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第ニ百五十一話 安全な場所を求めて④

「決められた運命なんかに絶対に負けたくないもの!」


観月の覚悟が決まる。


ここにいるみんなで神の加護に本気で抗う。

そして、『破滅の創世』の神意に立ち向かう。


観月は信じている。奇跡が起こることを。

奏多達が定められた運命を壊してくれることを。


「たとえ、不変の魔女、ベアトリーチェ様や『破滅の創世』の配下達が立ち塞がってきても、私達は奏多様を守ってみせる……!」


拳を握り締めた観月は手加減はしないと意を決した。


「……ふむ。それは困りますね。我々も、上部から奏多様をお連れするように言われておりますので」


一族の上層部の一人は、観月達がそう言うのを待ち望んでいたように微笑んだ。


「それなら何故、その上部が動かない? このまま、ヒューゴ達に任せているつもりか?」


司の率直な物言いに、一族の上層部の一人はその唇に「そうですね」と純粋な言葉を形取らせた。


「ご安心ください。一族の上層部の上部は動いております。ただ、別の騒動の鎮圧に動いており、この場には来られないだけです」


一族の上層部の一人は丁重に一礼し、弁明する。


「分かりました。では、そのようにお伝えしておきます。また、何かありましたら、すぐに奏多様のもとへ駆けつけますので」


一族の上層部の者達はそう言い残すと、出発ロビーから去っていった。


「何かあったら、か……」


一族の上層部の者達の最後の言葉は、奏多の瞳を揺らがせるのに十分すぎた。

観月は不安を端的に表した。


「司、どう思う?」

「当然、俺達を尾行してくるだろうな。だが、無下にはできない。今、この状況で、『破滅の創世』の配下達、一族の上層部、どちらも相手にするのは分が悪すぎる」


恐らく、司の言葉は本心だろう。

司を始め、『境界線機関』の者達は一族の上層部を毛嫌いしている。

だが、しかし、その働きに感謝をせぬような無礼者でもなかった。


「とにかく、緊急脱出装置を探そう。下手に詮索すると危険な感じがするからな」


司の意見はもっともだった。

『境界線機関』はこの世界の未来を担う、練度の高い精強な部隊である。

それに今回、司は一族の上層部が有している神の加護に備えて、警護部隊は一族の者達だけで構成している。

猛者ぞろいである『境界線機関』の者達相手に、先程の一族の上層部の者達のみで抗するのは無謀だ。

それなのに――一族の上層部の者達の表情には動揺の色は一切見られなかった。

まるで微笑ましい出来事があったように、穏やかな笑みを堪えていた。

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