが……。ペアーは短い毛と長い毛が交じり合った『ブロークン』と呼ばれるものでした。口周りと眉毛周辺の毛だけが伸びます。また『ラフ』という体全体の毛が長い種もあるようです。


 当初は、チーズがヤキモチを焼くのではないかと少し心配していましたが、まったくの杞憂でした。それどころか家族に混じって、甲斐甲斐しくペアーの世話を焼いていました。


 また親離れしたばかりの小さなペアーも、親代わりになったチーズに、いつもくっ付いて回り、それは父と娘、或いは祖父と孫娘さながらに微笑ましい光景でした。


 ペアーがウチに来て、一年が経った春のことでした。ペアーもすっかり成犬になり、体もチーズより少しだけ大きくなりました。


 そして高校3年のゴールデンウィークの頃のことでした。ペアーが突然、嘔吐をするようになったのです。


 病気か、或いは散歩中に何か良からぬ物を口にしてしまったのかもしれないと、慌てて動物病院に連れて行きました。

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