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ルーザー・ブレイヴ ~異世界転移で女子と強制ペア!底辺スキルの覚醒と工夫で最強の英雄になった件~  作者: 朴いっぺい
第一部【勇者降臨】 第五章 俺と彼女が、因縁の相手を斃すまで

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魔性の緋王

お読みいただき、ありがとうございます!

 禍々しい光が、周囲にある魔物たちの死骸を呑み込んだ。

 斃された強化種も、火喰赤鵬(シムルグ)も、光に触れたと同時に塵となって消えてゆく。


「ちょっと……! なによあれ……っ!」


 蒼乃が、フィーロを庇うように抱きしめながら呻いた。

 だが黎一は、妙に気分が落ち着いていた。


(なんでだ……? まるで、こうなることが分かってたような……?)


 ふと右手の甲に、違和感を覚える。

 見れば夜空に浮かぶ三日月を象った勇者紋(サイン)が、ぼんやりと光っていた。光の明滅に合わせて、右手の甲が脈打つ。


(共鳴? 呼応? ……いや、そんなことはどうでもいい! 今は勾原を……!)


 意識を引き戻した途端。

 光が、ひとつどころに集まる。ちょうど屋敷の入口、勾原が立っていた場所だ。その中心には、人とも魔性ともつかぬ影がある。


「ハ……ハハハッ……ヒハハハハハッ!!」


 影から聞こえてくる声は、たしかに勾原のものだ。

 国選勇者隊(ヴァリアント)の面々は魔物との戦いで消耗しているのか、攻撃しようとする者はない。

 ――やがて、光が収まる。


「……ああ。いい気分だぜ」


 声とともに現れたのは、異形の存在だった。

 妙に小柄な体格と顔の造形は、勾原のそれを保っている。だが逆に言えば、そこだけだ。はだけた体表は赤く染まって鱗らしきものが現れ、背には体表と同じ色をした翼が生えている。手の爪は鳥の鉤爪を思わせる形に変わり、足に至っては鳥の脚に変貌を遂げている。


(あの姿、火喰赤鵬(シムルグ)か)


「魔物の屍を吸収したっ⁉」


魔獣使役(ビースト・テイマー)……⁉ そんな能力があるなんて、どこにも……!」


 アイナとマリーが呻いた。

 同時に、勾原の翼が羽ばたく。次の瞬間には、アイナに肉薄していた。


(速いッ……!)


「シイッ!」


「くっ⁉」


 立て続けに繰り出される鉤爪を、アイナが片刃の長剣で受け弾く。

 異様な光景だった。勇者(ブレイヴ)となり身体能力が向上したはずのアイナが、防戦一方になっている。

 無論、それを見ているだけの者たちではない。黎一が剣に水を纏わせるより早く、アイナの近くにいたマリーが動いた。


業花飛種(カダベラス・シード)ッ!」


 振るわれた長杖(スタッフ)から飛ぶ闇の礫が、勾原の背に降り注ぐ。だが勾原は、少し顔を歪めただけだ。


「おめえも、あとで可愛がってやるから……!」


 目の前のアイナに蹴りを入れて飛び退くと、翼を羽ばたかせてマリーへと襲いかかる。身体からは、火喰赤鵬(シムルグ)を思わせる七色の採光が散っている。


「ちょっと黙ってろよッ!」


 その寸前、黎一は剣を振るい水の魔力(マナ)を解き放つ。


勇紋共鳴(サインズ・リンク)魔力追跡(マナ・チェイス)! 蛇水咬(じゃすいこう)!」


勇紋権能(サインズ・ドライヴ)魔力追跡(マナ・チェイス)! 風礫招(ウィンド・ショット)ッ!」


 蒼乃の声が重なった。

 見ればすでに両手に短杖(ワンド)を持ちながら、攻撃の体勢に入っている。はだけた胸元に目が行きそうになったところで、目を逸らして勾原に集中した。

 水の蛇と風弾が、能力(スキル)に導かれて勾原に襲いかかる。


「しゃら、くせえッ!」


 声とともに、勾原が中空で鉤爪を振るった。

 寸前まで迫った水の蛇と風弾が、あっさりと打ち払われる。幸いこの間に、マリーは大きく飛び退いていた。


(思ってた以上に、堅いッ!)


 見れば勾原の手のあたりが、かすかに光の膜で覆われている。

 先ほど壁となっていた、精銀岩人(ハルモニア・ゴーレム)の強化種が張る結界と同じものだ。


(魔物の身体を吸収することで、特性も吸収する……。魔物使役(ビースト・テイマー)に、別の力が備わったのか)


 自分でも驚くほど、落ち着いた思考だった。

 剣に次の魔力(マナ)を纏わせる間に、アイナがふたたび勾原へと迫る。


勇紋権能(サインズ・ドライヴ)刻命焉刃(デッドリー・エッジ)ッ!」


 火竜の角すら断ち斬る毒の刃だ。勾原もさすがに侮りがたしと見たのか、中空へと逃れようとする。

 その時、マリーが黒の長杖(スタッフ)を構えた。


「遅い……ッ! 業花蔦縛(カダベラス・ヴェイル)!」


 言葉とともに、勾原の身体から藍色の蔦が生えた。それはまたたく間に勾原の四肢へと伸び、絡みつく。

 業花飛種(カダベラス・シード)からの派生魔法だ。宿主の魔力(マナ)を吸い取り成長した闇の種から生まれる蔦が、宿主の身体を縛める。

 黎一は頃は良しとばかりに、剣に光の魔力(マナ)を纏った。


裂虹環(れっこうかん)ッ!」


 周囲に生まれた五本の虹の剣刃が、勾原を目がけて一斉に飛ぶ。

 勾原の動きが止まるのを見越していたか、周囲にいた面々も動く。


勇紋権能(サインズ・ドライヴ)魔力追跡(マナ・チェイス)! 氷竜巻檻(アイス・トルネード)ッ!」


竜呪・水噴爆破(ぱしゃぱしゃ)っ!」


「――銀月(ぎんげつ)白牙(びゃくが)ッ!」


 蒼乃が、フィロが、アイナが放った水の一撃が、中空にいる勾原へと殺到する。

 逃れられまい――。誰もがそう思っているのが、空気で分かる。


(いや……。今の、勾原(あいつ)なら……!)


 胸が、妙にざわつく。

 その予感を、なぞるかのように。


「……ッアアアアアアアッ!!」


 勾原が、吼えた。

 絡みついていた藍色の蔦が、勾原から放たれる虹の採光によって散り消える。

 光は輝く壁を形作り、勾原目がけて放たれた攻撃のすべてを受け止め、弾き散らした。


「うっそでしょ……⁉」


 蒼乃の呆然とした声が響く。

 光となった輝く壁が勾原に吸収され、その身体が七色の採光を纏っていく。先ほど火喰赤鵬(シムルグ)が放った、体当たりと同じだ。

 それを察したのか、仲間たちの顔色が変わった。


「チッ! 私が能力(スキル)で止めるッ! 援護を……!」


「あれ止まるんですかあっ⁉」


「やらずに負けるくらいなら、やった方がマシよッ! フィロ、どーんの準備ッ!」


「んんぅ、あてられるかな……っ!」


 皆が構える中。

 黎一の心は、凪のごとき静けさだった。


(なんでだ? 攻撃も弾かれて、アホみたいな威力の攻撃してきてるんだぞ。ちょっとは、焦れよ)


 まるで自分ではなく、誰かに語り掛けるような心境の中。

 右手の甲が、どくりと脈打った

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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