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いつか勇者を喚ぶその日まで  作者: ユーリ
プロローグ
1/5

猫も杓子も犬も定規も

 初投稿かつ処女作です。多分に粗があるでしょうが、生暖かい目(人肌くらい)で見守っていただけると幸いです。

 鶏の南蛮漬け食べたい。

2XXX年 12月24日

 クリスマスイブ、それは日本において多くの人が家族や友人、あるいは恋人と特別な時間を過ごすとされる聖なる日。


 しかし、そんな幸福溢れる日の裏には必ず苦役を課されている人間がいることを忘れてはならない。絶え間なくステーション内に響く呼び出し(コール)。いったいどこの営業(バカ)が出したんだと申請者名を見ればすぐに分かることを、敢えて考え現実逃避してしまう程にうずたかく積まれた経費精算書。あるいは酒に酔った(カス)の吐瀉物を、営業スマイルを浮かべながら片づけるカラオケ店員などなど……。

 『人は考える葦である』と言った哲学者には申し訳ないが、押し寄せる世の不条理を前にすれば思考する余裕もなくなる。思考しないヒト科の動物は、はたしてその辺の植物と何が違うのだろうか。いや、違いはあるまい。


 さて、そんな世にあふれるイネ科植物と同等な人間である彼、多田野仁志27歳男性居酒屋勤務恋人なし最近焼酎の紅茶割にハマっているだが、彼はこの日、幸か不幸かバイトスタッフが確保できたことにより、定時である22時に仕事を上がることができた。しかし、彼には特にこれといって予定がなかった。友人たちは皆恋人や家族と聖夜を過ごしており、推しの配信者も現時点で配信枠を作ることもなければEX(エックス)の更新すらない、何たる無常。そんな想定よりも仕事を早く上がれたことでクリスマスイブに予定もなく気力もない彼が、退勤後に何をするのか、それは一つしかない。帰宅である。


 想定にない予定通りの帰路、これが彼に人生にどのような影響をもたらすのか、この時は未だ、誰も知らない。しかし一つだけ、一つだけ確かに言えることがあるとすれば、彼の今まで歩んできた平々凡々で人並で没個性的な人生は、この日を境に望む望まぬに関わらず、刺激的で非現実的で個性的な日々へと変化していくだろう。前の人生に、ただの凡人に戻りたいと切望するほどに。

Tips:『人は考える葦である』と言ったのはフランスの哲学者、パスカル。

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