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第四十九話 涙の向こう①

「……お嫁さん!?」


結愛の爆弾発言に、奏多は虚を突かれた。


「本当の本気の本物の最大級の願い事です!」

「ゆ……結愛……」


そう意気込んだ結愛と戸惑う奏多の視線が再び、交差する。

全てを包み込むような温かな光景は、張り詰めていた観月の心を優しく解きほぐす。


――そう、きっと。

ここからが『私達』の第一歩。


だから、続く言葉は決まっていた。


「結愛、あなたならきっと大丈夫。どんな苦難も乗り越えていけるわ」


幼い頃、世界のあらゆることに怯えていた妹は、今ではいつだって勢いで奏多のもとに走って行く。

躊躇うことだって知らない彼女はまっすぐに生きているのだ。

だからこそ、観月が心配になることは多い。


「でもね、結婚はまだ早いわよ」

「ううぅ……厳しいです」


観月の説明に、結愛はしょんぼりと意気消沈する。

奏多と結愛はともに13歳。

結婚可能年齢にはまだ遠い。


「結愛、奏多様に想いが届くことを応援しているからね」


観月は今はそれでいいと噛みしめながら、穏やかに微笑んだ。

どんなに小さな可能性だって掴んでみせるから。

だから、奏多とともに共に生きる道を選んでほしい。

それが観月あねの心からの願い事だった。


「あの、あの、あのですね」

「結愛……?」


その時、結愛が真剣な眼差しで奏多のもとににじり寄ってくる。

そして、顔を上げて願うように言葉を重ねた。


「……奏多くん、これからも好きでいてくれますか? もし、神様の記憶を完全に取り戻したとしても……あの、あの、私のこと、好きでいてくれますか?」

「当たり前だろ」


奏多が発した言葉の意味を理解した瞬間、結愛の顔は火が点いたように熱くなった。


「はううっ。……もう一回、もう一回!」


妙な声を上げながら、身をよじった結愛が催促する。


「今のって、当たり前だろ、ってやつか……」

「うわああ、すごい……幸せです……。も、もう一回!」

「当たり前だろ」

「きゃーっ」


張り詰めていた場の空気が温まる。

この瞳に映る花咲く結愛の笑顔が春の温もりのように感じられて。

奏多は強張っていた表情を緩ませた。


「つーか、このやり取り、いつまでも続きそうだな」

「結愛のことだから、いつまでも続くと思うわ」


やがて、空の向こうが月明かりに包まれていく。

満ちていく世界の中で、慧と観月は弟と妹が紡ぐ温かな光景を見守っていた。


奏多と結愛が抱く永久の想い。

その安らぎが、少しでも永くあることを願って。

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