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年上(ロリババア)の神様と普通に恋愛するだけの話  作者: 火海坂猫


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二十一話 上下関係の確立

 デスティニーランドのアトラクションには大まかに分けて二種類ある。一つはそのスリルや爽快感を楽しむいわゆる絶叫マシンの系統と、もう一つはそこに構築された雰囲気を楽しむ体感型のアトラクションだ。もちろん全てが当てはまるわけではないが、基本的には前者は大人向けで後者が子供向けになるだろう。絶叫マシンの中には身長制限のあるものも少なくない。


「月夜はどれに乗りたい?」


 とはいえ月夜は弘人から見て子供と決めつけるには微妙な年齢だ。もちろん子供ではあるものの自意識が確立して自分で判断したいと考えるようになる年頃でもある。せっかくの遊園地なのに自分で乗るものを選べないというのも面白くないだろう。


「わしにはよくわからぬ…………だから九凪に任せるぞ!」


 しかしあっさりと月夜は選択を放棄した。普通であれば目移りするように色々なアトラクションへ目を向けるものだが、最初から選ぶ気などないように彼女は九凪だけを見ている。思い返すとデスティニーランドに入場した際にも目の前の光景に特に感動した様子もなかった。


「それならいろいろ乗ってみようか」


 それに九凪はここがどういう楽しみ方をする場所かわかっていないのかもしれないと判断した。遊園地なんて彼かすれば当たり前に知っているものだから、月夜にどんな場所なのか説明していなかったことに気づいたのだ…………恐らく彼女は世俗から切り離された生活をしていたわけで、よくわからないと彼女自身も口にしている。


「とりあえず最初はそれほど激しくない奴からで…………二人はどうする?」


 乗るアトラクションの順番を考えていたところで九凪は友人たちの存在を思い出す。月夜は優先すべき存在ではあるが、だからといって二人をないがしろにするつもりもない。


「乗りたいものがあるなら別行動でも構わないけど」


 まず子供向けのアトラクションで月夜の反応を見ようと九凪は決めていた。しかしそれだと高校生の二人には退屈になってしまうだろう。中には年齢的に少し乗るのも恥ずかしいものだってあるわけだし。


「久しぶりに連れ立って出かけたのにいきなり別行動もないだろう…………たまには童心に帰るのも悪くないしな」

「そう?」


 春明はスリルを求めるタイプだから、てっきり彼は絶叫マシンに乗りたがるものと九凪は思っていた。


「それにあれだ、三滝なんかは意外と少女趣味だからファンシーなのは好みだぞ」

「…………そうなの?」


 意外そうに九凪は奏を見る。彼女はクールで大人びた印象だったからそれは想像もしなかった情報だった。


「そうよ! 悪い?」


 恥ずかしさとそれをばらした春明への怒りがないまぜになって奏は語気を強める。本当は否定したかったが、否定してそれなら自分だけは別行動でいいよ言われても困る。


「ええと、ごめんね」

「別に高天に怒ってるわけじゃないわよ…………」


 確かにあまり知られたくないことだったかと謝る九凪に奏は語尾を弱める。怒鳴りつけたいのは彼ではなくばらした春明なのだから。


「私ってほら、女子の中では背が高いし昔から子供っぽくないって言われてたから…………その反動というか、ね」


 クールとか格好いいとか誉め言葉なのはわかるが、奏当人としては可愛らしいとかそういう褒められ方がしたかったのだ。しかしそういうイメージが付いてしまうと根がヘタレな彼女では壊すような行動もできず、そのストレスを発散させるように部屋が少女趣味になっていったというのが実情だった。


「だからぬいぐるみとかもたくさん持ってるし、正直に言えばここのもたくさん買って帰りたい…………笑ってもいいのよ」

「別に笑わないよ」

「笑ってるじゃない」

「えっ、ごめん!」


 ぶすっとした表情で奏は九凪を見る。彼も笑ったつもりはなかったのだが、思わず微笑ましいと感じたのが表情に出てしまっていたらしい…………もちろん奏もそれが悪意のあるものじゃないのはわかっているが、恥ずかしいのには変わりない。


「でも別に僕は隠す必要もないと思うけど」

「似合わないって思わない?」

「思わないよ」


 奏にそういう一面があるのかと知れて少し嬉しいくらいだ。人間何かしら隙というか親しみやすい部分があったほうが親近感は増すものなのだから。


「ならいいわ…………そういうことだから」

「うん、じゃあ行こうか」


 奏も楽しめるのなら九凪に遠慮をする理由は無い。時間も有限だし一つ目のアトラクションに行こうかと彼が月夜の右手を取ると、反対側の左手を奏がとった。


「なんじゃ?」

「迷子になったら困るから」

「そうか」


 不思議そうに自分を見る月夜から少し目を逸らしつつ奏は答える。それであれば別に手を繋ぐのは九凪だけでも十分だという事実には目を向けない。彼女はただ趣味がばれたことを開き直った勢いで九凪と夫婦っぽいことがしてみたくなっただけだった。


「まるで親子だな」



 その意思を汲んでか後ろから春明が口を開く。幼子の両手を繋いで挟むというのは仲睦まじい夫婦と子供の象徴のような光景だ。それで九凪が奏のことを意識するかもしれないという彼なりのサポートだ。


「ふむ、親子か! 夫と娘というわけじゃな! くふふ」


 しかしそれに一番に反応したのは月夜だった。嬉し気に九凪を見上げ、次にそれならば悪くはないというように奏を見やる…………それは完全に親が娘を見るような表情だった。見上げられているのになぜか奏のほうは見下ろされているようにすら感じる。


「ええと、今の例えはね」

「親子じゃろ?」

「そ、そうなんだけど…………」


 妻と娘の役が違うのだと奏は言いたかったが九凪の手前わざわざ説明するのは意識していることを教えるみたいで恥ずかしいし、なによりも月夜の自分を見るその視線が有無を言わせないように感じられた。


「い、行きましょうか!」


 結局誤魔化すように奏は先へ進むことを提案した。


「そうだね」

「出発なのじゃ!」


 楽し気に月夜が前へと歩きだし、それに九凪が続く。気後れしてしまった奏は少し遅れて二人に続いていて彼女が二人に引っ張られているようにも見える。それだけ見れば元気な子供に引っ張られる親二人のなのだが、今しがたのやり取りを見るとまた別の印象になる。


「…………ライバルどころか娘になってどうする」


 子供だからとその気持ちを無碍にせず、対等な相手として正々堂々戦う。それは奏の良いところだとは思うのだが、現状で彼女のほうがライバルにすらなれていないように見えるのは笑えない話だ。

 彼の見るところ元々月夜には奏に対する興味は九凪の友人であること以上は無かったのだが、娘という仮定を与えられたことで若干の意識を向けられるようになったのは実に皮肉な話に思える。


「前途多難だな」


 自分で焚きつけた話ではあるのだが、流石にこんな展開は春明にも予想できていなかった。


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