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いつか勇者を喚ぶその日まで  作者: ユーリ
プロローグ
2/5

サヨナラジンセイ

鶏の南蛮漬けってなんであんなにおいしいんでしょうね。

蛇口捻ったら出てくるようになりませんかね。

無理ですか、そうですか……


スイッチを押……

だめですか……


noshならワンチャン……?

 「さっむ」


 寒風吹きさすぶ12月24日22時ちょいすぎ、みなさまいかがお過ごしでしょうか。私は凍えてます。

 仕事が想定外なことに予定通り進み、人手もバイトのみんながいるから充分、時間も遅くなり客足も落ち着いてきたこともあって、久方ぶりに定時に仕事を上がれることになったのは良い。そう、良いことだ。しかし、重大な問題が一つある。そう、予定がない。もう悲しみを通り越して笑いがこみ上げてくるくらいには予定がない。

 リア友は皆恋人とか家族と一緒、ネ友の佐藤さんは仕事、ナラ神@エンジェルさんはサバト?ソバット?とかで忙しいらしいし……。あの人本当何やってる人なんだろ……?

 

「……帰るか。」


 見なれたはずなのにどこかいつもと違うように感じてしまう、聖夜にふさわしいライトアップをされた帰路を、突き刺すような寒さに耐えつつ歩く。店から家までは歩いて15分ほどなのが救いか。去年はバイクで30分以上かけて実家に帰っていのだから、今年はまだましに感じる。


カーンカーンカーンカーン


 普段は終電もないような時間に帰るため、たいして気にすることもない踏切に、今日は引っかかた。家はもうすぐそこだというのに。ここで待たされることにほんの少しだけ苛立つ。電車なんて止まってしまえばいいと心の中で悪態をつくものの、それで何かが変わるわけもない。そう思っていた。

 電車のライトが強くなってくる。さっさと通りすぎないものかと、たいして意味のないことを考えた次の瞬間、私の右横を猛スピードで影が通りすぎた。未だ遮断機の上がらない踏み切りへと。

 その影の正体を察するより先にそれは、踏切内に侵入し、こちらに向かってきた電車にぶつかり、そして宙を舞った。私の立っている場所へ向かって。

 それを認識したとき、まず最初に音が消えた。鳴り響く踏切の鐘の音も、電車か鳴る警笛も、それまでイヤホンで聞いていた最近バイトの子が教えてくれたバンドの曲も、その一切合切が消えた。

 次に視界に映るすべてのものが色を失い、動きがゆっくりになった。動体視力がいいわけでもなく、むしろ悪いほうだというのに、今この時だけは何もかもがまるで止まっているかのようだった。私に向かって飛んでくる影の正体もここで初めて分かった。軽自動車だ。運転席には人()()()であろう物体が乗っていた。普通であればグロテスクに感じるであろうその光景も、色を失っている今となっては大した感想を覚えることはない。いや、嘘だ。()()()()()を考えている余裕がないのだ。


 なんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれやばいやばいやばいやばいやばいやばいえ、死ぬのあれ当たったら死ぬだろいやだ死にたくないしにたくないしにたくないしにたくナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタ……


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……さて、今日のニュースの時間です。昨晩22時頃、東京都、XX区YY線XX駅と西XX駅を走行していた列車の車掌から『自動車と接触した」と通報がありました。この事故で乗客22名に軽いけが、軽自動車の運転手の男性がその場で死亡が確認されました。また、自動車に巻き込まれた20代男性が搬送先の病院にて死亡が確認されました。この影響でYY線では、一時全線で運転を見合わせていました。警察は運転手の男性が飲酒運転をしており、踏切に入った可能性が高いとみて詳しい事故原因を調べています。続いてのニュースです。埼玉県……」

Tips:クリスマスなどのイベントのある時期は飲酒運転による事故の発生率が上がりやすい。飲んだら乗らない、徹底しよう。

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