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ルーザー・ブレイヴ ~異世界転移で女子と強制ペア!底辺スキルの覚醒と工夫で最強の英雄になった件~  作者: 朴いっぺい
第一部【勇者降臨】 第四章 俺と彼女が、剣士の秘密に触れるまで

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謎めく魔性

お読みいただき、ありがとうございます!

氷柱が群れなす洞窟の闇から飛び出た四つの影は、鳥と四足獣をあべこべに足したような代物だった。


『ちょっ、なにあれっ……!』


『早く魔力波形(マナ・パターン)の照合を!』


 肩先で羽ばたく青い鳥から、小里とマリーの声が聞こえる。


勇紋共鳴(サインズ・リンク)ッ!」


勇紋権能(サインズ・ドライヴ)……!」


 だがレオンに声をかけた瞬間、すでに黎一と蒼乃は迎撃の体勢に入っている。


魔力追跡(マナ・チェイス)! 風伯刃(ふうはくじん)!」


魔力追跡(マナ・チェイス)! 風礫招(ウィンド・ショット)ッ!」


 狙った相手の魔力(マナ)を追跡する能力(スキル)に導かれ、黎一と蒼乃が放った風の魔法が魔物たちを直撃した。


「グォラッ⁉」


「ウオォン⁉」


 魔物たちは苦悶の声を上げながらも、速度を落とすことなくレオンへと突き進む。


(耐えた⁉ やるなっ!)


 だが二撃目を放つ前に、通り過ぎる影たちに向けていくつもの銀閃が走った。影たちがすり抜ける瞬間、レオンとアイナが斬撃を繰り出したのだ。しかしどの影も欠けることなく、黎一と蒼乃を目がけて突進してくる。


(こいつら、あの二人の剣も潜り抜けるのか!)


 黎一の知る限り、純粋な剣技だけならレオンとアイナはヴァイスラント国内で一、二を争う。それに今の魔物たちの動きは、避けることに専念しているようにも見えた。


(敢えて無視した……? なにはともあれ……!)


 愛剣にふたたび風の魔力(マナ)を纏わせつつ、魔律慧眼(カラーズ)で相手を観察する。氷穴で出る魔物ゆえ水を顕す青に染まるかと思いきや、土に風とばらばらだ。


(タフなのはそれが理由かっ! だったら……!)


「獣頭が土、鳥頭が風だっ! 勇紋共鳴(サインズ・リンク)! 全々全花(オール・ジ・オール)! 飛炎燦(ひえんさん)!」


 放った火の散弾を、眷属(ファミリア)であるマリーの能力(スキル)によって魔物の数だけ反復させる。主上(マスター)の特権だ。無数に増えた炎弾が赤い弧を描き、黎一たちに肉薄しつつあった魔物たちを襲う。


「ギャオオオンッ⁉」


「ピギャアッ⁉」


 魔物たちの動きが、止まった。うち獣頭の二匹は弱点を突かれたせいか、露骨に消耗している。

 その隙に、蒼乃が短杖(ワンド)を諸手に構えた。


「空に揺蕩う風精よ、赤き火を纏いて刃となれ! |紅刃熱風スラスティング・フェーンッ!!」


 短杖(ワンド)の先端にある黄水晶から、熱風を伴う紅蓮の刃が現れた。以前よりも、剣の刃が実体に近い形で具現している。


「はあっ!」


 蒼乃が裂帛の気合とともに繰り出した赤い斬撃が、魔物の猪に似た頭を斬り飛ばした。狼の頭を持った魔物が蒼乃に襲いかかるが、返しの一撃で同じ運命を辿る。

 残りは二匹、なおも迫るニワトリ頭とワシ頭だ。いずれも、風の属性を顕す黄金の魔力(マナ)に染まっている。


「そいつよろしくっ!」


(へいへい、苦手科目ね!)


勇紋共鳴(サインズ・リンク)魔力追跡(マナ・チェイス)! 飛炎燦(ひえんさん)ッ!」


 上段斬りから放った炎弾の雨が、能力(スキル)に導かれてニワトリ頭を消し飛ばした。その陰から、ワシ頭が黎一の眼前に飛び出してくる。だが黎一は、慌てず騒がず愛剣を突きの形に構えた。


爆花咲(ばっかしょう)ッ!」


 繰り出した一突きが、ワシ頭の胴を捉える。刹那の間の後――。切先から咲いた炎の花が、ワシ頭を前半身ごと焼き尽くしていた。


「……見事な、ものだね」


 どこか残念そうなレオンの声が、戦いの終わりを告げた。



 *  *  *  *



 謎の魔物たちを倒した後、一行はふたたび洞窟内を進んでいた。

 小里の声が適度に道案内してはくれているものの、先ほどよりは頻度が少なくなっている。


「ときにコザト殿。先ほどの魔物の解析結果はどうかな?」


 中衛にいるレオンの声がした。発言が少なくなったのを気にしたのだろう。

 黎一の肩先にいる青い鳥が、慌てたように羽ばたきはじめる。


『へ⁉ あ、はいっ! そ、それが……』


「どうした? 死骸があったのだ。魔力波形(マナ・パターン)を解析すれば、すぐ割り出せるだろう」


 ――異世界(ゲフェングニル)におけるすべての存在には、魔力(マナ)が宿っている。その流れは各々の形と周期を以って、存在の内を巡っている。この周期が魔力波形(マナ・パターン)だ。

 大抵の生物は調査用の魔力(マナ)を用いれば、すぐに種族を特定できる。


『……レオン殿下、マリーです』


 青い鳥から聞こえる声が、マリーのアニメ声に変わった。


魔力波形(マナ・パターン)の調査結果ですが、それぞれの魔物が複数の魔力波形(マナ・パターン)に該当しました』


「なんだと……?」


 隣の蒼乃が、輝く目で青い鳥をチラチラ見始めた。知的好奇心を刺激された時の顔だ。


『どの魔物も、三種類以上の魔力波形(マナ・パターン)が検出されています。いずれも氷穴に棲む種ではありません。体表に縫合らしき痕跡も見受けられました』


 たしかに戦闘の直後、青い鳥が死骸の周りを飛び回っていた。どうやら小里の能力(スキル)は通話ばかりか、視覚の共有や調査用の魔力(マナ)の照射もかなり高い精度で行えるらしい。


(こんなのあるんじゃ、どのみち万霊祠堂(ミュゼアム)使うわけにいかなかったか……。てか今後どうすんだよこれ……)


 黎一の角度が違う悲嘆などつゆ知らず、レオンとマリーのやり取りは続く。


「つまりあの魔物は、何者かが創り出した合成獣(キメラ)だということか?」


『はい。ノスクォーツが仕掛けてきたか、あるいは……』


「状況を確認しろ。逆に変な誤解をされてはかなわん」


『承知しました。もしあちらから何らかの申し出があった場合は、いかがしますか?』


「……内容によっては一時、作戦を中断する。あちらにもそう伝えろ」


『承知しました。しばしお待ちを』


 それっきり、青い鳥は黎一の肩に止まって静かになる。小里とマリーが、ノスクォーツ向けの通信を始めたのだろう。


「もしノスクォーツでないとしたら……第三者の介入? 何者だ……?」


 問いともぼやきともつかぬレオンの言葉に、答えられる者はいなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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