人魂の天ぷら
Bちゃんが、僕の家に遊びに来ていた時の事だった。不意に、窓の外を人魂が飛んだ。僕らは顔を見合わせる。それは、二人ともがそれを見た事の合図になった。
その人魂は、ナンと言うか光的なものではなく、プルプルとした質感で、手でも捕まえられそうに思えた。
……多分、だからだろう。Bちゃんは僕と顔を見合わせた次の瞬間にこんな事を言ったのだ。
「捕まえよう」
取り敢えず、虫取り網を用意する。こんなもんで捕まえられるのかどうかは分からなかったけど。
「でも、捕まえて一体、どうするのさ」
外に出て、人魂(に見えるもの)を、探しながら僕はBちゃんにそう尋ねてみた。すると、Bちゃんは、
「んー」
と、声を発し一呼吸の間の後で、
「ずっと前にさ、ゲゲゲの○○○でさ」
なんで、そんなに古いのを知っているのだろう?
「のっぺらぼうが、人魂を捕まえて天ぷらにしているのを見た事があるのよ。なんだか、美味しそうでさぁ」
「え、食うの?」
それを聞いて、僕は仰天した。Bちゃんなら、本当に食べかねない。それはちょっと……と、思ったのだけど、少し考えると、まぁ、平気かと思い直した。
どうせ、簡単に捕まえられる訳がない。
ところが、
ビチビチビチ…
あっけなく、人魂は捕まえられてしまったのだった。虫取り網で。白くて丸いのが跳ねている。
捕まえられてしまった人魂を見ながら、僕はこう尋ねた。
「これ、どうするの?」
「んー」
Bちゃんは少し考えると言った。
「よし、天ぷらの準備だ!」
ピチピチピチ…
……そんな訳で、人魂の天ぷらが出来上がったのだけど。
「これ、本当に食べるの?」
僕がそう訊いても、Bちゃんは何も答えなかった。
「あのさ、そもそも、これ、本当に人魂なの?」
「んー」
「食べるつもり?」
「いやぁ…」
しばしの間、その後でBちゃんはこう言った。
「流石に、きっついわぁ」
僕は当然、ツッコミを入れる。
「なんで、作らせた!」
「いや、ついノリで…」
でも、ノリで行動してしまった事を後悔しても、もう遅かった。人魂の天ぷらはもうそこにできている。
「……これ、どうしよっか?」
「………」
――で、
人魂のお墓。
僕らは、土を掘って人魂(に見えるもの)を埋め、お墓を作ったのだった。Bちゃんが、言う。
「人魂のお墓って、何かおかしくない?」
「君が言わないでよ。こーなった、原因を作ったのは君でしょう?」
だけど、その時だった。その人魂のお墓から、何かがブワッっと飛び出したのだった。それはまるで、人魂みたいに見えた。
僕とBちゃんは顔を見合わせる。
「あれは、人魂の魂って事かな?」
Bちゃんがそう言う。僕はこう返す。
「いや、やっぱりあれは人魂じゃなくて、他の何かで、その何かの魂が出たとか…」
「そうか。じゃ、早速捕まえて、天ぷらにしよう!」
「もう、勘弁して!」
……因みに、二人とも、それから何かに祟られるような事はありませんでした。