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第ニ百九十八話 平行線をたどる③

「このままを望む。それこそ、身勝手な願いですね」

「身勝手なのは、おまえらもだろう。『破滅の創世』様の記憶が完全に戻れば、川瀬奏多様という疑似人格は消える」


レンの言いたいことを察したように、ヒューゴは薄く笑みを浮かべる。


「仮初めとはいえ、川瀬奏多様も、『破滅の創世』様の……神の意志そのものだ。それを無視するのは、『破滅の創世』様の意向にそむくことになるんじゃないのか?」

「……っ」


それはただ事実を述べただけ。

だからこそ、余計にレンは自身の置かれた状況に打ちのめされる。

神命の定めを受けて生を受けた『破滅の創世』の配下達にとって、『破滅の創世』は絶対者だ。


「分かっております。……この状況が、今の『破滅の創世』様の意志にそむくことを……。だからこそ、願うのです。『破滅の創世』様の記憶が戻るのを」


ヒューゴの言葉に、随分と物腰丁寧な仕草でレンは礼をする。

大仰に両の腕を広げながら。

奏多の――『破滅の創世』の記憶が戻るのを待ちわびるように。


「『破滅の創世』様自身が記憶を取り戻せば、人の心を不要なものとして切り捨てることができます。私達は、その力添えをしているだけです」


『破滅の創世』の思い描く情景には遠いかもしれないが、これは確かな一歩のはずだとレンは確信していた。


「ヒューゴ様」

「なるほどな。それなら、『破滅の創世』様の意志をそむくことにならないと考えたわけか」


一族の上層部の者の戸惑いに、ヒューゴはやれやれと肩をすくめる。

それを、浅はかだと侮ることはできない。

何故なら、奏多の意志は、『破滅の創世』の本来の意志とは異なるからだ。


静寂が満ちた。


一族の上層部にとって、最大の誤算は別世界の女神と別世界の者達の介入だった。

彼らさえいなければと思うことは幾度も起こり、そして今もまた起ころうとしている。

一族の上層部の者達の動向。

それらを利用されても、戦うことを、挑むことをやめないのは、それが一族の上層部の矜恃に連なるものゆえだろう。


「力添えか……。『破滅の創世』の配下達は、あくまでも奏多の意志より、『破滅の創世』としての意志を優先するみたいだな」

「そうね……」


慧の言葉に、透明感のある赤に近い長い髪をなびかせた観月は表情を強張らせる。

神の配下の力は強大だ。

その上、不老不死である。

何かあれば、勝敗の天秤は神の配下達に傾くだろう。


「では、邪魔する者がいなくなったところで、改めてお伝えいたします」


レンは改めて、誓いを宣言した。

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