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ルーザー・ブレイヴ ~異世界転移で女子と強制ペア!底辺スキルの覚醒と工夫で最強の英雄になった件~  作者: 朴いっぺい
第一部【勇者降臨】 第五章 俺と彼女が、因縁の相手を斃すまで

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誰がための力

お読みいただき、ありがとうございます!

「ヤナギ殿。少し、いいか?」


 黎一は、レオンの声に振り返った。

 脇では国選勇者隊(ヴァリアント)の面々が、沈痛な表情で部屋を出ていく。


「……なんすか」


 心配そうな蒼乃に「先に出ていろ」と視線を送ると、黎一はレオンに向き直った。

 レオンもため息ひとつつくと、黎一に向き直る。


「そう邪険にしないでくれ。こちらとしても断腸の思いなのだ。こうでもしなければノスクォーツやルミニアはもちろん、ヴァイスラントの国内とて……」


「……分かってますよ。やればいいんでしょ、やれば」


 黎一は頭をわしわしと掻きながら、面倒くさげに応じる。


「それに勾原たちは元々、俺たちの身内だ。俺たちで仕留めます」


「己の手で、人を殺めてでもかね。キミはまだ経験があるまい」


「魔物だらけの山で生き残ったヤツをまだ人間だと思うなら、そうなりますね」


「……そこまで覚悟しているならば、話は早い。キミにはあらかじめ伝えておこう」


 ふたたびため息をついた後、レオンは目を伏せる。


「いかなキミたちと言えど、現有の戦力のみでどうにかなる数ではあるまい。マガハラたちの力も未知数だ。もし作戦が失敗すると、キミが判断した場合……。いや、できればその前に……」


 レオンは、目を伏せたまま言葉を続ける。


「……キミはあの能力(スキル)を遣い、すべてを灰燼に帰せ」


「ッ……!」


 予想していた通りの言葉だ。表情が歪んだのが、自分でも分かる。

 勇者(ブレイヴ)の特権の最たるもの――能力(スキル)

 本来であれば、一人ひとつのみ与えられる力だ。しかし黎一は己の能力(スキル)である”万霊祠堂(ミュゼアム)”によって、古の竜人たちから得た複数の能力(スキル)を遣いこなすことができる。

 覚醒した当初は内密にしていたのだが、先の騒動を経てレオンを含む周囲の知るところとなったのだ。


「ロベルタさんを……見殺しにしろって言うんですか?」


 レオンが言う能力(スキル)は、伝説に名を残す魔獣”六天魔獣(ゼクス・ベスティ)”を討伐した末、得たものだった。

 炎帝抹消焔(オブリタレイト)――。

 黎一の父である聡真が炎の女傑とともに創りあげた、火属性の始祖魔法だ。

 その威力は、天変地異と言って差し支えない。禍の山脈で撃とうものなら、おそらく周辺の地形が変わる。


「カストゥーリア公も今回ばかりは納得している。最善を尽くすと、言ってはあるがね」


「だったら……!」


「最善と最適解は違うのだよ。(まつりごと)においては、なおのことね」


 ロベルタの父であるアルバート・ヴァン・カストゥーリアは、ヴァイスラント国内でも指折りの軍閥貴族である。レオンをはじめとする冒険者ギルド推進派にとっては政敵と言っていい。本来ならギルド側の不手際として、文句を言ってきてもおかしくない。

 そのカストゥーリア公が首を縦に振ったということは、ヴァイスラントとしても相当に切羽詰まった事態であることは明白だった。


「今回の作戦は、先ほど伝えた意味もあるが……。裏を返せば、それだけ諸国がキミに期待しているんだ。ましてマガハラたちは、キミの力を知らないのだからね」


 炎帝抹消焔(オブリタレイト)の威力の前には、敵も味方も関係ない。

 最初から遣う肚で行くなら、まともな兵隊など連れていった数の分だけ犠牲が増える。


「まさか、最初からそのつもりで……?」


「どうか分かってくれ。今のキミはもはや、ただの勇者(ブレイヴ)ではない。一国を……いや、大陸すべてを動かしうる存在なんだ」


 レオンは黎一の目をひたと見据えながら、諭すように言った。

 万霊祠堂(ミュゼアム)の存在が明るみに出てから、その力は冒険者ギルドのネットワークを通じて大陸諸国の知るところとなっている。

 ノスクォーツとルミニアが被害を最小限に抑えるため、黎一の能力(スキル)を頼ったとしても何ら不思議はない。


「……分かりました。ですが使うかどうかは、俺が決めます。使うにしても、ロベルタさんはその前に必ず助け出す」


「犠牲が増えるだけだとしてもかね。下手をすれば、禍の山脈の魔物をすべて相手取ることになるんだぞ?」


「手に届く範囲は、守るって決めたんです。ロベルタさんには世話になったし、マリーの悲しむ顔は見たくない」


 レオンの目を見て、言葉を続ける。

 ロベルタはマリーの竹馬の友だ。ただでさえ以前の騒動で旧友を手にかけることになったマリーがロベルタまで喪えば、どれほど嘆くか想像もつかない。


「なにより……それだけ力持ってて、命ひとつ救えないなんて悲しいじゃないですか。信念なく振るう力なんて、勾原たちとなにも変わらない」


「常に何かを害し続け、何かに害され続ける……。それが人だよ、レイイチ君」


 黎一の顔を見て、レオンは渋面を作った。


「ならばそれを御するのが、力持つ者の責務というもの。君はそれを、悪と呼ぶのか?」


「力を振るうことが悪だなんて思わない。ただ何も考えずに、ひたすらに力を振るって片づけるのが嫌なだけです。力を振るうだけが、すべてじゃないはずだ」


 遣うならば、心して遣え。かつて父の仲間だった女傑は、そう言った。

 闇雲に力を振るうのではなく、己の信念に従って力を振るえ――。

 そう言われた気がしたのだ。

 レオンは黙していたが、やがて目を伏せた。


「ならば、キミのやり方を見せてみたまえ。失うことの重さと、力でしか抗し得ないことがあると、キミにも分かるだろう」


 それだけ言うと、レオンは背を向けた。話は終わったという意思表示だ。

 黎一は無言で頭を下げると、会議室の扉を押し開けた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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