表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルーザー・ブレイヴ ~異世界転移で女子と強制ペア!底辺スキルの覚醒と工夫で最強の英雄になった件~  作者: 朴いっぺい
第一部【勇者降臨】 第一章 俺と彼女が、異世界でやることを決めるまで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/260

連撃

お読みいただき、ありがとうございます!

遺跡の中空に、蒼乃が振り下ろす風の刃が弧を描いた。


「てえええええいっ!」


 風刃は、狙い違わずガディアンナの右角を直撃する。だが角は折れるどころか、ヒビひとつ入らない。


「風の力で、我を砕けると思うてかッ!!」


 ガディアンナの顔が、ほくそ笑む。

 だが蒼乃は中空で風の刃を繰り返し振るうのみで、表情を変えない。なにかを、待っているかのように。


(ああ、そうだろうなッ!)


 ガディアンナの正面に立つ黎一は、炎を纏った剣を蒼乃に向けて振るう。


勇紋共鳴(サインズ・リンク)! 魔力追跡(マナ・チェイス)!」


 黎一の意志に呼応して飛んだ炎刃が、蒼乃が操る風の刃へと吸い込まれた。白き風刃が炎を呑み込み、またたく間に赫い雷光を放つ竜巻と化す。


紅刃(スラスティング)熱風(フェーン)ッ!!」


 焦熱の竜巻が、ガディアンナの右角を捉えた。表面にわずかな、だが確かな亀裂が入る。


「っがッ⁉」


 苦悶の表情を浮かべるガディアンナが、戦斧を振るわんともがく。が、黎一の炎剣と、アイナの斬撃によって阻まれる。

 しかし蒼乃の赫い雷刃は、未だ角を斬り折るには至らない。

 その時、蒼乃が短杖(ワンド)を持つ両手のうち左手を離した。かざした手に、風が集う。


(まさか……! でも魔法は発動体がないと……)


斬空風刃(スラスティング・エア)――二刀(ツヴァイ)!!」


(……マジかよっ!!)


 予想を裏切って、蒼乃の左手に二本目の風刃が生まれた。素早く炎刃を飛ばすと、それは赫き旋風の剣へと姿を変える。


「えええええいッ!!」


 風と雷。蒼乃が振るうふたつの赫が、ガディアンナの右角を直撃した。

 赤き交差が生んだ大きな亀裂が、刹那のうちに角全体へと広がり――右角が、砕け散った。


「ッガッ、アアアアアアッ⁉」


 ガディアンナの身体が、ぐらりと傾いだ。蒼乃はさすがに消耗したか、距離を取ってへたり込む。

 黎一の炎刃が前角に追撃を入れるうちに、右手のアイナが動いた。大上段から振り降ろされた刀が、左の角を狙う。

 しかしガディアンナは、左手でアイナの刀をがっしりと掴んだ。


「小癪、なああああッ!!」


(やべえ、ダメかッ⁉)


 炎剣を振るって牽制するが、ガディアンナの振るう戦斧に阻まれ届かない。

 刀がひび割れるかと思った時――刀身が、にわかに炎を噴き上げた。

 炎は揺らめき、縛鎖のようにガディアンナの掌に絡みつく。アイナが、刀を振り抜いた。


「バカな、なぜ折れ……! ッガアアアアアアッ⁉」


 幾度目かの苦悶の声をあがる。ガディアンナの左掌は、指がばっさりと焼けただれてなくなっていた。


「――国断(くにたち)


 凛とした、声が響く。

 刀を引いたアイナの右中指からは、赤い輝きが放たれていた。先ほど遺跡で拾った、ルビーの指輪だ。


「貴様……ッ! その光は……ッ!」


(炎の付与魔法が込められてたのかっ!)


 ガディアンナは左手を失くしながらも、黎一とアイナを薙ぎ払わんと戦斧を振るう。

 黎一がそれを受け止める間に、アイナは体勢を整え宙へと跳んだ。中空で身体を一回転させ、勢いをつけて刀を右の角に叩きつける。


潰天(かいてん)――ッ!!」


 裂帛の気合とともに繰り出された炎の刀が、ガディアンナの左の角を直撃した。折れこそしないものの、翡翠色の表面に大きな亀裂が入る。

 アイナは着地するなり刀を返すと、今度は全身で伸びあがるようにして斬り上げた。


「――荒月(こうげつ)ッ!!」


「ッ……がぁ……ッ!!」


 炎の軌跡が生んだ赤き月の現出と、ガディアンナの声にならぬ声が重なる。宙返りしたアイナが着地した時、左角は綺麗に斬り落とされていた。


(よし、いけるッ……)


 ふたたび前角に斬りつけようとした瞬間。

 ガディアンナが、笑った。


(ッ……! あいつ、まさかッ……!)


万霊祠堂(ミュゼアム)――魔律慧眼(カラーズ)!」


 魔力(マナ)を見破る眼が、ガディアンナの身体を覆う苔色の靄を映し出す。

 黎一が剣にありったけの赤を纏うと同時に、靄が弾けた。それは野を包む霧の如く、しかし確かな衝撃を以って、黎一たちに襲いかかる。


(やら、せる……かあ、っ!)


 剣を突き立て、紅蓮を解き放った。苔色と赤、地と炎、ふたつの魔力(マナ)がぶつかり合い相殺する。

 吹き飛ばされそうになるのを、すんでのところで堪える。蒼乃とアイナが、視界の端から消えていくのが見えた。


「ッグッ、ハハ……ハハハハッ! 佳いッ! 大いに佳いぞッ!!」


 両角を失ってなお、地の王獣たる存在はからからと笑った。


「この感覚ッ! この衝動ッ! 愉しませてくれるな、人の子らよッ!!」


『チッ、まだくたばらねーか。この緑牛め』


 ”剣”が(うそぶ)くと、ガディアンナは黎一が握る剣に目を向けた。


「先ほどから何者の声かと思えば……久しいな。存在を忘れていたわ」


『ケッ、気づきやがったか。そのままくたばりゃいいものを』


「この者どもも、そなたの差し金か? ……まあよい。寝起き早々、愉しめたわ」


 嗤うガディアンナの前角は、徐々に輝きを増していた。雷光に似た光を放ちながら、見る見るうちに伸長していく。


『おい。調子はどーだ相棒? そろそろぶちかまさねえと、やべえぞ』


(分かって、る……ッ!)


 心で応えると、幾度目かの万霊祠堂(ミュゼアム)を呼び出した。

 やれるだけはやった。おそらくこれが、最後に使う能力(スキル)だ。


万霊祠堂(ミュゼアム)――魔力喰鬼(ビッグ・イーター)ッ!」


 言葉に応じるように、周囲の空気が渦巻いた。炎と風が苔色の残滓すら呑み込んで剣へと集っていくのが、感覚で分かる。

 周囲の魔力(マナ)を吸収し自身の魔力(マナ)として使用する能力(スキル)である。とはいえ、ため込んだ魔力(マナ)を一撃に込めて外しては元も子もない。ゆえに剣に魔力(マナ)を纏うことで、継戦を可能にしたのである。


「ほう……。我が魔力(マナ)すら取り込むとな」

 

 赤と黄金を綯い交ぜにした竜巻を纏う剣を見て、ガディアンナが笑う。 

 その笑みに気圧されぬように、黎一は剣を構えて向き合った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

お気に召しましたら、続きもぜひ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ