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読んでいただけると幸いです。
六歳の頃、父に連れられ伺ったお家には私と同い年の男の子が居た。
初めて出来たお友達が嬉しくてその日一日楽しく遊んだ。
家に帰ると父は
「今日会ったディーンはダイアンの婚約者だよ」
と言った。
「こんやくしゃってなに?」と聞いた私に
「特別仲が良く、大きくなったら結婚する相手のことだよ」
「けっこんはしってる。おとうさまとおかあさまだよね」
「そうだよ。これから沢山会って仲良くしなさい」
会えると聞いて嬉しかった。またいっぱい遊ぼうと思った。
初めて会った日から二週間に一度互いの家を行き来していっぱい遊んだ。
時には喧嘩もしたけれど、誰よりも仲がいいと思っていた。
けれど私達が七歳になった頃、ディーンにはローズという一歳年下の幼馴染がいた。
ディーンの家に行くと必ずローズがいて三人で遊ぶことになるのだが、どうしてか私への当たりがきつかった。
「あんた不細工ね。ディーンには釣り合わないわ」とか「ディーンは私のものよ。こっちに来ないで」など、誰も見ていない時に言われる。
それでも小さい頃は良かった。
歳を重ねるごとにローズの当たりはきつくなっていった。
十一歳になった冬のある日、私は父にディーンのところには行きたくないと言うと、父に理由を聞かれたが私はローズが怖くて話せなかった。
「ならディーンのところに行っておいで」
と、送り出された。
その日は特にローズが酷かった。
「もう二度と来るなって言ったでしょう」
「あんたなんか死んじゃえばいいのよ」
「生きてる価値ないわ」
「ディーンは私のものよ」
そう言いながら叩いたり、抓ったりする。
ディーンがこちらを向くと何もなかった風を装い、ディーンと笑い合っていた。
ディーンがトイレに行った時。
ローズに火の付いた暖炉へと押しやられ、私は左半身に大火傷を負った。
私の叫び声にディーンと家人がやって来て火の中に倒れる私を見て全員が叫び声を上げた。
慌てて助け出されたが私は意識がなく小さな痙攣を起こしていた。
ディーンの父親は驚いて急いで父と、治癒魔法を使える魔術師を呼んでくれた。
先に着いた父は私の姿を見て嫌がっていたのに送り出すんじゃなかったと涙した。
ディーンの父親は何が起こったのかわからないまま、申し訳ないと何度も謝っていた。
治癒魔法のおかげで私の体は綺麗に戻ったが、心の傷は癒えなかった。
父やディーンの父に何があったのか聞かれたが私は恐ろしくてガタガタ震えるだけで何も答えられなかった。
私の父は婚約解消を申し出たが怪我をした時、ディーンは側に居なかったことで責任がない事ははっきりしていて、その時は婚約解消には至らなかった。
大火傷から初めてディーンに会いにいく日、私は馬車に乗る前に気を失った。
父もあれだけの火傷を負ったのだから行けとはもう言わなかった。
そして火傷後、ディーンに初めて会う日、私は怯えるようになっていた。
暫く様子を見たものの怯えは治まらず、だんだん酷くなっていく。ディーンに会う度に夜中に飛び起きたり、魘され泣き喚くようになっていった。
もうこれ以上は無理だと判断され、婚約は解消になった。
ディーンと会わなくなった私は、夜中に飛び起きることも無くなり、少しずつ日常を取り戻した。
いかがでしたでしょうか?
3話くらいの予定です。