表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/186

4月

 その子は、俯きがちに佇んでいた。

 

 この日は快晴。日陰を歩く彼からは、()に当たるその子が妙に眩しく見えた。

 

 彼はただ、その姿を見ていた──

 


 

 ◇

 それは、高校の入学式翌日だった。

 

 放課後の校門前。

 彼女は携帯を見ているようで、顔は見えない。

 高めの身長。清楚な雰囲気。真っ直ぐで艷やかな黒髪が胸元で揺れている。

 制服を着崩すことはなく、派手さや色気は無い。代わりに、膝上丈のスカートから出る細い足が際立っていた。


 目が離せないまま、彼は校門へ向かう。


 ふと、その子が顔を上げた。

 眉ラインで切りそろえられた前髪。黒目の大きな、クリッとした瞳。唇の自然な赤色以外に化粧っ気はまるで無く、幼ささえ感じる。飾り気のないその顔が……

 

 

 可愛い。



 

 彼はほんの一瞬、そう思う。


 その瞬間、その子が嬉しそうに笑った。

『嬉しい! 楽しい!』を全身から溢れさせたような笑顔。

 

 それを見た瞬間、彼の周りからその子以外が消えた。

 やたら鮮やかに切り抜かれるその子。その姿だけが強烈に焼き付けられていく。


 校舎の方へ戻るその子と、校門へ向かう彼。

 二人がすれ違う瞬間。


 

 目が合わないかな……こっち見て笑わないかな……。

 

 

 ──彼は確かにそう思った、のだが。



 それは本人も気づかぬまま、心の奥底へ閉ざされた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ