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第十ニ話 閉ざされた記憶③

――その瞬間、大地が震えた。


鳥が飛び立つ。小動物が逃げ出す。逃げれぬ花は死を悟りて枯れ始めた。

大地が嘆いている。空が啼いている。世界は軋むように雷雨という涙を零す。

彼方を見据えれば、天の色が端より紅とも紫ともに染まり始める。

これは――まるで彼の存在が世界を滅ぼせと謳っているかの如くだ。

襲い来る神獣の群れを相手に、結愛はカードを操り、約定を導き出す。


「行きますよ! 降り注ぐは氷の裁き……!」


その刹那、立ちはだかる神獣の群れへ幾多の氷の柱を敵の群れの直下から突き立てた。

しかし、神獣は自在にその身を硬化する。カードから放たれた氷の刃は神獣を捉えることはなく、左右に受け流された。


「また、カードの力を無効化したのか……?」

「ほええ、最悪です。全く効いていないですよ!」


奏多と結愛がじわじわと押し込まれていく中、神獣の群れの連携攻撃は徐々に苛烈さを増していく。


「もう一度、降り注ぐは氷の裁き……!」


結愛は氷塊を連射し、生ずる氷柱で神獣の直撃を阻む。さらに放たれた強固な一撃を辛くも躱すが、巨体に反して神獣の動きは決して鈍くない。


「……くっ」

「はうっ……」


次撃は避けられず、奏多と結愛は壁に叩きつけられた。

神獣の群れは圧倒的な攻撃力と速度で、四方八方から攻勢をかけ続ける。

対する奏多と結愛は防戦一方だ。 


「多勢に無勢なら、それに対応するまでだ」


奏多は不可視のピアノの鍵盤のようなものを宙に顕現させると軽やかに弾き始めた。

川瀬家の者は魔楽器使いと呼ばれている。

魔楽器――それは演奏することで魔術的な力を発揮する不思議な楽器だ。

奏多はピアノの魔楽器奏者である。

研ぎ澄まされた表情で迅速に、かつ的確に鍵盤を弾いていく。

赤い光からなる音色の猛撃を次々と叩き込む。それは治癒の反転、その彼なりの極致は神獣の群れをたじろがせた。


「結愛、上空から新手だ!」


と、その時だ。眼前の神獣の群れとは別の方角から……奏多は殺意を感じ取る。

――直後に飛来するのは『雷』だ。この地を荒れ狂うように降り注いでいる。

奏多がふと気が付くと、目の前に人影が立っていた。

くすんだ銀髪のまだ、幼さの残る少女。


誰だ?


その姿が目に入った瞬間――奏多は呼吸すら忘れたように少女を見入った。

彼女を見ていると、まるで意識が吸い込まれそうになる。

なのに何故か、この少女から目を離すことができない。


でも、どこかで会ったことがあるような気がする……。


疑問に思う中、奏多は周囲の変化に気づいた。神獣の群れの動きが突如、統率のとれたものに変わったのだ。

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