表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルーザー・ブレイヴ ~異世界転移で女子と強制ペア!底辺スキルの覚醒と工夫で最強の英雄になった件~  作者: 朴いっぺい
第一部【勇者降臨】 第一章 俺と彼女が、異世界でやることを決めるまで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/260

地王降臨

お読みいただき、ありがとうございます!

 黎一は剣を両手で構え、臆することなく突っ込んだ。迎え撃つ地精王獣ベフィモスの声が、今なお苔色の魔力マナが立ち込める遺跡にこだまする。

 剣の構え、力の込め方――。今の自分が知らないものが、身体の中に直接流れ込んでくる。


(なんだろう、負ける気がしない)


 地精王獣(ベフィモス)は胴の傷を庇うように身を翻すと、黎一の方に顔を向けた。三本の角を突き立てんと、猛然と突っ込んでくる。


『へっ、力比べかよ! 牛らしいぜッ!!』


「……フッ!」


 鋭く呼気を吐きながら剣を大上段から振り下ろし、翡翠の角とぶつけ合う。その衝突は、得も言われぬ音とともに遺跡の空気を揺るがした。数拍も置かぬ間に、剣と圧し合っていた真ん中の角に小さな亀裂が生まれる。


(やれるッ!)


「グォルッ! ……ルオアアアッ!!」


 地精王獣(ベフィモス)は飛び退ると、隙を埋めるように右前脚の爪を繰り出した。間合いを取って躱すと、お返しとばかりに角を狙って炎の弧を飛ばす。これはさすがに読まれたか、左の前脚によって散らされた。


(角を使わなくなったッ!)


 剣に、ふたたび赤色を纏わせる。赤は黎一の意志に呼応して、渦巻く炎となって刀身を包んだ。


『カカッ、いい読みしてんじゃねえか! お目覚め後で、吸収した魔力(マナ)のほとんどが角に集中してやがんだッ! 角を狙えッ!』


 以前のロイド村のように炎の魔力(マナ)に満ちていればよいのだが、今は周りのほとんどが地精王獣(ベフィモス)の力の源である地の魔力(マナ)である。

 最初の一撃のように集中できれば話は別だ。しかし意識を逸らしてくれる存在がいない今、それができるだけの隙が生まれるとは思えない。


(周囲の魔力(マナ)を使っての魔法は無理だ! とっ組み合いでぶった斬るしかない!)


「オオオオオオオオオオオオッ!!」


 意識せずに、声が漏れ出る。自分でも違和感を感じるほどの脚力を以って、またたく間に獣の巨躯へと迫る。

 だが地精王獣(ベフィモス)は黎一を前にしても動じないばかりか、大きく口を開けた。その喉奥は、緑の光を湛えている。


(やっべッ!)


 思うが早いか、地精王獣(ベフィモス)の口から人の身の丈ほどもある苔色の光球が放たれる。やむなく、剣で斬り散らした。炎と光球が互いを喰い合い、散り爆ぜた光が視界を覆う。

 しかしその陰から、地精王獣(ベフィモス)の巨体が一足飛びに現れた。勢い任せに貫かんとばかりに、黎一に向けて角を繰り出してくる。


(二弾構えかよ……ッ!)


 炎を纏いなおす暇はない。なんとか身をよじろうとした時――。


「風よ、我らを導く翼となれっ! 風翼言祝(ウィンディ・ブレス)ッ!!」


 ――蒼乃の声が響いた。不意に、身体が軽くなる。

 疲れを振り切り、風の補助魔法をかけてくれたのだ。


(ナイスッ! 後で礼言うの気が重いけどッ!)


 生まれた好機を逃さず、角をすり抜けて前へと飛んだ。目指すは地精王獣ベフィモスの右側、狙うは初撃で斬り裂いた脇腹だ。


「くった、ばれええっ!」


 裂帛の気合とともに振り下ろした刃の軌跡が、赤き弧を生んだ。それは這うように進み行き、焼けただれた獣の胴を直撃する。


「グゥウォロォアアアアアアアッ!!」


 苦悶に満ちた獣の咆哮が、ふたたび響き渡った。地精王獣(ベフィモス)の動きが、止まる。

 機を逃さず右の角へと迫り、赤を纏った剣で一撃を加える。翡翠色の輝きが陰るとともに、角の表面に小さな亀裂が入った。

 同時に、視界の端に幾筋もの銀光が閃いた。夜空を彩る流星のごとき光の群れが左の角を刻み、その輝きを曇らせる。


「グギアアアッ……オオオオオッン!!」


 振るわれた尾をかろうじて躱した後、地精王獣(ベフィモス)は大きく間合いを取った。ふたたび吐息(ブレス)が来るかと思ったが、黎一をじっと見たまま動かない。

 すると先ほど左の角を攻撃した者――アイナが、すとんと黎一の脇に降り立った。


「……いい剣筋だ。見違えたぞ」


「アイナさんっ!」


 いつの間にか隣にいた蒼乃が、嬉しそうな声をあげた。アイナは微笑みで応じた後、黎一の持つ剣に目を向けた。


「その剣が?」


「……そう、みたいです」


 と、答えた瞬間。


『フフフッ……フハハハハハッ!!!!』


 突然聞こえた哄笑は、脳裏に響く”剣”のものではなかった。

 見れば地精王獣(ベフィモス)が顔を歪ませながら、面白そうに身を震わせていた。


『フハハハハ……ッ! ()き日ぞ、まこと佳き日ぞッ! 寝起き早々、我が前に立ち、傷つける存在(もの)たちと巡り合おうとはッ!』


 地精王獣(ベフィモス)が、ゆっくりと居直った。巨躯が、頭部に生えていた三本の角が、徐々に苔色の(もや)となって消えていく。


『人の子らよ。その力に、敬意を表そう』


 翡翠色の角が消えると、周囲から苔色の魔力(マナ)が一気に消え失せた。地精王獣(ベフィモス)から生まれた靄へと魔力(マナ)が集う様は、さながら万華鏡のようだ。

 靄は徐々に形を成し、野性的な顔立ちをした褐色の美女へと変わっていく。


(あれ、は……)


 上背は、黎一の頭ひとつ分は大きいだろう。髪はたてがみと同じく、白銀のウルフロング。たてがみで編んだと言わんばかりの白銀色のビキニとブーツ、首周りのファーが、引き締まった肢体を彩っている。変わらないのは、額と側頭から生える翡翠色の角だけだ。


(お、女……?)


 手が震える。足が竦む。構えているはずなのに震える剣を見たのか、女性となった地精王獣(ベフィモス)はニヤリと笑った。


「どうした、剣が震えているぞ?」


 耳にはっきり届く声もまた、低く威厳はあるが女性のものである。先ほどまでのくぐもった声からは、想像もできない。


「お前、お、女……?」


「フン、メスだともオスだとも言った覚えはないわ。我、ガディアンナ・イヴォーク也。さあ……もっと、愉しませよ」


 不敵に笑う地精王獣(ベフィモス)――あらためガディアンナから、堂々たる覇気が吹きつけた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

お気に召しましたら、続きもぜひ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ